運動後の筋グリコーゲンの回復を最大にするためには?(糖質摂取の量とタイミング)

 

競技スポーツでは、午前と午後など、1日に複数の試合が行われることがあります。最初の試合で筋グリコーゲンを消耗したまま、次の試合に臨んでも、高いパフォーマンスは期待できません。

 

 

筋グリコーゲンとは筋肉に蓄えられている糖質(エネルギー源)のことで、これが少ない状態だと、大きなパワーを発揮したり、それを持続させる能力は顕著に低下してしまいます。

 

 

そのため、最初の試合が終わってから、次の試合までに筋グリコーゲンを十分に回復させる必要があるのです。

 

 

 

筋グリコーゲンを回復させるためには?

 

筋グリコーゲンを回復させるためには、当然「糖質」を摂取しなければなりません。この糖質を、運動後にどれくらい摂取するかで、筋グリコーゲンの回復率が異なってきます。

 

 

Jentjens & Jeukendrup(2003)の研究では、糖質を1時間当たり、1.0-1.2g/kg程度摂取することが、筋グリコーゲンの回復を最大にすることを報告しています。

 

 

 

 

※Jentjens & Jeukendrup(2003)より、筆者作成

 

 

 

1時間当たり1.0-1.2g/kgの糖質を摂取するということは、体重60kgの人が毎時間60-72gの糖質(240-288kcal)を摂取するということです。市販のエネルギーゼリーなら、2時間で3本程度の量ですね。

 

 

また、この量を摂取するのが難しい・・・という場合は、タンパク質を同時に摂取する方法が有効であることも示されています。

 

 

Van Loonほか(2000)の研究では、タンパク質を1時間当たり0.4g/kgと、やや少ない糖質(0.8g/kg/時)を同時に摂取することで、糖質を大量(1.2g/kg/時)に摂取したときと同程度、もしくはそれ以上に(Zawadzkiほか,1992)、グリコーゲンの回復が促進したと報告されています。

 

 

このように、筋グリコーゲンを効率良く回復させるには、糖質のみでなく、タンパク質を摂取することが重要と言えます。

 

 

 

 

糖質摂取の効果的なタイミングとは?

 

運動後の筋グリコーゲンの回復には、糖質摂取のタイミングも重要です。

 

 

Ivyほか(1988)の研究では、運動直後に糖質を摂取した群と、運動終了2時間後に同じ量の糖質を摂取した群で、筋グリコーゲンの回復率を比較しています。

 

 

その結果、運動直後に摂取した群の方が、筋グリコーゲンの回復が2倍ほど高くなりました。

 

 

このように、筋グリコーゲンを効果的に回復させるためには、運動終了直後の糖質摂取が重要ということになります。

 

 

では、なぜ運動直後に摂取した方が、筋グリコーゲンの回復に効果的なのでしょうか?

 

 

運動を行うと、筋肉はより多く糖質を取り込もうと、糖質の運び屋さん(GLUT-4)を細胞膜上に移動させます。

 

 

この糖質の運び屋さんは、運動終了後も、しばらく細胞膜上にとどまっており、糖質の取り込みが行われやすい状態になっています。ここで、糖質を摂取することで、運動後時間がたってしまってからよりも、効率よく糖質を取り込むことができるというわけです。

 

 

 

 

 

 

 

また、運動直後は血液が使用した筋肉へ流れやすくなっていたり、小腸での糖の吸収が盛んに行われることも、運動直後の糖質摂取の有効性に関係しているようです。

 

 

 

Ivyほか(1988)の研究では、運動後2時間との比較が行われていましたが、最近では運動終了後30分以内に摂取すべき、もっと早く摂取すべきという意見もあるようです(Kerksickほか,2008;稲井ほか,2017)。

 

 

いずれにしても、筋グリコーゲンを素早く回復させるには、運動直後の糖質摂取が重要であるということです。

 

 

ですが、次の運動までかなり時間が空く場合などは、必ずしも運動直後に糖質を摂取しなくとも、筋グリコーゲンは十分に回復します。まずは、自身の運動強度や時間に応じて、1日の糖質摂取量をきちんと把握し、必要な量の糖質を普段の食事から確保しておくことが重要です。

 

 

以下は、トレーニング強度・量に応じた糖質摂取量の目安です。参考までに(国際オリンピック委員会,2012)。

 

 

 

 

 

参考文献

・Jentjens, R., & Jeukendrup, A. E. (2003). Determinants of post-exercise glycogen synthesis during short-term recovery. Sports Medicine, 33(2), 117-144.

 

・Van Loon, L. J., Saris, W. H., Kruijshoop, M., & Wagenmakers, A. J. (2000). Maximizing postexercise muscle glycogen synthesis: carbohydrate supplementation and the application of amino acid or protein hydrolysate mixtures?. The American journal of clinical nutrition, 72(1), 106-111.

 

・Zawadzki, K. M., Yaspelkis 3rd, B. B., & Ivy, J. L. (1992). Carbohydrate-protein complex increases the rate of muscle glycogen storage after exercise. Journal of Applied Physiology, 72(5), 1854-1859.

 

・Ivy, J. L., Katz, A. L., Cutler, C. L., Sherman, W. M., & Coyle, E. F. (1988). Muscle glycogen synthesis after exercise: effect of time of carbohydrate ingestion. Journal of Applied Physiology, 64(4), 1480-1485.

 

・Kerksick, C., Harvey, T., Stout, J., Campbell, B., Wilborn, C., Kreider, R., ... & Ivy, J. L. (2008). International Society of Sports Nutrition position stand: nutrient timing. Journal of the International Society of Sports Nutrition, 5(1), 17.

 

・稲井真, 西村脩平, 浦島章吾, 野中雄大, 木村典代, & 寺田新. (2017). 糖質摂取のタイミングの違いが運動後の筋グリコーゲン回復率に及ぼす影響. 日本スポーツ栄養研究誌= Japanese journal of sports nutrition, 10, 48-57.

 

・国際オリンピック委員会(2012)Nutrition for Athletes.

 

 

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