スプリント力とジャンプ力の関係@

 

スプリント中の地面への力発揮は「弾性筋力」という筋力が大きく関わることを「切り返し運動@」「切り返し運動A」で説明しました。

 

 

切り返し運動の能力、またはジャンプ能力に優れた選手は「バネがある」とよく表現されていることでしょう。

 

 

では、実際にこのジャンプ力とスプリント力にはどのような関係があるのでしょうか。

 

 

 

 

 

☆立ち幅跳び、立ち五段跳びと最高スピード

 

下の図は、100m走の記録を上位群(10.86±0.24秒)と下位群(11.51±0.37)で分け、最高スピードと立ち幅跳び、立ち五段跳びとの関係を示したものです。

 

立ち幅跳びは、スポーツテストでよく用いられるものと同様で説明は必要ないと思います。

 

立ち五段跳びは、両足をそろえた状態から5歩の連続ジャンプでどれだけ遠くまで進むことができるかをテストするものです。

 

こちらを参考にしてみて下さい。
https://www.youtube.com/watch?v=b5ptCpTAlGg 

 

 

 

 

立ち幅跳び、立ち五段跳びの2種目のジャンプともに、下位群よりも上位群の記録が優れていることが分かります。

 

しかし、相関を見てみると、下位群では、2種目のジャンプ能力と最高スピードの間に有意な相関関係が認められたものの、上位群では有意な相関関係はありませんでした。

 

 

このことは、ある一定のレベル(100m11秒台くらい)では、これらのジャンプ能力が最高スピードに強く関係し、ジャンプ能力を高めることでパフォーマンスを改善できる可能性が高いということを示しています。

 

 

ですが、レベルが高くなればなるほど、下位群よりもジャンプ能力の水準は高いものの、ばらつきが大きく、ジャンプ能力とパフォーマンスの関係は弱くなっていくようです。

 

 

 

「切り返し運動A」において、

 

高いレベルの選手に近づくほど、最大筋力と素早い切り返し運動で発揮できる力に有意な相関関係が見られなくなってしまう。

 

ということを述べています。
これも同様で、やはり別のトレーニング効果を実際の競技のパフォーマンスにどれだけ転移させられるかは、レベルが高くなればなるほど、その程度が低くなる傾向がありそうです。

 

 

 

 

☆立ち五段跳びの記録と最大スピードの個人内変化

 

100m走の自己ベスト10.46の選手A、10.78の選手Bにおいて、立ち五段跳びの記録と最高スピードの変化の過程を調査した面白いデータがあります。

 

 

 

 

 

 

 
B選手では、立ち五段跳びの記録向上とともに最高スピードも向上しました。

 

A選手では立ち五段跳びの記録と最高スピードは並行するような変化が見られませんでした。

 

 

 

このことから、B選手においては立ち五段跳びの記録はパフォーマンスを決定する有用な指標になり得るということが分かります。

 

A選手では、そうなりそうにありません。

 

 

 

立ち五段跳びによる連続ジャンプは、最大疾走時の力発揮と「やや似た」力発揮であると言えます。

 

ですが、同じ力発揮ではありません

 

A選手では、立ち五段跳びでの力発揮の仕方が大きく改善されたために、実際のスプリント中の力発揮に悪い影響を及ぼしたという可能性があります。

 

 

これはB選手にも関係があることで、B選手はこの時点でのレベルでは、立ち五段跳びがパフォーマンスを決定する有用な指標とできそうですが、さらに上のレベルになると、A選手と同じようなことが起こるかもしれません。

 

 

 

スプリント中の力発揮という専門的な体力に対して、立ち五段跳びでの力発揮は別の体力と捉えることができます。

 

 

一般的な体力が高まることで、専門的な体力が高まる可能性は上がるでしょう。

 

 

しかし、一般的な体力と専門的な体力の関係はこれまで述べてきたとおり、個人差があるのは当然で、レベルが高くなればなるほど強い関係ではなくなっていくと予想されます。

 

 

よって、選手、コーチは、レベルと特性を見極めて、個別にトレーニングメニューを決定する必要があります。

 

 

一般的な体力のテスト、専門的な体力のテストを行いながら、成長に合わせて、トレーニングメニューを変化させていく必要も出てきます。

 

 

最大筋力やジャンプ能力をテストする際は、その時の専門的な体力(実際の競技やそれにかなり近いもの)をテストし、比較検討していくことも有用となります。

 

 

他校、他クラブ、他選手のトレーニングだけを真似しても強くなるとは限りません。

 

「手法を真似る」ではなく、「確実な情報をもとに考える、思考を学ぶ」ことも重要です。

 

 

 

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