体力トレーニングの概念

体力」という言葉は、スポーツや体育の現場でよく使われるものですが、具体的に説明できる人は実はあまりいません。

 

 

マラソン大会で一番になる人、仕事を休まずにバリバリこなせる人を「体力があるね!」と表現したりすると思います。

 

決して間違ってはいないのですが、多くの場合は「元気で活力があり、病気になりにくく持久力に富む能力」として捉えられています。

 

しかし「体力」というのはその側面だけではなく、実は人間の能力を評価する様々な側面を含んでいます。

 

 

体力(たいりょく)とは生命活動の基礎となる体を動かす力のことである。殆どの場合、体力とは筋力・心肺能力・運動能力等の総合的な身体能力のことを指し、体を動かすスポーツ等で肉体能力に恵まれ、成果を出すことができる者は体力があると評価される。また、喧嘩が強い者や病気への抵抗力がある者、過酷な労働に耐え、疲労からの回復が早い者なども体力があると評価される。(Wikipedia)

 

 

 

と、あります。後半の「また…」からは世間でよく使われるような認識です。

 

しかし、スポーツを語る上では特に前半の「身体能力」という部分に対する考え方、認識をしっかりと持っておく必要があります。

 

 

 

☆体力とは?

 

 

 

 

 

体力はこれらのような多くの要素から成り立っています。

 

陸上競技などのスポーツに関わる部分はどこか?

 

と考えた時に出てくる答えは「全て」でしょう。

 

どれ一つ欠けてもスポーツに大きな影響を及ぼします。

 

 

 

 

このようにスポーツの能力はあらゆる「体力基盤」の上に成り立っています。

 

そしてこの体力レベルは習得できる技術を左右します。

 

 

定の体力レベルになければ、なかなか習得できない技術というものがあるからです。

 

 

☆技術と体力の関係

 

例を下に示しますと、

・400mハードルでいうとハードル間を13歩で走ることができるだけの体格、スピードを持ち大きなストライドを生み出せる能力(体力)がなければ、13歩でハードルを軽快にクリアしていく技術は習得できない。

 

・前世界記録保持者のアサファ・パウエル選手のような爆発的なキック力と強靭な股関節屈曲筋群を持っていなければ、パウエル選手のような100m走のスタートダッシュを習得することはできない。

 

・股関節の伸展筋群が強すぎて、屈曲筋が弱すぎるのに、脚が流れないフォームを身に付けようとしてもなかなか上手くいかない。

 

・ポケモンでいうと、レベルが低いポケモンがいきなり大技を覚えることができない。(ポケモンわからない人ごめんなさい。)

 

このように、スポーツが上手くなる、上手なスプリントフォームを身に付けるためには、それ相応の基盤となる体力が必要だということです。

 

また、逆もあり「ある程度の技術レベルを習得しなければ発達していきにくい体力」というものもあります。

 

・ウエイトトレーニングのフォームを習得できていないのに、ウエイトトレーニングをやっても効果が得られにくいといった場合はウエイトトレーニングの技術を先に習得させる必要がある。

 

・スキップができないのに、スキップドリルで瞬発力等の体力を育てようとしても無理なので、まずは基本となるスキップというスキルを身に付ける必要がある。

 

 

 

 

 

このように、体力と技術は密接な関係にあります。

 

陸上競技でも、体力トレーニングとして様々なことを行っているかと思いますが、その目的は、

 

「後天的に獲得できる体力レベルを向上させて、より高い技術習得、記録向上につなげることでしょう。

 

残念ながら、性別や体格(これ栄養状態等によって変わりますが)、速筋遅筋線維の比率など、先天的な要因がかなり強い体力要素というものはあります。

 

これはいくら嘆いても仕方のないことです。

 

よって、競技力を向上させるには工夫と努力で後天的に獲得できる体力要素を他よりも効率的に伸ばしていく必要があります。

 

 

だからこそ、体力トレーニングというものを、実際の競技とは別個に行うスポーツ選手が多くいるわけです。

 

 

 

☆競技そのものをやり続ければ、必要な体力は向上させ続けられる?

 

「あれ?競技そのものを一生懸命練習していれば、その競技に必要な体力は自然と育っていくんじゃないの?」

 

といった疑問がここで生まれてくるかもしれません。

 

「100m走の選手であれば、100m走をひたすら繰り返す」

 

「走り幅跳びの選手であれば、ひたすら全助走での跳躍を繰り返す」

 

「競技そのものの能力を向上させるためには、競技そのものをやるべき」という考えは、合理的であるとも考えられます。

 

この考えに基づいてトレーニングを進めていくことは、試合期においては重要と言えるかもしれません。

 

しかし、トレーニングには「馴化現象」というものがあり、一定の刺激に対する生物学的応答は時間とともに低下していきます。

 

したがって、

 

・同じことを繰り返しているだけでは、体力を向上させ続けることは難しいといったこと。

 

・そもそも競技そのものの練習だけで、競技に必要な体力を十分高められない場合もあること。

 

 

これらのことから、体力トレーニングなんか不要だ!!と言い切るのは非常に難しいでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

実際に、100m選手なら100mだけ、400m選手なら400mだけ、走幅跳ならひたすら試技を繰り返すことを延々と練習している選手はいないでしょう。

 

何かしら別のことをやっていると思います。

 

 

 

かの有名な元400mハードル選手の為末選手は最初から400mハードルの練習をして速くなったわけではなく、元々取り組んできた100mや200mの圧倒的なスピードが400mハードルでの好成績の基盤となっていることは間違いないでしょう。

 

ハードル間を13歩で走るのに、ハードル間を13歩で走る練習をするよりも、100mや200mのスピードを徹底的に磨いてからその練習に取り組む方が近道になるかもしれません。

 

 

以上のことから、体力トレーニングというものは、競技そのものを練習して、その競技に必要な体力要素を伸ばしていくよりも、ターゲットとする体力要素を少し別の方法で効率よく体力を向上させ、パフォーマンスをアップさせるための近道になり得るということです。

 

 

☆競技そのものの練習の重要性

 

ただ勘違いしないでいただきたいのは、やはり、競技そのものの練習は疎かにしてはならないということです。

 

やはり、ウエイトトレーニングのみ、ジャンプトレーニングのみでは100m走の記録を伸ばすためには不十分だと考えられます。

 

 

ここである研究を紹介します。

 

・垂直跳の動きを練習したグループA

 

・垂直跳に必要な筋力をトレーニングして高めたグループB

 

・垂直跳の練習 + 筋力を高めたグループC

 

 

これらのグループで、垂直跳の記録の伸び幅を調べた結果、

 

Bが最も伸びが悪く、その次にA、一番伸びたのがCという結果でした。

 

 

つまり、体力要素を高めただけでは目的のパフォーマンスに繋がらないことは十分あり得るということです。

 

ですが、Cのように体力要素を高めて、動きそのものの練習をすればパフォーマンスは向上していくでしょう。

 

「体力トレーニングだけ」行えば良いというわけではないということです。

 

 

 

また、その競技の練習をすることによって維持される体力要素があることや、向上した体力を実際の競技に結びつけるためには実際の競技の練習をする必要があり、やはり競技力を伸ばすためには競技そのものの練習をやることは当たり前、ということです。

 

ここを履き違えると肝心のパフォーマンスが上がりにくくなってしまいます。

 

 

☆まとめ

 

・体力とは技術やパフォーマンスを構成する基盤となるもので、先天的、後天的な要素がある。
 
・工夫と努力によって後天的に獲得できる体力要素を別にトレーニングしていくことで、競技そのものをやってその体力を向上させるよりも近道になり得る
 
・他の体力要素レベル維持、向上した体力を競技に結びつけるためにも、やはり競技そのものの練習は疎かにするべきではない。

 

 

自身や他人のパフォーマンスを向上させる上で、なぜこれをやる必要があるのか、どういった意図なのかしっかりと考えること、明確な認識をしておくこと、他に説明ができること、は非常に重要です。

 

特に様々なメディアで方法論ばかりが飛び交う、体力トレーニングについては、です。

 

このような基本的な概念を大切にしなければ、自身がやること、他に指導することがひたすら形骸化していきます。

 

 

「あの人がやってるから」

 

「あの人がやれといったから」

 

「これをしたら足が速くなると書いてあったから」

 

 

では、長期的に見て選手としてもコーチとしてもパフォーマンスの向上は望めないでしょう。
 
トレーニングは目的をしっかり把握して、計画的に、正しく行っていく必要があるのです。
 
 

 

 

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