人間の身体にはどうして筋肉が付いているのか?
ここでは筋肉の役割についてみていきます。
筋肉は身体を動かすエンジン
まず、一番重要な役割がこれでしょう。人間が活動できるのは、この筋肉が動くからであり、筋肉がなければ立つことも、歩くことも、走ることもできません。
また、人間の身体の中身を機能させているのも、筋肉です。心臓や胃、長などの器官も筋肉が動かしているのです。
四肢を動かす運動にしろ、内臓を動かすことにしろ、全ては筋肉が原動力となっています。
姿勢を維持する
地球には重力が働いています。
人は座ってじっとしている時や、立ったまま動いていない時、寝ていて動かない時もあります。
実は、この時も筋肉はちゃんと働いているのです。
筋肉はこのような場合でも、適度に力を働かせて、身体の姿勢を維持させようと活動をしています。
熱を発生させる役割
人は、ある一定の体温を保てなければ、生きていくことができません。人の身体は通常、37℃くらいの体温が保たれるようになっていますが、通常気温は37℃よりも低いはずです。
ここで人は、自分でエネルギーを利用することで熱を生み出しながら、体温を維持しています。
そして、この体温の維持に最も貢献しているのが筋肉なのです。
熱を生み出す貢献度合いは、筋肉が約6割、肝臓や腎臓が約2割、褐色脂肪細胞という、熱を生み出す仕組みのある組織が約2割となっています。
身体を守る役割
ボクサーが、腹筋に力を全く入れていない状態で、フックを受けるとどうなってしまうでしょうか?
もちろんかなりのダメージが予想されます。
腹筋に力をある程度入れていれば、ダメージは少なからず軽減されるはずでしょう。
このように、筋肉がしっかりと付いていることで、身体の中にある内臓や骨を守ることができるのです。
アメリカンフットボールの試合に筋肉の少ないやせ細った選手が出場しても、怪我をして交代させられるだけです。
内分泌器官としての役割
具体例を挙げると、筋肉を動かすと脂肪の分解を促進する物質を筋肉が分泌し、筋肉が動き続けるためのエネルギーが供給されることなどです。
ひと昔前までは、筋肉が動き始めると、まずは脳に信号が行き、そこから脂肪の分解を促すような指令が下され、エネルギーが効率的に供給されるという考え方でした。
この考えでは、必ず脳が中心となり、様々な内分泌を促す仕組みとなっています。
しかし、最近の研究では、最初の例のように、脳を介さずとも、筋肉が主体的に内分泌を変化させる役割を担っていることが分かってきています。
もし、「筋肉を増やせ!脂肪を分解しろ!」と指令をだす役割を脳だけが担っているとしたら、夢の中で筋トレをしたり、脳を勘違いさせるだけでも、筋肉をつけたり、痩せたりすることが可能であると言えます。
しかし、人間の身体はそのようにはできていないのです。
やはり、筋肉が本当に使われたかどうか、エネルギーが本当に必要かどうかは筋肉のみぞ知ることであり、脳は騙せても筋肉は騙せないのです。
参照文献
・寺田新. (2017). スポーツ栄養学: 科学の基礎から 「なぜ」 にこたえる. 東京大学出版会.
・石井直方(2015).石井直方の筋肉の科学.ベースボール・マガジン社.
・山地啓司, 大築立志, 田中宏暁 (編), スポーツ・運動生理学概説. 昭和出版: 東京(2011).