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「トレーニングによる、筋線維タイプの変化(どんな人にもトップアスリートになるチャンスはある)」

「トレーニングによる、筋線維タイプの変化(どんな人にもトップアスリートになるチャンスはある)」


「筋線維タイプの移行(遅筋から速筋への変化は起こるか?)」では、遅筋線維と速筋線維間のタイプの移行は、現時点で、人間では起こらない…ということを紹介しました。

 

 

では、マラソン選手やスプリンターとして活躍するために、トレーニングを頑張ることは意味がないことなのでしょうか?

 

 

実は、まったくそんなことは無いのです。持久力が求められる競技であれ、スピードやパワーが求められる競技であれ、トレーニングを行うことで、一流選手には確実に近づくことができます。そのことを理解するために、トレーニングによって筋線維がどのように変化していくかについて理解をしておきましょう。

 

 

 

どんなトレーニングでも筋線維は持久タイプに変化する

 

「筋線維タイプの移行(遅筋から速筋への変化は起こるか?)」では、遅筋から速筋、速筋から遅筋への変化は起こらないものの、持久性の無い速筋(タイプⅡx)から持久性のある速筋(タイプⅡa)への変化は起こることについても触れています。

 

 

高い強度で、持久的な運動を行うことで、速筋線維に持久性を持たせることは可能だということですね。

 

 

では、瞬発力系のトレーニングやスピードを意識したトレーニングしか行わなかった場合はどうなるのでしょうか?持久性のあるタイプⅡaから持久性の無いタイプⅡxへと変化が起こるのでしょうか?

 

 

実は、そうはならないのです。

 

 

パワーリフティングのような競技のトレーニング、投てき選手のようなトレーニングを行ったとしても、持久性の無い速筋線維(タイプⅡx)は、持久性の高い速筋線維(タイプⅡa)へ移行することが分かっています。

 

 

一般人の場合タイプⅡxとタイプⅡaの比率は1:1から1:2ほどといわれています。

 

 

一方、瞬発系のトレーニングを積んだアスリートを調べてみると、タイプⅡxはほぼゼロに近く、ほとんどがタイプⅡaに移行してしまっているのです。このように、どんなトレーニングを積んだとしても、速筋線維は持久性を帯びたタイプへ移行するということです。

 

 

では、なぜこのような現象が起きるのでしょうか?

 

 

その原因の一つとして、パワー系アスリートも、スプリンターも自らの能力を高めるために、膨大なトレーニングを積んでいることが挙げられます。瞬発系のトレーニングも、かなりの回数を行えば、それなりのトレーニングをこなすための持久力がついていくはずです。勝つために、多くのトレーニングを積めることは必要でしょう。このことが影響して、パワーリフターもスプリンターも持久性が高い速筋線維へと移行していくのだと考えられています。

 

 

 

持久性が低いが、スピードは高い速筋線維(タイプⅡx)を増やす方法とは?

 

では、持久性の高い速筋線維(タイプⅡa)から、瞬発力の高い筋線維(タイプⅡx)への変化を起こすことはできないのでしょうか?

 

 

実は、方法がないわけではありません。瞬発力の高いタイプⅡxの筋線維を増やそうと思ったら、「トレーニングをサボる」ということが必要になります。筋肉を使わないようにするとタイプⅡxの筋線維が増えていくということが分かっているのです。

 

 

ということは、とことん瞬発力や、スピードを高めていきたいとなったら、筋肉を休めることが必要になります。ですが、休みすぎると筋肉は萎縮してしまったり、脳からの指令が効率よくいかなくなり、動員できる運動単位が少なくなったりして、トータルの力発揮は落ちてしまうかもしれません。なので、しっかりトレーニングを積んで、適度に休む…というのが現時点では最良の選択と言えるでしょう。

 

 

もちろん、400m走など、持久力も重要になる競技の場合は、タイプⅡaなどの持久力にとんだ速筋線維が多いことが重要です。休みすぎるとそれなりにリスクがあることも頭に入れておきましょう。

 

 

また、タイプⅡxの筋線維がタイプⅡaの筋線維に移行するまでには、トレーニングをやり始めて少なくとも2週間ほどは必要だといわれています。すべてが一気にタイプⅡaに変化するわけではなく、徐々に変化がみられてくるのが2週間ほどというわけです。

 

 

 

誰がトップ選手になるかは、誰にもわからない

 

ここまで、持久性のある速筋線維と、持久性は低いけど瞬発力に優れた速筋線維のタイプの変化について紹介してきました。とはいっても、速筋と遅筋の比率は生まれながらにして決まっている。ということは、アスリートの素質はすべてこの比率によって決まってしまうのでしょうか?

 

 

そんなことはありません。

 

 

速筋線維が多くても、その速筋線維に持久性を持たせることは可能です。それはすなわちスピードの高い持久系アスリートを目指すことができるというわけです。遅筋線維の比率が多くても、速筋線維は太くなるポテンシャルがかなり高いわけですから、トレーニングによって、パワーをカバーすることは可能でしょう。

 

 

さらには、筋肉だけがスポーツの勝敗を決めるわけではありません。巧な技術や戦術を誰よりも高めることで、差をつけることも可能です。生まれた時にトップアスリートになれるかどうかが決まってしまうなんて、そんなことはありません。未来の可能性は、その人の努力次第でも変えられますし、誰にもわからないのです。

 

 

 

まとめ

 

・どんなトレーニングをしても、速筋線維は持久性の高いタイプⅡaへと移行する。

 

・トレーニングをサボることで、瞬発力の高いタイプⅡxを増やすことはできる。

 

・速筋線維の持久性をとことん高めることや、速筋線維を太くすることで、速筋と遅筋の遺伝的な比率による不利さをカバーすることは十分可能。

 

 

 

参照文献

・・寺田新. (2017). スポーツ栄養学: 科学の基礎から 「なぜ」 にこたえる. 東京大学出版会.
・石井直方(2015).石井直方の筋肉の科学.ベースボール・マガジン社.
・山地啓司, 大築立志, 田中宏暁 (編), スポーツ・運動生理学概説. 昭和出版: 東京(2011).
・勝田茂, 和田正信, & 松永智. (2015). 入門運動生理学. 杏林書院.
・芳賀脩光, & 大野秀樹. (2003). トレーニング生理学.

 

 

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