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干渉作用の原因―持久力を高めつつ筋量を上手く増やせない理由―

干渉作用の原因―持久力を高めつつ筋量を上手く増やせない理由―

 

 

「干渉作用-持久トレーニングは筋トレ効果を阻害する-」で、持久トレーニングが筋肥大、筋力、パワー向上に与える負の影響について紹介しました。

 

 

ここではその干渉作用がなぜ起きるのか、そのメカニズムについて探っていきます。

 

 

 

干渉作用はなぜ起きる?

エネルギー収支がマイナスになりやすい

 

特に高負荷の持久トレーニングはより多くのエネルギーを消費します。

 

 

より多くのエネルギーを消費するということは、体重が減りやすい状態、すなわち筋肉が減りやすい状態になることを意味します。

 

 

また、より多くのトレーニングを行った後は食欲がなくなったりする場合もあり得ます。

 

 

このため、さらに体重が減りやすい状態に陥りやすくなるとも言えるでしょう。

 

 

このことが、持久トレーニングの量が増えるほど、筋量増加に悪影響が出やすい一つの理由と考えられています。

 

 

 

オーバートレーニング

 

筋力トレーニングと持久トレーニングを両方行えば、当然全体のトレーニング量は多くなります。

 

その結果、身体の回復が追いつかなかったり、オーバートレーニングの状態になったりすることで、トレーニング効果を損なってしまいやすくなります。

 

 

 酵素活性

 

持久力を高めるために重要な酵素にAMPK(アデノシン1リン酸活性化タンパク質キナーゼ)と呼ばれるものがあります。

 

持久トレーニングを行うと、このAMPKが活性化し、脂肪や糖の利用を促すことで持久能力が改善されることが知られています(Terada et al., 2005)。

 

 

一方、mTORC1(エムトール1複合体)は筋力トレーニング後に活性化し、筋肥大に重要な役割を果たします(Terzis et al., 2008)。

 

 

しかし、持久トレーニングと筋力トレーニングを同時に行うことで、AMPKの活性がmTORC1の活性を抑制してしまうことが明らかになっています(Baar K., 2014)。

 

 

その結果、持久トレーニングが筋力トレーニングの効果を阻害してしまいます。

 

 

 

 

急性・局所的な疲労

 

ランニングなどの運動は、一歩一歩の衝撃が大きいため、下肢へのダメージが大きくなります。

 

 

特に、球技などにみられる急な方向転換やハイスピードでのスプリントでは、動作にブレーキをかける強い負荷がかかります。

 

 

このブレーキをかけるような筋肉の収縮をエキセントリックな筋収縮と言いますが、その収縮速度が高いほど筋肉を分解するタンパク質が多く発生することが知られています(Ochi E et al., 2010)。

 

 

 

これが影響し、局所的な疲労が蓄積しやすくなり、その部位の筋力向上に悪影響が出てしまうと考えられます。

 

 

トレーニングによる走行距離が非常に多いと考えられるマラソン選手、スプリンター、サッカー選手などの下半身が永久的にムキムキになっていかない理由はここにあると考えられます。

 

 

また、下肢にダメージを与える持久トレーニングは、上半身の筋力向上には影響を及ぼさなかったと言う報告もあり、部位を分かれていれば、干渉作用は小さくなることが考えられます。

 

 

 

 

 

 

このように、干渉作用の原因として考えられることは様々です。

 

と同時に、この干渉作用を最小化する戦略も多く考えられることでしょう。

 

次は、「干渉作用を最小化する戦略―筋力を高めつつ持久力を高める方法―」について紹介していきます。

 

 

 

 

参考文献(リンク先参照)

・Terada, S., Kawanaka, K., Goto, M., Shimokawa, T., & Tabata, I. (2005). Effects of high‐intensity intermittent swimming on PGC‐1α protein expression in rat skeletal muscle. Acta Physiologica, 184(1), 59-65.

 

・Terzis, G., Georgiadis, G., Stratakos, G., Vogiatzis, I., Kavouras, S., Manta, P., ... & Blomstrand, E. (2008). Resistance exercise-induced increase in muscle mass correlates with p70S6 kinase phosphorylation in human subjects. European journal of applied physiology, 102(2), 145-152.

 

・Baar, K. (2014). Using molecular biology to maximize concurrent training. Sports Medicine, 44(2), 117-125.

 

・Ochi E et al.,(2010)Elevation of myostatin and FOXOs in prolonged muscular impairment induced by eccentric contractions in rat medial gastrocnemius muscle.J Appl Physiol 108:306–313.

 

 

 

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