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干渉作用-持久トレーニングは筋トレ効果を阻害する-

干渉作用-持久トレーニングは筋トレ効果を阻害する-

 

 

干渉作用とは

球技系のチームスポーツでは、選手は試合中に10km近く走り、その間には激しいタックルやジャンプ、ダッシュなどの運動を数多く行います。

 

 

そのため、このようなスポーツ選手には長時間運動を続けられる持久力のみならず、爆発的な筋力発揮やスピードを高めるトレーニングが必要です。

 

 

また、陸上競技の中距離選手や400mスプリンター、混成競技の選手にとっても同様に、スピードや筋力、持久力等の能力を高めることが重要となるのは言うまでもありません。

 

 

こういった事実から、スポーツ選手は持久力を高めるためにインターバルトレーニングや持久走などの手段で持久力を高めたり、バーベルなどを使って筋力トレーニングに励んだりすることでしょう。

 

 

しかし、これらの能力(主に筋力や持久力)を高めようと複数のトレーニングを同時に行った場合、別々に行った場合と比較して、お互いのトレーニング効果が減少してしまうことがあることが多く報告されています。

 

 

この現象をトレーニングの干渉作用といいます。

 

 

30年以上前から研究がなされ、今やスポーツ科学界では疑いようのない事実となっているトレーニング効果の干渉作用。このような影響が明らかになっているにもかかわらず、スポーツの現場に広く応用されている知見とは言い難いのが現状でしょう。

 

 

ここではその、スポーツトレーニングにおける干渉作用について紹介していきます。

 

 

 

 

干渉作用の研究

干渉作用を最初に報告した研究はHickson(1980)によるものです。

 

 

この研究では、アスリートを「筋力トレーニングのみ」「持久トレーニングのみ」「筋力&持久トレーニングを同時に」の3つのグループに分け、10週間トレーニングを行わせたというものです。

 

 

その結果、筋力のみグループでは筋力向上、持久力のみグループでは持久力の向上がみられたが、筋力&持久力グループでは筋力向上の幅が小さく、持久力の伸びは持久力のみグループと同程度ではあったもののやや小さくなりました。

 

 

※Hickson(1980)より、筆者が翻訳

 

この報告を皮切りに、筋力トレーニングと持久トレーニングの干渉作用に関する研究が多くなされていくこととなります。

 

 

最近の報告(Coffey & Hawley, 2017; Wilson et al., 2012)では、持久トレーニングが筋肥大、筋力向上、パワー向上に与える影響や、その原因や特徴についてまとめられています。

 

 

~干渉作用についての要点~

  • 持久トレーニングは筋肥大、筋力、特にパワー向上を阻害する。
  • 持久トレーニングの頻度や時間が長いほど干渉作用は大きい。
  • 持久トレーニングはバイクよりも、ランニングの方が干渉作用は大きい。
  • 筋力トレーニングの干渉作用による持久能力向上への影響は小さい(体重増加を伴わない場合)。
  • トレーニング初心者では干渉作用が無視できる場合があるが、競技歴が長く高度に発達したアスリートほど干渉作用は大きい。

 

 

 

 

 

※Wilson et al.,(2012)より、筆者が翻訳

 

 

 

 

 

 

Coffey & Hawley,(2017)より、筆者が翻訳

 

 

 

 

このように、持久トレーニングが筋肥大、筋力、パワー向上に与える負の影響は明白ともいえます。

 

 

下半身強化といって長時間のランニングを課すことが、筋トレによる下半身強化を阻害してしまうというのは何とも皮肉なものです。

 

 

スポーツ経験、トレーニング経験の浅い選手、成長期のジュニア選手などであれば多少は影響が少ないとはいえ、筋機能を十分に発達させる目的の選手にとっては、不必要なトレーニングはできる限り避けたいものです。

 

 

この干渉作用の原因と対策方法をしっかりと理解して、効果的なトレーニングを実践していきましょう。

 

 

 

関連記事

・干渉作用の原因―筋力向上させつつ持久力を高められない理由―

 

・干渉作用を最小化する戦略―筋力を高めつつ持久力を高める方法―

 

 

 

参考文献(リンク先参照)

・Hickson R. C. (1980) Interference of strength development by simultaneously training for strength and endurance. European journal of applied physiology and occupational physiology, 45(2-3), 255-263.

 

・Coffey V.G.& Hawley J.A.(2017). Concurrent exercise training: do opposites distract?.The Journal of physiology, 595(9): 2883-2896.

 

・Wilson J. M., Marin, P. J., Rhea, M. R., Wilson, S. M., Loenneke, J. P., & Anderson, J. C. (2012). Concurrent training: a meta-analysis examining interference of aerobic and resistance exercises. The Journal of Strength & Conditioning Research, 26(8), 2293-2307.

 

 

 

 

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