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筋線維タイプの移行(遅筋から速筋への変化は起こるか?)

筋線維タイプの移行(遅筋から速筋への変化は起こるか?)


「筋線維タイプの分類方法」では、人間の筋線維のタイプが

 

 

遅筋線維であるタイプⅠ

 

速筋線維で持久力のあるタイプⅡa

 

速筋線維で持久力のないタイプⅡx

 

 

これら3つに分類されることを説明しました。

 

 

ここでは、「じゃあこのタイプはトレーニングすることで変化させることができるのか?」について紹介していきます。

 

 

 

 

筋線維タイプの移行は「筋線維の色」でわかる

 

実は、速筋線維と遅筋線維では、筋線維の「色」に違いがみられます。

 

 

速筋線維は比較的白い色をしており、遅筋線維は赤っぽい色をしています。そのため、速筋線維は「白筋」、遅筋線維は「赤筋」と呼ばれることがあります。

 

 

では、なぜこのような「色」の違いが生まれるのでしょうか?

 

 

その原因は、筋肉の中に含まれる「ミオグロビン」「ミトコンドリア」にあります。

 

 

血液に含まれる赤血球にはよく聞く「ヘモグロビン」というたんぱく質が含まれています。ヘモグロビンは肺から全身へ酸素を運ぶ役割を担っています。

 

 

一方、「ミオグロビン」は、ヘモグロビンが運んできた酸素を筋肉の中に運ぶ役割があります。ミオグロビンが運んできた酸素は、エネルギーの生産工場である「ミトコンドリア」に運ばれます。

 

 

主に酸素を使ってエネルギーを作り出す遅筋線維はこのミオグロビンやミトコンドリアが多く含まれているのです。

 

 

そして、ミオグロビンやミトコンドリアは、赤い色をした鉄やその他の色素を含んでいるため、遅筋線維は「赤っぽく」見えるということです。

 

 

ということは、この色の変化が分かれば、筋線維のタイプが変化しているかどうかが確認できるというわけですね。

 

 

 

人間では遅筋線維と速筋線維の間での変化は起こらない

 

今のところ、遅筋線維が速筋線維になったり、速筋線維が遅筋線維になることは、人間では確認できていません。

 

持久的なトレーニングを行うことで、持久力のない速筋線維(タイプⅡx)が持久力の高い速筋線維(タイプⅡa)に移行することはあります。
 
しかし、速筋線維そのものが遅筋線維になったりすることはありません。

 

 

タイプⅠとタイプⅡには、ミオシン分子レベルで違う構造になっており、たとえどんなにトレーニングをしようとも、分子レベルで構造に変化をもたらすことは難しいのです。

 

 

速筋線維と遅筋線維の比率は、遺伝子で決まっている、生まれつきのものだとされています。マラソンのトップ選手には遅筋線維が生まれつき多い者が多く、トップスプリンターには速筋線維が生まれながらにして多いのです。

 

 

しかし、動物実験では遅筋線維と速筋線維間の変化がみられています。動物実験で起こったということは、人間でも起こりうる可能性がゼロではないという主張を後押しするものです。

 

 

現に、マラソンのトップ選手が生まれたときから遅筋線維が多かったかどうかはわかりませんし、何十年もトレーニングを積んだ結果、実は遅筋線維が増えていた…なんてことも十分考えられます。たゆまぬ努力の成果によって遅筋線維と速筋線維の間の変化が起こる可能性はゼロではない。しかし、現状ではタイプ間の変化は難しいということになっています。

 

 

では、スポーツのパフォーマンスはすべて生まれつきの「才能」によって決まってしまうのでしょうか?次項「トレーニングによる、筋線維タイプの変化(どんな人にもトップアスリートになるチャンスはある)」では、トレーニングによって、筋線維が具体的にどのような変化を起こすのかについて、説明していきます。

 

 

 

まとめ

 

・遅筋線維には、酸素を筋肉に届けるミオグロビン、酸素をエネルギーに変えるミトコンドリアが多いため、赤く見え、速筋線維はそれらが少ないので白く見える。

 

・持久力の無い速筋線維(タイプⅡx)と持久力のある速筋線維(タイプⅡa)のタイプ変化は起こる。

 

・現時点で遅筋線維と速筋線維間のタイプ変化は起こらないとされているが、動物実験ではそれが確認されている。

 

 

 

参照文献

・寺田新. (2017). スポーツ栄養学: 科学の基礎から 「なぜ」 にこたえる. 東京大学出版会.
・石井直方(2015).石井直方の筋肉の科学.ベースボール・マガジン社.
・山地啓司, 大築立志, 田中宏暁 (編), スポーツ・運動生理学概説. 昭和出版: 東京(2011).
・勝田茂, 和田正信, & 松永智. (2015). 入門運動生理学. 杏林書院.
・芳賀脩光, & 大野秀樹. (2003). トレーニング生理学.

 

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