ピリオダイゼーション(陸上短距離)①―理論の本質を理解しよう―
ピリオダイゼーション(陸上短距離)②―一般的体力と専門的体力の違い、および準備期の重要性―
にて、マトヴェーエフのピリオダイゼーション理論とはどういったものなのか、そして競技力に繋がる土台作りの重要性について紹介してきました。
ここでは、具体的に「準備期」をどのように過ごしていけばよいかについて考えていきます。
準備期の目標
準備期の最終目標はここまで何度も述べてきた通り、土台を作り上げること、すなわち「スポーツフォームの形成」です。
この準備期間は「一般的準備期」と「専門的準備期」に分かれ、一般的準備期の方がやや長くなります。
これは、一般的体力とみなされる土台要素は、それを向上させるのに比較的長い時間を要するからです。
一般的準備期
一般的準備期の目標
一般的準備期では
①身体機能の全般的水準をあげる
②身体能力を多面的に発達させ
③運動能力を拡充する
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これらが目標となります。
全般的に体力を向上させていくと言っても、何らかの形で競技力に貢献しうる能力を高めていかなければなりません。
土台だ!といって、スプリンターが握力を鍛え続けても競技力には転移しづらいことは分かるかと思います。前腕がムキムキになっても、重りになり、返って競技力を損ねてしまいます。
このように、向上させることで逆に競技力を低下させてしまうトレーニング効果の転移を、負の転移と言い、土台作りでは特にこの負の転移を生まないようにトレーニングを積んでいくことが重要です。
そのためには、その競技には何が必要か、深く理解している必要があります。
一般的準備期のトレーニング負荷
前述の通り、筋量などの形態的な要素や、持久力に関わる毛細血管増加、エネルギー代謝の根本的なバックグラウンドを大きく改善させるためには、多量のトレーニングを長期間にわたって行う必要があります。
そのため、この期間では強度よりも量に重点を置き、専門的準備期よりも長い期間が必要です。
トレーニング量を増やすことを目指していくことになりますが、トレーニング量を増やそうと、やみくもにトレーニング強度を下げ過ぎてしまわないように注意が必要です。
なぜなら、筋サイズ、速筋の持久性を高めるためにはある程度高い強度でなければ、効果的に能力を向上させられないからです。
しかし、極端に強度を上げると一時的にトレーニング効果を上げることはできるかもしれませんが、トレーニング量を十分増やせず、土台をしっかり作ることが難しくなることが予想されます。
量も強度もやみくもに増やさず、適切なトレーニング効果が得られる範囲内で、自分の能力向上に伴い、主にトレーニング量を「増やしていける」ことが重要でしょう。
専門的なトレーニングはしなくてもいいのか?
種目特有の運動、100mスプリンターならスタート練習や60m走などは選択的に、補助的にやることがポイントとなります。
100m走のレースのような試合的トレーニングは量がかなり限定されます。
なぜなら、この段階で頻繁に専門的なトレーニングばかりやりすぎると、技術が変に固まり、シーズン中の良いイメージが足枷になり、新しい変化を起こしづらくなる可能性が高いからです。
専門的準備期
専門的準備期の目標
専門的準備期では
・一般的準備期で作った土台を改良し、ハイパフォーマンスを発揮するための準備を進めていく
・その種目に特異的な運動能力を発達させて、競技会で必要な技術や戦術、さらにはメンタル面での向上に取り組む
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これらが目標になり、競技会の部分練習や試合そのものに取り組んでいきます。
その過程や結果で、スポーツフォームが完成していくのです。
ここで、一般的トレーニングの割合は必然的に減り、最終段階として、競技会そのものがトレーニングの重要な役割を占めることになります。
ここでの競技会と言うのは「試合期に入った!」という意味ではなく、準備的な意味合いでの試合、予行練習という位置づけです。
専門的準備期のトレーニング負荷
「競技会で結果が出せるよう、能力を最適化させる」
これを達成するためには、結果的にトレーニング強度は高くしなければなりません。
最終的に強度の高いレースとそれに付随する専門的トレーニングの負荷量を増やしていく必要が出てきます。
そして土台の改良は、土台作りより比較的早く進む(早く結果につながる)ので、この期間は比較的短くなりやすいと言えます。
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・ピリオダイゼーション(陸上短距離を中心に)③―準備期の過ごし方―
・ピリオダイゼーション(陸上短距離を中心に)④―試合期の過ごし方―
・ピリオダイゼーション(陸上短距離を中心に)⑤―移行期の過ごし方―
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参考文献
・L. P. マトヴェーエフ:魚住廣信監訳・佐藤雄亮訳(2008)ロシア体育・スポーツトレーニングの理論と方法論,ナップ.