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寝不足と運動、知覚能力

寝不足と運動、知覚能力

 

「睡眠の重要性」で睡眠不足が脳、身体生理機能に及ぼす影響について紹介しました。

 

ここでは、実際の運動や知覚のパフォーマンスに、睡眠不足がどのように影響するのかについて見ていきます。

 

 

 

☆睡眠不足とパフォーマンスに関する研究

 

36時間の断眠で、徐々に速度を上げていく歩行テストによる疲労困憊に至るまでの時間が11%減少(Martin and Gaddis 1981)

 

30時間の断眠で、25% 50% 75%VO2maxの負荷で8分間の自転車エルゴメーターテスト
→VO2、心拍数、VE、血圧に影響はなく、中-高強度運動中の主観的運動強度が上昇(Martin and Gaddis 1981)

 

30時間の断眠で、50分間の自己ペースによる間欠的なスプリント
→最初と最後の10分間のスプリントタイムと走行距離の低下(Skein et al 2011)

 

一晩3時間睡眠で、アームカール、ベンチプレス、レッグプレス、デッドリフトの最大と最大下筋力発揮
→最大下での筋力発揮の大きな低下(Reilly and Piercy 1994)

 

30時間の断眠で、60%VO2max強度での30分走行+自己ペースでの30分走行
→走行距離減少、主観的運動強度、核心温、皮膚温、心拍数に影響なし、固定ペース走行後のVO2上昇(Oliver et al 2009)

 

 

 

これらをもとに考えると、断眠が運動パフォーマンスに与える影響はマイナスであるという一致した見解が得られるでしょう。

 

しかし、長い断眠時間の割にはパフォーマンスに影響がなかった能力も多く、睡眠不足が何に最も影響を与えるのかどうかについてははっきりしていません。

 

研究の中での、自己ペース運動の強度調節は、「自分の睡眠時間が乱れている」という自覚からくるものであるという考え方もできます。

 

 

 

☆断眠と知覚能力、状態に関する研究

 

断眠が脳に与える影響は多く、注意の維持、意思決定、行動判断、作業記憶、モチベーション、興奮性、感情制御などに関わる脳機能は低下しやすくなります。

 

 

一晩の徹夜群とアルコール摂取群で、注意力のテストを行った研究(Dawson and Reid,1997)では、一晩の徹夜は、血中アルコール濃度約0.09%の注意力低下と同程度の状態であることが示されています。

 

お酒の量に換算すると、ビール大瓶2-3本に匹敵します。

 

 

 

 

一晩徹夜状態で車を運転しようものなら、注意力に関して、これは飲酒運転と変わりないものだと言えます。

 

このような注意力の状態でスポーツの練習、トレーニング、試合を行うとなれば、悪影響が出ることは間違いありません。

 

運動が複雑になればなるほど影響は大きくなることでしょう。

 

 

実際のところ、一晩徹夜してスポーツの練習に臨むなどという機会はほとんどないことかと思われます。

 

しかし、4時間睡眠であれば約7日間、6時間睡眠であれば約12日間続けると、一晩徹夜したのと変わらない程度の睡眠不足状態になるということも示唆されていますので、やはり毎日の睡眠時間の確保は非常に重要であるといえますね。

 

 

また、睡眠不足は注意力の低下のみならず、固有受容能力という運動の調節に関わる能力も低下させるので、不慮の事故や運動中の捻挫などの障害につながる可能性も一段と高まります。

 

 

さらに、新しい技能を習得するための練習において、睡眠不足は大敵となる可能性もあります。

 

 

これは睡眠不足が知覚、運動学習の記憶に影響を与えるからです。

 

主に動作の習得は睡眠中に生じる記憶の定着を通じて、次のトレーニング時にも続いていくので、十分な睡眠をとることは筋肉の回復や脳の注意力だけでなく、動作や認知の学習に対してもマイナスであるということです。

 

 

 

ここまで述べてきたように、睡眠不足は身体的にも精神的にもスポーツにおけるスキル向上、体力向上に様々なマイナスの影響をもたらすのは確かです。

 

以上のことから、睡眠は、アスリートにとって特に重要な行為であるといえます。

 

 

 

ですが、現代における様々な環境の変化によって、睡眠不足は悪いことだという認識は持っていても、睡眠不足になってしまうという人は現在もますます増えていることでしょう。

 

 

よって、

 

・いかに睡眠を妨げないようにするか

 

・いかに質の高い眠りができるか

・寝不足になってしまった場合の対処法について

 

 

 

知っておくことは、スポーツにかかわる学生、社会人、指導者にとってかなり有益であると思いますので、次ページで紹介していきたいと思います。

 

 

参考文献

・Hausswirth & Mujika(2013):Recovery for performance in sport. Human Kinetics.

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