白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞

 

実は、脂肪には「エネルギーを保存する脂肪」「熱を生み出す脂肪」があります。

 

 

太りすぎの原因として、私たちが気にしている脂肪は「エネルギーを保存する脂肪」のことで、これは「白色脂肪細胞」と呼ばれます。

 

 

一方、脂肪にはもう1つの種類があり、これが「褐色脂肪細胞」と呼ばれます。白色脂肪細胞に比べてやや茶色い(褐色)のが特徴で、こちらはエネルギーを消費する、熱を生み出す役割を担っている脂肪です。

 

 

白色脂肪細胞はWAT(White Adipose Tissue)、褐色脂肪細胞はBAT(Brown Adipose Tissue)と表記されることもあります。

 

 

 

白色脂肪細胞

 

白色脂肪細胞はエネルギーの貯蔵庫として存在しています。人間の細胞数は約60兆個であり、白色脂肪細胞の数は約300億個といわれています。すなわち、人間の細胞のうち、0.2%ほどしか存在しないことになります。

 

しかし、人間の体脂肪率は15%ほどあります。

 

 

これはすなわち、脂肪細胞は、その一つ一つのサイズが大きいということです。

 

 

また、脂肪細胞が増えるのは、胎児の頃、生後1年、思春期初期(13−15歳)だといわれており、大方の脂肪細胞の数はこの時期までに決まってしまうともいわれています。

 

 

脂肪細胞はいったん数が増えると、その後どんなにダイエットをしても減ることはあまりありません。したがって、大人になるまでに太りすぎてしまうと、その後の人生、ずっと太りやすいような状態になってしまう可能性があります。

 

 

また、最近では成人以降でも脂肪細胞の数は増えていくことが分かっています。

 

 

一つの脂肪細胞の大きさには限界(直径140?)があるので、それより脂肪を蓄えるには、脂肪細胞の数を増やすことで対応しているわけです。

 

 

 

褐色脂肪細胞

 

褐色脂肪細胞は、白色脂肪細胞とは逆に「エネルギーを使う、熱を生み出す」役割があります。

 

 

この褐色脂肪細胞は新生児に多く存在していますが、成人では首や肩、背中周り、臓器周辺に少しだけ存在しています。

 

 

褐色脂肪細胞は白色脂肪細胞と構造が異なり、小さな脂肪滴が複数あり、エネルギーを生み出す器官である、ミトコンドリアが多く含まれています。

 

 

ミトコンドリアにはシトクロムcと呼ばれる褐色の色素タンパク質や毛細血管が多く存在しているため、褐色に見えるというわけです。

 

 

 

 

 

 

褐色脂肪細胞が熱を生み出す仕組み

 

さて、この褐色脂肪細胞はどのようにして熱を生み出しているのでしょうか?

 

 

実は、熱を生み出すのに重要な働きを担っているタンパク質があるのです。

 

 

それが、ミトコンドリア脱共役タンパク質1(UCP1)と呼ばれるものです。このUCP1は、利用されるはずだったエネルギーを奪い、熱に変えてしまう働きがあります。

 

 

やや難しくなりますが、そのメカニズムを簡単に紹介します。

 

 

 

 

ミトコンドリアの内膜と外膜の間にH?が移動し、その濃度勾配で、今度はH?がミトコンドリアの内膜を越して、核の中に入ってきます。その時のH?の勢いで、エネルギーの合成酵素が働き、エネルギーを生み出します。

 

 

しかし、UCP1はH?がエネルギーの合成酵素側に行くのを邪魔し、熱だけを生み出す働きをします。こうして、運動するエネルギーを生み出さずに、熱だけを生み出していくというわけです。

 

 

このUCP1の働きは、交感神経が活発になることで促進されます。褐色脂肪細胞の細胞膜場にもβ受容体が存在しているので、アドレナリンやノルアドレナリンがそれにくっ付くことで、脂肪が分解される、熱が発生します。

 

 

この交感神経を活発にする刺激の一つに、「寒さ」が挙げられます。

 

 

気温が低くなると、人間は体温を保とうと、熱を多く発生させようとします。それに伴って、褐色脂肪細胞の働きは高まっていくのです。したがって、夏よりも冬のほうが、熱帯地域に住む人より、寒冷地域に住む人のほうが、褐色脂肪細胞の働きは活発になると言えます。

 

 

また、熱を生み出す褐色脂肪細胞の量や活性が高いほど、BMIが低くなりやすいこともわかっています。そのため、この褐色脂肪細胞を刺激することは、肥満予防、痩せやすいからだへの体質改善に注目を集めています。

 

 

 

まとめ

 

・白色脂肪細胞は「エネルギーを貯蔵する脂肪」

 

・褐色脂肪細胞は「熱を生み出す脂肪」

 

・褐色脂肪細胞にはミトコンドリアが多く、その中にあるミトコンドリア脱共役タンパク質1(UCP1)の働きによって、運動するためのエネルギーを熱に変えてしまう。

 

 

 

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