片側睾丸摘出による生化学的変化

 

片側の睾丸を摘出することによって持久力を向上できる可能性があるという話です。

 

小ネタとして一読下さいませ。

 

 

 

 

☆持久力トレーニングはテストステロン濃度を低下させる

 

テストステロンとは、強いタンパク質同化作用を持つホルモンで、骨格筋肥大や筋力アップに重要な役割を果たすとされています。

 

よく男性ホルモンと呼ばれているものの一つです。

 

 

 

一般に、マラソンランナーやトライアスロン選手などが行う持久トレーニングでは、テストステロンというホルモンの濃度を低下させます。

 

テストステロンは筋力アップのみならず、乳酸トランスポーター(乳酸の運び役)を刺激し、持久パフォーマンスの向上にも関係してくる可能性は考えられます。

 

しかし、マラソンなどの非常にハードな持久力トレーニングでは血中のテストステロン濃度が慢性的に低下し、生殖機能の低下を引き起こすことが報告されています。(Grandys,M.et al,2009)

 

一方、このテストステロン濃度の低下は持久力アップのための運動適応なのではないか?ということも考えられています。

 

 

 

 

☆テストステロン低下は持久力トレーニングの運動適応?

テストステロンの主な生産場所は、睾丸です。

 

脳の視床下部の性腺刺激ホルモン放出ホルモンや、下垂体前葉からの性腺刺激ホルモンによって、睾丸でのテストステロンの分泌は促されます。

 

そして、テストステロンの濃度が下がるとどうなるのかというと・・・

 

テストステロン濃度を何とかして保とうとするのです。

 

テストステロン分泌を促すのは上述した、性腺刺激ホルモンですので、このホルモンの濃度増加が起こります。

 

 

さらに、性腺刺激ホルモンは、ホルモン感受性リパーゼという「脂肪を分解して、血中に放出する働きのある酵素」の発現を促します。

 

 

これによって、遊離脂肪酸の利用能力が高まったり、グリコーゲン温存能力向上、体重低下が起こり、持久パフォーマンスが向上するという仕組みです。

 

 

あくまで仮説ですが、非常に興味深いですね。

 

 

 

 

☆睾丸を摘出するとどうなるか?

 

テストステロンの主な生産場所は、睾丸であると述べました。

 

この睾丸を片方摘出すると、テストステロンを作る場所が半分になってしまいます…。

 

これでは困りますね…。

 

 

よって、残った片方でより多くのテストステロンを分泌させなくては適切な濃度を保つことができません。

 

となれば、その分泌を促す性腺刺激ホルモンを多くする必要がでてきます。

 

 

あとは、先述した通り、

 

 

性腺刺激ホルモン濃度増加

 

ホルモン感受性リパーゼ増加

 

遊離脂肪酸利用能力向上

 

グリコーゲン温存能力向上

 

持久パフォーマンスアップ!!

 

 

となるわけです。

 

 

実際に、ツールドフランスで7連覇を成し遂げたアールストロング選手は、睾丸のガンが原因で、睾丸を摘出してから驚異的なパフォーマンス向上が見られました。(Atwood,C.S.and Bowen,R.L.,2007)

 

 

マラソン選手によく見られるテストステロン濃度の低下は、過度なストレスによる弊害のような扱いがされてきたこともありましたが、そうではなくて、パフォーマンスを向上させるための適応なのかもしれません。

 

(かと言って睾丸摘出だなんて絶対にマネしてはいけませんよ!!!)

 

 

 

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