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スレッド走(そり牽引走)の効果って?負荷設定は?-加速力を高めよう-

スレッド走(そり牽引走)の効果って?負荷設定は?-加速力を高めよう-

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「陸上短距離のスタートダッシュでリードを奪う。」

 

「サッカーでパスを受けた後、相手を抜き去り、置き去りにしてシュートを決める。」

 

 

このような場合、自分の身体を素早く移動させる能力、すなわち「スプリント加速能力」が非常になります。

 

 

このスプリント加速能力の高さはあらゆるスポーツで有利に働き、スポーツのトレーニングでは、これを高めるために様々なトレーニングを行っていることでしょう。

 

 

そのトレーニングの一つに「スレッド走(そり牽引走)」が挙げられます。

 

 

スレッド走(そり牽引走)とは?

 

スレッド走(そり牽引走)とは、その名の通り、そりを引きながらダッシュを行うトレーニングです。

 

タイヤ引きなどで代用される場合もあります。

 

このように重りを引くことで負荷をかけ、スプリント加速能力を向上させようという手段になります。

 

 

参考動画はこちら

 

 

 

スクワットやデッドリフトなどのバーベルを用いたウエイトトレーニングとは異なり、身体の前傾角度や、接地時間など、スプリント走における加速局面に近い状況で負荷をかけられることが特徴です(John,2006)。

 

 

 

スレッド走の効果

 

Zafeiridisほか(2005)は、5㎏の負荷でスレッド走を2ヵ月行った場合、負荷を用いなかった群と比較して、スタートから20mの疾走速度の増加、特に10mまでの速度向上が著しかったことを報告しています。

 

 

スレッド走では、膝関節や股関節の伸筋群、特に臀部や大腿部の活動が高まり、これらの筋力増加が加速能力向上に繋がったと、ここでは考察されています。

 

 

また、前傾角度や接地時間の増加もみられていました。

 

 

さらに、スレッド走は、全体の地面反力に対する水平方向の地面反力を高めることも示唆されています(Kawamoriほか,2014;Morinほか,2017)。

 

 

これはどういうことかと言うと、発揮する力をより水平方向に傾けることができるようになる…すなわち加速局面で推進力を上手く得る技術を習得できる可能性があるということです。

 

 

 

 

このように、スレッド走には、筋力的にも技術的にもスプリント加速能力向上に効果的な面があると言えます。

 

 

 

 スレッド走の負荷設定

 

では、スレッド走を行うとき、その負荷設定はどのように行えばよいのでしょうか?

 

負荷設定として、Lockie ほか(2003)は軽い負荷でのトレーニング(自体重の10%程度、または速度が10―15%低下する負荷)を推奨しています。

 

 

これは、負荷が重すぎると実際のスプリント加速局面とは動作や力発揮時間が大きく異なってしまい、パフォーマンスに悪影響を与えるかもしれない…といった理由からです。

 

 

確かに、レースが近い時などに実際のスプリント加速動作とは異なる動作を身体が覚えてしまうと、本番の動作に悪影響が出てしまう可能性は否めませんね。

 

 

 

 

しかし、Kawamoriほか(2014)では、速度が10%低下する負荷(軽重量群)と30%低下する負荷(高重量群)では、高重量群の方が5m、10mのスプリントタイムが減少する傾向があったことを報告しています。

 

 

また、体重の80%という超高重量のそり牽引トレーニングは、無負荷のスプリントトレーニングよりも5m、20mのスプリントタイムを向上させ、地面反力の水平成分を増加させています(Morinほか,2017)。

 

 

 

※Morinほか(2016)より、筆者作図

 

 

このように、実際の加速局面に動作が近いから効果が高い…と言うことは無く、逆に実際の動作とは大きく異なるようなトレーニングの方が、スプリント加速能力を向上させるかもしれない…というのは非常に興味深いですね。

 

 

とは言っても、レース直前や調整期間などに、本来の技術が大きく変化するようなトレーニングを行うことは、やはりリスクを伴うかもしれません。

 

 

長期的にみるとスプリント加速能力の技術、体力を向上しうるトレーニングとして有用でも、短期的にみた技術の変化、即時効果などはあまり良く分かっていないからです。

 

 

特に精密な動作を非常に高い努力度で行う短距離走では注意が必要でしょう。

 

これらのことを考慮しながら、スレッド走(そり牽引走)のやり方、実施時期などを考えてみてください。

 

 

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 参考文献

・John Cronin, Keir T.Hansen (2006) Resisted Sprint Training for the Acceleration Phase of Sprinting. N. Strength Cond. Association. 28(4) : 42-51.

 

・A.ZAFEIRIDIS, P.SARASLANIDIS, V.MANOU, P.IOAKIMIDIS, K.DIPLA, S.KELLIS(2005) The effects of resisted sled-pulling sprint training on acceleration and maximum speed performance. J. Sport Med Phys Fitness.45:284-90.

 

・Kawamori, N., Newton, R. U., Hori, N., & Nosaka, K. (2014). Effects of weighted sled towing with heavy versus light load on sprint acceleration ability. The Journal of Strength & Conditioning Research, 28(10), 2738-2745.

 

・Morin, J. B., Petrakos, G., Jiménez-Reyes, P., Brown, S. R., Samozino, P.,& Cross, M. R. (2017). Very-heavy sled training for improving horizontal-force output in soccer players. International journal of sports physiology and performance, 12(6), 840-844.

 

・Lockie, R.G., A.J.Murphy, AND C.D.Spinks (2003) Effects of resisted sled towing on sprint kinematics in field sport athletes. J.Strength Cond.Res.17 : 760-767.


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