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100m走のレースパターン

レースパターンとは?

短距離走はスタートからずっと一定の速度で走っているわけではありません。静止状態から加速していき、最大スピードに達したのち、速度が徐々に低下してゴールするという特徴があります。

 

中学生でも、トップアスリートでもこれは変わりません。

 

このレース中の速度推移は「レースパターン」と呼ばれており、パフォーマンスを高めるための一つの手掛かりとして用いられています。

 

 

100m走は大まかに、以下の局面に分けられます。

 

・1次加速局面:スタート後、急激に加速していく局面。

 

・2次加速局面:緩やかでやや長い加速。トップスピードにつなげるための局面。

 

・トップスピード局面:トップスピードが出る局面。

 

・減速局面:疲労により速度が徐々に低下する局面。

 

レースの後半で追い上げてゴールする選手をみて、「後半の加速がすごい!」と言われることがあります。しかし、実際にはどんな選手でも減速しており、表現としては正しくありません。そのような選手は、トップスピードが高い選手、あるいは後半の速度低下の小さな選手だと考えられます。

 

 


100m走では最大スピードが最も重要

100m走で特に重要な能力が、「最大スピードの高さ」です。この最大スピードが高いほど、100mのタイムが良い傾向が強くあります(松尾ほか,2008)。

 

なので、100m走ではいかに2次加速を経て、最大スピードを上げられるかが重要なポイントとなるわけです。

 

 

 

また、どのレベルであっても、スタート後、「約6から7秒程度で最大スピードに達します。加速しきるのに要する時間はどの選手でも一定で限られている可能性が高いというわけです(宮下,2012)。

 

そして、レベルの高い選手はその6―7秒の間に進んでいる距離が長いので「最大スピードの出現地点がより遠くになる」のも事実です。

 

これらを踏まえると、まずは100mのタイムと関係の強い、最大スピード、「6-7秒間でどれだけ高いスピードを出せるか」に焦点を絞って練習やトレーニングの内容を考えていく必要があるというのが見えてきます。

 

100m選手の練習として、「200mや300mを遅いペースで繰り返す走り込み」しかやらないというのは大変おかしな事です。

100m走の後半の伸びの正体

100m走のレースを眺めていると、レースの後半失速しているように見える選手、ぐんぐん加速しているように見える選手がいます。

 

そのようなレースを見ていると「後半の伸びがすごい、後半の持久力が重要なんだ」と誰もが感じるはずでしょう。

 

実際、100m走ではレース後半に誰もが速度を落としてしまいます。なので、後半加速するわけではないにしても、後半の速度を維持できることは大事な能力です。

 

・陸上短距離(100m 200m 400m)における後半の速度低下を改善させたい人へ

 

 

しかし、ここで注意すべきことが一つあります。それは、

 

・100m走では最大スピードが高いほどレース後半に最大スピードが現れるので、減速区間が短くなりやすい。

 

・そもそもトップスピードが高い選手は、他の選手より後半減速していても他を引き離しているように見えることがある。

 

ことです。

 

 

最大スピードが高いA選手と、最大スピードは低いけど速度維持能力が高いB選手を比べてみましょう。レース終盤、A選手は大きく減速していますが、B選手よりも高い速度で走っています。この時のレースがどう見えるのかと言うと、持久力の無いA選手の方がB選手を最後まで引き離しているように見えるはずです。

 

つまり「減速の大きいA選手の方が後半の伸びがある」ように見えてしまうわけです。

 

 

このように、後半ぐんぐん伸びているような選手でも、実はレース後半の速度低下は大きいタイプだったりします。後半の持久力はもちろん大事ですが、まず優先して向上させるべきは「最大スピード」であることが分かるはずです。

 

また、レベルの高い選手は最大スピードがレース後半に出現しやすいです。だからと言って、序盤は力を抜いて、後半速度を上げようとするペース配分を行うのはお勧めしません。

 

レベルの高い選手は確かに最大スピードが後半に表れやすいですが、レース前半力を抜いているかどうかは分かりません。レースパターンはあくまで結果であるということに注意を向けましょう。

 

 

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参考文献

・松尾彰文, 広川龍太郎, & 柳谷登志雄. (2008). 男女 100m レースのスピード変化 (特集 世界陸上アスリートのパフォーマンス--東京大会から 16 年後の大阪大会). バイオメカニクス研究, 12(2), 74-83.
・宮下憲(2012)スプリント&ハードル.陸上競技社,pp.41-46.

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