温冷療法でもっとも一般的なのが、温冷交代浴です。
冷たいのに入ったり、温かいのに入ったりする方法ですが、選手であれば一度は聞いたことのある方法だと思います。
さて、水浴療法には冷水浴、温水浴、温冷交代浴…
主に3つの方法がありますが、これらのやり方の違いによって得られる効果は変わってくるのでしょうか?
また、そもそもの水浴療法の効果のほどはどの程度のものなのでしょう?
そこで、運動、回復時間別に水浴療法の効果をみていきたいと思います。
運動間が短い場合(数分から数時間後にもう一度運動)
・30秒全力ペダリング×4 r:30秒 の運動後、「交代浴30分」と「安静30分」を比較
→交代浴の方が血中乳酸値は減少(Morton,2007)
・50m全力泳ぎ×6 r:2分で、レスト2分の間に「温水浴」と「水から出る」を比較
→「温水浴」でパフォーマンス改善(Buchheit,Al Haddad,et al.2010)
・30秒全力ペダリング×2で「冷水浴15分」と「安静15分」を比較
→冷水浴でパフォーマンス低下(Schniepp et al.2002)
・30秒全力ペダリング×2で「軽い運動10分+冷水浴15分分+35分安静」と「軽い運動10分+安静50分」を比較
→冷水浴でパフォーマンス低下(Crowe,O Connor and Rudd,2007)
など、他にも多くの報告がなされていますが、傾向としては、
・筋パワーが要求される運動前に冷水浴をやるとパフォーマンスに悪影響がありそう。
・運動間がやや長く(15分以上)、冷水浴を行ったあと、ある程度時間をおいても、パフォーマンスに悪影響が出そう。
・短時間(2分とか)のインターバル間であれば、温水浴か交代浴は効果的かも。
これらのことから、「身体を冷やしすぎず、リラックスし過ぎずに、短時間水に浸かって血流を良くすれば、次の運動まで比較的短時間であっても、パフォーマンスの低下が防げる」かもしれません。
次の運動が翌日からの場合
・18分のペダリング(体重1kgあたり80gの負荷)を24時間間隔で行い、リカバリーの手段として「下肢の冷水浴15分」「マッサージ」「軽い運動」「安静」を比較
→「安静」以外でパフォーマンス維持に効果有り。(Lane and Wenger,2004)
・66回のスプリント運動を合計105分、5日連続で行い、「冷水浴」「温水浴」「交代浴」「安静」で比較。
→「温水浴」「安静」でパフォーマンス低下。(Vaile et al,2008)
・サッカー2試合、試合間48時間で「安静」と「冷水浴+サウナ+ジャグジー」を比較
後の試合中のピークスピード、スプリント距離は「冷水浴+サウナ+ジャグジー」の方が良かった。(Buchheit et al,2011)
・ネット型球技2試合、試合間24時間で「交代浴15分」「冷水浴10分」「軽い運動」「安静」を比較
→「交代浴」「冷水浴」で間欠的スプリント力、垂直跳びの記録がより維持された。(King and Duffield,2009)
・サッカー4試合、試合間24時間で「冷水浴1分×5」と「常温浴1分×5」を比較
→間欠的スプリント、垂直跳びに差なし。(冷水浴の方が筋肉痛減少、主観的にリカバリーした感じが高かった。)(Rowsell et al,2010)
これらのように、様々な研究がなされています。
実際のスポーツの試合間に実施する水浴療法では、冷水浴よりも交代浴が効果的であるとする報告がやや多い印象です。
何れにしても、次の運動が翌日で、試合などの高いパフォーマンスが要求される場合には、冷水浴や交代浴はパフォーマンス維持に良い影響をもたらすと考えて良いでしょう。
悪く言っても、マイナスの影響があるとは考えにくいと思われます。