陸上短距離、長距離、跳躍選手と減量について@(なぜ痩せられない?)

陸上競技の短距離、長距離、跳躍選手にとって余分な体脂肪の増加はパフォーマンスを低下させます。

 

 

余分な重りをつけたまま、速く走ろうとしたり、遠く、または高く跳ぼうとしても上手くいかないことは容易に想像できる事でしょう。

 

 

できることなら、ある程度低い体脂肪率へと身体を絞って、その状態をキープしておきたいものです。

 

 

「練習をたくさんしていれば自然と身体は絞れていくから、そこまで気にすることはない」と言う選手はもちろんいます。

 

 

しかし、頑張って練習をしてもなかなか身体が絞れなかったり、パフォーマンスを損ねて怪我をしてしまったりする選手も多くいることは事実でしょう。

 

 

体つきが変わりやすい10代後半から20代の女性アスリートや生活環境の変化が多い大学生アスリートにとっては特に興味関心の高い内容なのではないでしょうか?

 

 

 

「食事にも気を遣っているのに、たくさん練習しているのに、自分の体質のせいなのか…どうしても減量ができない。」

 

 

 

ここからはこのような選手のために

 

・身体を絞ることができない原因
・パフォーマンスを損なうことなく身体を絞る方法

 

について考えていきます。

 

 

 

 

体重の増減を決めるのはカロリー収支である。

 

体重の増減を決めるのはカロリー収支です。

 

 

カロリー収支とは、消費したカロリーと摂取したカロリーの差分のことを言い、これがプラスになると体重が増え、マイナスになると体重が減ります。

 

 

つまり、身体を絞るためには摂取カロリーよりも消費カロリーを多くして、カロリー収支をマイナスにすることが大前提となります。

 

 

 

 

たくさん運動を行えば消費カロリーは増える筈です。

 

では、日々ハードな練習をこなしているはずのアスリートに、なぜ減量に苦しむ人が多いのでしょうか?

 

 

 

 

たくさん運動して食べないほど、消費カロリーが減る。

 

たくさん練習しているのになかなか痩せられない人がいることの理由の一つは、人に代謝を調節する機能があるからです。

 

 

ハードに練習をすればするほど、消費カロリーは増えるはずです。

 

そして食事量を減らせば減らすほど、摂取カロリーは減ります。

 

 

こうしてカロリー収支がマイナスになれば、体重は減り続けるはずなのです。

 

 

しかし、人間にとって体重が減り続けてしまうのは都合が悪いのです。
人は「生きること」が第一であり、万が一に備えてできるだけエネルギーを蓄えておきたい生き物であるため、今の状態を何とか維持しようとする働きがあります。

 

これを恒常性の維持(ホメオスタシス)と言います。

 

 

たくさん練習して消費カロリーが極端に増えると、人間は練習時以外での消費カロリー(いわゆる基礎代謝のこと)を減らして対応し始めます。

 

 

 

 

 

いわゆる、燃費の良い身体(エネルギー消費が少ない身体)になっていくわけですね。

 

 

このことが影響して、たくさん運動して極端に食事を減らせば減らすほど、またその期間が長ければ長いほど、カロリーを消費しにくい身体、つまり痩せにくい身体になっていくのです。

 

 

これが、身体を上手く絞れないアスリートがいる理由の一つであると言えます。

 

 

全然食べてないと言ってる人→「実はめちゃめちゃ食べている説」

 

「私全然食べてないのに太っちゃうんだよね…痩せないんだよね…」というアスリートは多いです。

 

前述の通り、代謝が極端に落ちていることも原因のひとつかもしれません。

 

 

繰り返しますが、体重の増減を決めるのはカロリー収支です。

 

食べ過ぎれば太ります。

 

全然食べてないのに、太ってしまうと言う人がいたら、それは「実は食べている!!」ということも十分考えられるのです。

 

 

実際、人は摂取したカロリーを本当のカロリーよりも低く見積もってしまう傾向があるようです。

 

 

・あるファストフード店で食事をした客に「あなたが食べたものは何キロカロリーだったと思うか?」と質問し、その解答と実際のカロリーとの関係を検討。
→多くの人が実際のカロリーよりも低くカロリーを見積もっていた。ハイカロリーな商品を注文した人ほど、摂取カロリーをより少なく見積もっていた。
※Wansink B, et al. Meal size,not body size,explains errors in estimating the calorie content of meals. Ann lntern Med 2006; 145:326-32.

 

 

 

・15歳から57歳の140人の食事を記録し、その翌日に「何をどれくらい食べたか?」思い出してもらい、実際の食事量との関係を調べた。
→ジャガイモやおかゆなどの主食は実際に食べた量よりも多く食べたと申告。ケーキなどのデザート類は実際に食べた量よりも少なく食べたと申告。
※Karvetti RL, et al.Validity of the 24-hour dietary recall. J Am Diet Assoc 1985;85:1437-42.

 

 

 

・50歳から76歳の96人に食事記録を丁寧につけてもらい、性別や体重から推定された消費エネルギーと摂取カロリーとの関係を検討。
→肥満の人や女性ほど、食事記録が過少申告されていた。
※Okubo H, et al. The influence of age and body mass index on relative accuracy of energy intake among Japanese adults. Public Health Nutr. 2006;9:651-7.

 

 

 

このように実際に分析してみると、

 

「思っている以上に自分はカロリーを摂取していた。」

 

「多く食べるとやばいものは忘れやすい。」

 

「ハイカロリーな食事をしたことを申告したがらない。」

 

というケースはかなり多いと考えられます。

 

 

 

 

夕飯のお米は控えている。

 

しかし、昼間はスタバでフラペチーノをガブ飲み。1杯で牛丼1杯並みのカロリーが摂れます。

 

何気なく休息時間にガブ飲みしているスポーツ飲料でも1リットルで250Kcalほどあります。

 

お菓子など、頻繁に完食をする場合であればかなりの摂取カロリーとなります。

 

何気なく食べているパン類などでも1個あたり500kcalを超えるものもザラにあります。

 

 

 

 

 

どうでしょう?自分が何気なく口にしているものを正確にカロリー計算してみると案外高い摂取カロリーとなっている場合は多いです。しかもそれを忘れようとしてしまうとなると余計にタチが悪くなりますよね。

 

「全然食べてないのに太っちゃう…」

 

→「いや、君めちゃくちゃ食べてるよ?」

 

というケースが意外に多いことも頭に入れておくべき事でしょう。

 

 

 

摂取カロリーの増加は「環境のせい」でもある

 

親元を離れて一人暮らしをするようになった。

 

大学生になり、食事を自分で管理するようになった。

 

これらのような生活環境の変化は当然身体組成に影響する可能性があります。

 

高校時代は親の作る食事やお弁当がメインで、意識せずとも食事の時間帯や量が管理されていることがあります。

 

 

 

しかし、一人暮らしをするようになったりして、これらを自分で管理するようになると、ついつい食べすぎてしまったり、外食が増えたり、食事の時間が乱れたりすることはかなり増えることでしょう。

 

 

大学での学食などは食中毒防止の観点からすると揚げ物が圧倒的に多いこともありますし、20歳を過ぎるとお酒を飲み、ハイカロリーなものを摂取する機会も増えてきます。

 

 

このように、以前までは意識せずとも管理されていた食生活も、環境の変化によって、自分で意識して管理しなければ、急激に太ってしまうことになりかねないシチュエーションはあると言えるでしょう。

 

 

このような環境の変化による影響をいち早く察知して、対策を練ることができるかについても、競技力を順調に高めていくために必要なことでしょう。

 

 

 

トップページへ

 

練習計画立案等、各種ご依頼はこちらから

アクティブリカバリー

アクティブリカバリーとは、トレーニング中、主に運動と運動の間に休憩を挟んで行うトレーニングにおいて、運動間に軽めの運動を続けながら次の運動に備えるという回復方法です。これによって、メインのトレーニングの効果や効率にいろいろな影響がでてきます。☆アクティブリカバリーが、運動強度・時間の異なる運動に及ぼ...

≫続きを読む

プロテインについての理解

☆プロテインとは何か?プロテインは筋肉が付く魔法の粉でもなんでもなく、protein=たんぱく質です。3大栄養素の炭水化物、脂質、たんぱく質のたんぱく質です。「プロテインは筋肉作りに大切」というイメージがありますが、髪や爪、皮膚、骨、腱、血液...etc、他の身体の組織もたんぱく質をメインに作られま...

≫続きを読む

アイシングについて

練習やトレーニングからの回復を促す方法として、アイシング(冷却療法)が広く知られていると思います。ここではその効果と方法、注意点について紹介していきます。☆冷却効果・代謝活性の抑制(余計なエネルギー消費を抑えること)・毛細血管収縮(冷源消失による血管拡張のリバウンドの影響…冷やされて縮む→冷やすのや...

≫続きを読む

水浴療法(冷水浴、温水浴、温冷交代浴)

「アイシングについて」にて、アイシングや冷水浴を用いたリカバリー効果について紹介しました。簡単にまとめると、・代謝活性の抑制・毛細血管収縮・浮腫による炎症の抑制・神経系の伝達能低下(主観的な痛みの減少)・筋肉の弾力低下によって、・回復を促し、運動間や翌日のパフォーマンス低下を防ぐことができる。・ハイ...

≫続きを読む

アクティブレスト

☆アクティブレストとは休息日に完全に身体を動かさないのではなく、軽い運動を行うことでより良い回復を狙おうとする手段です。筋のリカバリーの助長、心理的な開放という点からアクティブレストは推奨されてはいますが、効果がある、効果がない、逆効果など色々な報告があります。いずれにしても、休養日としての位置づけ...

≫続きを読む

BCAAとは何か?本当に効くのか?

☆BCAAとは?BCAAは、パワー系アスリートから持久系アスリートまで、様々な分野のアスリートの間でも広く知られているサプリメントのひとつです。BCAAとは分岐鎖アミノ酸(Branched-Chain Amino Acid)という、アミノ酸です。タンパク質が分解されるとアミノ酸になりますので、普通の...

≫続きを読む

ストレッチの種類

運動、スポーツの前後、体育授業の前後など、色々なタイプのストレッチが行われていると思います。トレーニング、練習前、ウォーミングアップ中にストレッチをすることは一般的であるという認識が強いはずです。パフォーマンスの向上、外傷予防に効果的であると考えられてきたストレッチですが、ここ最近の研究では、ストレ...

≫続きを読む

ストレッチの効果、生理学

ここではストレッチをすることによって、筋肉、腱などの組織にどのような影響を及ぼすかについて紹介していきます。☆結合組織、腱筋肉は、筋内膜、筋周膜、筋外膜などの弾性コラーゲン線維というもので覆われています。この筋肉を覆う組織の粘弾性(硬さ)は、ストレッチングによって変わりやすいのです。ですので、ストレ...

≫続きを読む

ストレッチが筋力、ジャンプ力に及ぼす影響

ストレッチの即時効果として、柔軟性、可動性などの向上が挙げられます。バレエやフィギュアスケートのように、柔軟性がそのままパフォーマンスにつながりやすい競技では、ストレッチを運動、競技前に行うこと大きなメリットがあると言えるかもしれません。しかし、そのような競技以外のスポーツ、運動においては、運動前の...

≫続きを読む

ストレッチはリカバリーに有効? どう活用すべき?

クールダウンでしっかりとストレッチをしないと疲労が残る!ということを聞いたり、思っていたりする方は今のところかなり多いかと思われます。では実際のところ、運動後のストレッチは疲労回復にどのように影響するのでしょうか?☆ストレッチのみを実施することでは、疲労回復に効果がみられないとする要素・最大筋力・力...

≫続きを読む

睡眠の重要性

☆睡眠とはヒトのみならず、動物は活動と休息を繰り返しながら生きています。ヒトの睡眠は・夜間に連続して眠る・浅い眠りと深い眠りを繰り返すこれら2つの特徴があり、一晩徹夜したからといって、次の晩の眠りが2倍の睡眠時間にはならず、深い眠りを多く出現させることでそこまでの睡眠時間を要さずとも回復します。19...

≫続きを読む

寝不足と運動、知覚能力

「睡眠の重要性」で睡眠不足が脳、身体生理機能に及ぼす影響について紹介しました。ここでは、実際の運動や知覚のパフォーマンスに、睡眠不足がどのように影響するのかについて見ていきます。☆睡眠不足とパフォーマンスに関する研究・36時間の断眠で、徐々に速度を上げていく歩行テストによる疲労困憊に至るまでの時間が...

≫続きを読む

良質な睡眠を確保するためには?

早く眠ることは大切だということが分かっていても、なかなか寝付けなかったり、眠が浅かったり、結果として翌朝の目覚めの悪さ、その日1日の倦怠感に繋がってしまうことは多々あるのではないでしょうか?ここでは、良質な睡眠を妨げる要因、そして良質な睡眠をより促す要因について紹介していきます。☆カフェイン等の刺激...

≫続きを読む

昼寝とパフォーマンス(パワーナップとは?)

正午過ぎに眠たくなる・・・・・こう感じる方は多いかと思います。実はこれは、ヒトの生体リズムの一環であると考えられているのです。この眠気に関わらず、睡眠不足が知覚、運動パフォーマンスに及ぼす影響はこれまで述べてきた通りです。「睡眠の重要性」「寝不足と運動、知覚能力」「良質な睡眠を確保するためには?」寝...

≫続きを読む

アルコールとスポーツ@(リカバリー、筋の成長)

アスリートの飲酒量は比較的多く、競技種目にもよりますが、いくつかの論文ではその量が驚異的であるとして取り上げられています。Lawson et al(1992)の研究ではラグビー選手の試合後の飲酒量がビール22本分に匹敵したといいます。特に大学生、社会人のアスリートともなれば、お酒を飲む機会というのは...

≫続きを読む

アルコールとスポーツA(ダイエット)

アスリートにとって、体脂肪の増加というのは極力避けたいものです。特にパワー/体重 比 が関わる陸上のトラック、フィールド種目においては特に重要であり、関心も高いことでしょう。大学生、社会人ともなれば飲みの席も増えます。アルコールが入ればついつい食べ過ぎたことも忘れてしまい、それが続けばあっという間に...

≫続きを読む

陸上短距離、長距離、跳躍選手と減量について@(なぜ痩せられない?)

陸上競技の短距離、長距離、跳躍選手にとって余分な体脂肪の増加はパフォーマンスを低下させます。余分な重りをつけたまま、速く走ろうとしたり、遠く、または高く跳ぼうとしても上手くいかないことは容易に想像できる事でしょう。できることなら、ある程度低い体脂肪率へと身体を絞って、その状態をキープしておきたいもの...

≫続きを読む

ストレッチのみでは怪我予防にならない

「ウォーミングアップでしっかりストレッチしておきましょう。」「ストレッチしないと怪我するぞ。」スポーツをしてきた人であれば、一度はこのような言葉を耳にしたことがあるかと思います。これは、「身体が硬いと怪我をしやすい、パフォーマンスが上がらない」という昔からある経験則に基づいたものであると言えるでしょ...

≫続きを読む

レース前は和式トイレを使わない−ストレッチはスプリントパフォーマンスを高めるのか...

「ストレッチのみでは怪我予防にならない」では、どのような怪我にもストレッチは万能で、ストレッチさえやっておけば大丈夫だということは無く、ストレッチの目的を明確にすることの重要性について述べました。では、怪我予防ではなく、肝心のパフォーマンスとストレッチの関係はどうなのでしょうか?これまでに発表されて...

≫続きを読む

トレーニング前のストレッチはトレーニング効果を下げる?

「ストレッチのみでは怪我予防にならない」「レース前は和式トイレを使わない−ストレッチはスプリントパフォーマンスを高めるのか?−」では、各種ストレッチが怪我予防やパフォーマンスに与える一時的、または長期的な影響について述べてきました。ここでは、「静的ストレッチは直後のパフォーマンスには悪影響を与えるけ...

≫続きを読む

女性アスリートの3主徴(月経障害・摂食障害・低骨密度)と栄養摂取を考える

女性アスリートが抱える3つの問題女性のスポーツ参加は、ここ数十年で大きく増加しています。運動することは、心臓や血管の健康、気分の良さ、自尊心などの生理学的、心理的状態を良好に保つ効果がありますが、非アスリートに比べてアスリートは摂食障害や不自然な摂食行動が多くみられることも知られています。そして、女...

≫続きを読む

筋力の左右差を改善したらスプリント力は上がる?

「右脚より左脚の方が強い…」「左より右脚の方が脚が太い…」「筋力の左右差があるから直した方がいいよ…」このような言葉をトレーニング現場で聞くことは比較的多いのではないでしょうか?今回は脚の筋力の左右差とスプリント能力について考えていきます。ジャンプ力の左右差とスプリント能力の関係Lockieほか(2...

≫続きを読む

スポーツ競技者のためのアキレス腱痛対策(リハビリ・トレーニング・栄養摂取)

ダッシュやランニングを繰り返すような運動をしていると、アキレス腱の付着部である「かかと部分」や、かかとよりも数センチ上の部分が痛むことがあります。走り始めは痛くても、慣れてくるとだんだん痛みが減ってきていつも通りトレーニングができるけど、次の練習開始時にはまた痛んでしまう。次第に痛みが増していって、...

≫続きを読む