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ストレッチのみでは怪我予防にならない

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「ウォーミングアップでしっかりストレッチしておきましょう。」

 

「ストレッチしないと怪我するぞ。」

 

 

スポーツをしてきた人であれば、一度はこのような言葉を耳にしたことがあるかと思います。

 

 

これは、「身体が硬いと怪我をしやすい、パフォーマンスが上がらない」という昔からある経験則に基づいたものであると言えるでしょう。

 

 

 

本当にそうなのでしょうか?

 

 

 

ここでは、ストレッチと傷害発生の関係性について考えていきます。

 

 

 

 

ストレッチの実施と傷害リスクの関係

 

結論から言うと、ストレッチと怪我の発生率の関係については結論が出ていない状態です。

 

 

Thackerほか(2004)によれば、そのスポーツに求められる範囲を超えて可動域を向上させると、関節が必要以上の範囲で容易に動くようになったり、関節の不安定感が増したりすることによって、逆に傷害発生リスクを高めてしまう危険性があるとされています。

 

 

さらに、Weldon & Hill(2003)およびLauersenほか(2014)では、ストレッチと傷害発生に明確な関連性はなく、この著者らは、運動時の傷害発生を防ぐためにストレッチを実施する価値はないだろうと結論付けています。

 

 

このように、怪我予防のためのストレッチには否定的な見解がなされているようです。

 

 

 

しかし、ストレッチのみでなく、他のトレーニングを介入させた研究では異なる見解も得られています。

 

 

 

Sugiuraほか(2017)は大学生スプリンターを対象に、ハムストリングの肉離れ防止のために、「筋力トレーニングのみを実施した時期」「筋トレ+アジリティトレーニングを実施した時期」「筋トレ+アジリティ+動的ストレッチを行った時期」に分けて、それぞれの時期の肉離れ発生率の関係を調べました。

 

 

 

その結果、「筋力トレーニングのみを実施した時期」よりも、アジリティ、ストレッチを加えた時期で、傷害発生率が大きく減少していました。

 

 

※Sugiuraほか(2017)より、筆者が翻訳

 

 

元々、ハムストリングの肉離れの発生因子として、ハムストリングの柔軟性、筋力や股関節前面(腸腰筋や大腿直筋)の可動性の低さが挙げられており(Freckleton& Pizzari , 2012; Oparほか, 2012)、それらを改善するアプローチとして筋力トレーニングやストレッチが有効に働いたと考えられます(これらのトレーニングが増えることによって、怪我を誘発しやすい最大速度によるスプリントトレーニングが減ったという見方もできますが)。

 

 

 

このように、ストレッチのみでは傷害発生との関係は薄いものの、その他のトレーニングと複合的に実施することで、特定の傷害(ここではハムストリングの肉離れ)発生率を大きく減らすことができた例があることも事実です。

 

 

 

 結局けが予防のためにストレッチした方がいいのか?

 

ここまで述べてきたように、ストレッチをしていれば怪我が減るとは言い切れませんし、効果が無いとも言い切れません。

 

 

しかし、ハムストリングの肉離れの例のように、特定の可動域の低さが傷害発生に関わっていることが明らかで、当該選手自身にもそのような特徴がみられる場合にはストレッチが有効に働くことは十分考えられます。

 

 

選手にどのような特徴があって、どのようなスポーツを行っているのかをきちんと吟味して、ストレッチの目的を明確にしておくことが大切でしょう。

 

 

「どのような怪我にもストレッチは万能で、ストレッチさえやっておけば大丈夫だということは無い。」

 

と言うことは、肝に銘じておくべきです。

 

 

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参考文献(リンク先参照)

 Thacker, S. B., Gilchrist, J., Stroup, D. F., & Kimsey Jr, C. D. (2004). The impact of stretching on sports injury risk: a systematic review of the literature. Medicine & Science in Sports & Exercise, 36(3), 371-378.

 

 Weldon, S. M., & Hill, R. H. (2003). The efficacy of stretching for prevention of exercise-related injury: a systematic review of the literature. Manual therapy, 8(3), 141-150.

 

 Lauersen, J. B., Bertelsen, D. M., & Andersen, L. B. (2014). The effectiveness of exercise interventions to prevent sports injuries: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. Br J Sports Med, 48(11), 871-877.

 

 Sugiura, Y., Sakuma, K., Sakuraba, K., & Sato, Y. (2017). Prevention of hamstring injuries in collegiate sprinters. Orthopaedic journal of sports medicine, 5(1), 2325967116681524.

 

 Opar D.A. et al. (2012). Hamstring strain injuries. Sports Medicine, 42(3), 209-226.

 

 Freckleton G. & Pizzari T. (2012) Risk factors for hamstring muscle strain injury in sport: a systematic review and meta-analysis.. British Journal of Sports Medicine. published online July 4.

 

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