ロングスプリント生理学@(無酸素性能力)

 

400m走でメインとなるエネルギーの供給系は解糖系です。

 

「スプリントとエネルギー供給」

 

 

しかし、解糖系やATP-CP系による素早いエネルギー供給は無限に続くわけではなく、疲労によって400m走の特に後半では速度の著しい低下がみられます。

 

 

これは、高いパワーを生み出すエネルギー供給の過程でクレアチンリン酸が枯渇してしまうこと、筋のphが下がり(やや酸性に傾く)、解糖系を機能させるのに重要な酵素(PFK:ホスホフルクトキナーゼ)の働きを悪くさせてしまうことが原因の一つとして考えられています。

 

よって400mでは酸素を使った供給系である有酸素系の能力も、特に400m走の後半から終盤でパフォーマンスに影響します。

 

 

 

 

 

 

 

このように高いスピード、そして持久力という体力要素が求められる上に、最初から全力疾走するわけにもいかないので、効率よく早いタイムで走り切るペース配分といった技術も求められる、それが400m走という種目だと言えます。

 

ここでは400m走の生理学的な要素の一つである、無酸素性の能力について考えていきます。

 

 

 

☆400m走と無酸素性能力

 

無酸素性能力とは、ATP-CP系や解糖系からどれくらい多くエネルギーを供給できるかという能力で、その指標に酸素負債というものがあります。

 

ATP-CP系や解糖系はそのエネルギーの供給過程で酸素を必要としませんが、運動が終わってから、使ったクレアチンリン酸を再合成したり、その過程で出た副産物を処理したりする時に最終的には酸素を使います。

 

 

つまり、酸素の借金をして、その代わり短時間で高いパワーを生み出しているということです。

 

したがって、酸素の借金がどれくらいかを見ると、無酸素性の能力が評価できるということになります。

 

そしてこの酸素の借金量(体重あたりの酸素負債量)と400m走のパフォーマンスには有意な相関関係が認められています。

 

 

 

 

 

 

また、体重あたりの最大酸素借と200m走、400m走で有意な相関関係が認められています。(600m走では認められませんでした)

 

 

よって解糖系がメインとして働く400m走では、この無酸素性のエネルギー供給力というのが、パフォーマンスに大きく影響していることが分かると思います。

 

 

要は高いスピードを出せる、ハイパワー持続能力が重要になるわけです。

 

200m選手が400mを走ると、とんでもなく速いことがあるのも納得でしょう。

 

 

 

しかし、疲労時の疾走速度(360mくらい)と無酸素性能力との間には有意な相関関係は無く、ここの速度は股関節の屈曲、伸展筋群の持久力が強く影響していることが幾つか報告されています。

 

 

また、股関節の屈曲、伸展筋群の持久力と酸素負債の間に有意な相関関係がないことから、これは無酸素性能力とは別の能力ということになります。

 

このように、400m走の後半にピッチがガクンと落ち、「足が止まる…」とよく表現される終盤局面では、股関節屈曲伸展という局所の持久能力が重要であることが示唆されています。

 

 

 

 

400m走を速く走るためにはやはり多量のエネルギーを素早く供給できる無酸素性能力に長け、それによって高いスピードを出し、その高いスピードをできる限り維持できる能力が重要といえます。

 

 

 

しかし、この無酸素性能力のみで400m走を走れるわけではありません。

 

当然800m 1500mが速い選手も400mを走ると、高い最大スピードを持っていないにも関わらず、かなり速いこともあります。

 

次ページでは、400m走と有酸素性能力について解説していきます。

 

 

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