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筋肉の収縮スピードを高める方法とは

筋肉の収縮スピードを高める方法とは


瞬発系のスポーツにおいて、「スピード」は重要な要素です。いかに高いスピードを出せるかは、スプリンターのみならずその他の球技種目においても大切なことでしょう。

 

 

負荷がない状態で、筋肉が収縮するスピードは筋肉によって異なります。速筋線維が多く含まれているような筋肉や、筋線維が関節の長軸方向に延びている平行筋などは、高いスピードで収縮できます。

 

 

また、スポーツでのパフォーマンスを高めるためには、この負荷の無い状態での収縮スピードや、負荷のある状態での収縮スピードを高めていく必要があると言えます。ボクシングなどでは、重りを持ったままストレートを繰り出すことはないですが、短距離走などでは、自分の体重という負荷を高いスピードで動かす能力が必要になったり…です。

 

 

負荷があるにしろ、ないにしろ、スピードを高めることはスポーツのパフォーマンスを高めるうえで非常に重要だと言えます。そして、このスピードを高める筋肉の使い方を、タイトルでも挙げた「蚊」の筋肉の動きから学び取ることができるのです。

 

 

 

「蚊」は1秒間に2000回羽ばたいている

 

「蚊」は世界一素早い動きをする生き物です。もしも、人間がこれくらいの速さで足を動かせるようになったら、時速500km以上のスピードを出すことができてしまいます。では、いったいなぜ、蚊はそれほど早く動くことができるのでしょうか?

 

 

蚊が「プーン」と羽ばたくために使っている筋肉を「飛翔筋」と言います。

 

鳥などが翼を「バサバサ」と羽ばたかせるときは、片方の筋肉が縮み、もう片方の筋肉は緩んでいます。人間が鳥の真似をするときも同様です。

 

 

 

 

 

しかし、蚊の場合は、両方の筋肉が常に収縮しようとしている状態なのです。

 

 

両方の筋肉が収縮している状態で、片方の筋肉が引き伸ばされたとしましょう。その時、収縮しようとしながらも引き伸ばされた筋肉は、短縮している筋肉よりも大きな力を発揮できるのです。これは「サルでもわかる、伸張性収縮(エキセントリック収縮)の特徴」でも述べたとおりですね。

 

 

この、力を出しながら引き伸ばされて、力が増強する現象を「伸張による活性化」と言います。逆に、力を発揮しながら短縮すると「短縮による不活性化」という現象が起こり、筋力は低下してしまうのです。

 

 

 

 

これを利用して、蚊は1秒間に2000回も羽ばたくことができているというわけですね。

 

 

 

「蚊」の飛翔筋の特性は、スポーツトレーニングにも使える

 

この「伸張による活性化」と「短縮による不活性」は人間の運動にもかかわっています。

 

 

例えば、連続ジャンプなどを行うとき、接地の瞬間に足首が過度につぶれてしまわないように、ふくらはぎの筋肉は短縮しようとします。ですが、重さに耐えられず引き伸ばされてしまいます。

 

 

この時に、「伸張による活性化」と同様のことが起き、筋肉は非常に大きな力を発揮することができるのです。

 

 

連続ジャンプの場合は、引き伸ばされた筋肉が大きな力を発揮し、大きな力をため込んだまま収縮することで、素早く動くことができるというわけです。いわゆる強いバネのある脚とはこういった時に発揮できる力がものすごく強いのです。

 

 

このように、人間の筋肉も「力を出しながら引き伸ばされると大きな力を発揮できる」ようになります。これを理解しておくと、スポーツのトレーニングにも役立つ場面があるかもしれません。

 

 

 

まとめ

 

・蚊は世界一筋肉の収縮スピードが高い。

 

・その理由は筋肉の「伸張による活性化」と「短縮による不活性化」によるものである。

 

・人間の筋肉も、力を発揮しながら引き伸ばされると大きな力を発揮できる。

 

 

 

参照文献

・・寺田新. (2017). スポーツ栄養学: 科学の基礎から 「なぜ」 にこたえる. 東京大学出版会.
・石井直方(2015).石井直方の筋肉の科学.ベースボール・マガジン社.
・山地啓司, 大築立志, 田中宏暁 (編), スポーツ・運動生理学概説. 昭和出版: 東京(2011).
・勝田茂, 和田正信, & 松永智. (2015). 入門運動生理学. 杏林書院.
・芳賀脩光, & 大野秀樹. (2003). トレーニング生理学.

 

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