スプリントとエネルギー供給

 

運動する時、人は筋肉を動かします。そのエネルギー源は筋肉の中に微量に蓄えられているATP(アデノシン三リン酸)というものです。

 

このATPをADP(アデノシン二リン酸)とPi(リン酸)に分解するときに発生するエネルギーを使って、筋肉が動きます。

 

人間の全ての運動はこのエネルギーを使って行われるわけです。

 

 

しかし、このATPは筋肉にほんの少ししか蓄えがないので、人が運動を続けるには、ATPを再び作り出していく必要があります。

 

そして、そのATPを再合成させる過程には以下の3つのやり方が存在します。

 

 

 

@ ATP-CP系

 

筋肉の中にあるクレアチンリン酸(CP)を分解する時のエネルギーを使って、ATPを再合成させる過程です。
ATP-CP系はエネルギー供給が最も早い代謝系で、大きな力を出すときにメインで働きますが、筋肉中のクレアチンリン酸はすぐになくなってしまうので、この過程で発揮するハイパワーは長続きできません。(全力運動だと大体10秒程度)

 

 

 

A 解糖系

 

筋肉や肝臓にあるグリコーゲン(糖質)を分解するときに発生するエネルギーを使ってATPを再合成させます。その途中で乳酸という副産物ができます。

 

ATP-CP系ほどではないですが、比較的高い力を発揮する事ができます。また、ATP-CP系より長続きします。(全力運動だとATP-CP系と合わせて40秒くらいまで) (トレーニングで伸ばせる可能性有り)

 

 

 

 

 

B 有酸素系

 

身体の中のブドウ糖や脂肪を分解して、その時のエネルギーでATPを再合成します。エネルギーの生成速度は遅く、酸素を使った供給過程になりますが、長時間安定してエネルギーを供給できるのが特徴です。

 

 

 

 

 

短距離走ではATP-CP系と解糖系がメインになり、短時間で大きなパワー発揮が必要とされます。

 

スプリント走でのエネルギー供給割合を見てみると、ATP-CP系、解糖系の無機的なエネルギー供給が大半を占めることが分かると思います。

 

しかし、運動時間が短いといえど、摂取した酸素を利用する割合は平均して、100mで2割、200mで3割、400mで5割ほどであり、極端に短い全力運動でも、無酸素状態で運動しているわけではないことが分かるでしょう。

 

 

100mは無酸素運動だ!

 

というのは間違いで、どんな運動であっても、ATP-CP系、解糖系、有酸素系のエネルギー供給系は同時に働いています。

 

 

よくある間違いとして、
「運動を始めて10秒くらいはATP-CP系で…40秒くらいまでは解糖系で…それ以降が有酸素運動になる!!」

 

 

といった表現です。

 

競技スポーツのトップ選手でも「運動の最初しかATP-CP系が使えないから、そこでできるだけ力を出さないのはもったいない!」ということをおっしゃる方もたびたびおります。

 

 

しかしそうではなくて、そのエネルギー供給の過程で酸素を使う系と酸素を使わない系があるだけで無酸素運動というのは厳密に言うとありえません。

 

 

 

 

さて、短距離走においては無機的なエネルギー供給が大半を占めるという話をしました。短距離走ではこの系でどれだけ多くエネルギーを供給できるかが重要となってきます。

 

多くのエネルギーを生みだすことで、誰よりも早くゴールにたどり着いてしまえばいいのです。

 

 

ATP-CP系は筋肉に微量に貯蔵されたクレアチンリン酸を使ってエネルギーを供給するので、速く走るのに必要な筋肉が大きければその供給量も上がると言えますし(結果論なのですが…笑)クレアチンのサプリメントを摂取して、貯蔵量を増やしてあげるのもハイパワーの供給力を上げる一つの方法になるでしょう。

 

 

解糖系では、このエネルギー供給力の指標として乳酸をどれだけ出すことができるかが挙げられます。

 

特に400mや800mでは、この乳酸をたくさん作って高いエネルギーをどれだけ生み出すことができるかが競技成績に大きく影響します。

 

 

 

酸は解糖系でエネルギーを生み出す時にできる副産物のようなもので、疲労に直接的に関わっているわけではないので、乳酸だけで疲労度合いを判定するのは難しいでしょう。

 

 

要は、その競技で主に必要とされるエネルギー系を理解して、その供給力を高めることが重要であるということです。

 

 

となれば、スプリントトレーニングの目的はその能力を高めることとも言えます。

 

ただ闇雲に数字に「 + 」をつけて並べただけのセット走などをなんとなくやっている、またはさせているだけでは、トレーニング本来の目的が、指導者にとっても選手にとってもわからずじまいに終わってしまいます。
 
高めたいエネルギー系を理解して、トレーニングのスプリント時間、強度、休息時間、本数、セット数などを工夫していく必要は絶対にあると言えるでしょう。

 

 

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