短距離走で活躍するためには、速筋線維が多い方が有利であることが分かりました。では、この速筋線維はトレーニングで増やすことができるのでしょうか?
実は、この速筋線維と遅筋線維の比率は生まれつきによるところが大きく、この比率自体をトレーニングで変えることは難しいと言われています。短距離走が天性の種目と呼ばれる所以です。
しかし、筋線維の比率は変えられなくとも、トレーニングによって速筋線維1本1本の太さを変えることは可能です。したがって、トレーニングを継続して行い、速筋線維を大きくすることで、高い筋力や瞬発力、スピード向上につなげることは可能だと言えます。
そして、速筋線維は、さらに持久力の高い速筋線維(TypeⅡa)と、持久力の低い速筋線維(TypeⅡx)とに分けられます。TypeⅡxは速筋の中でも大きなパワーを発揮するのが得意であり、TypeⅡ aはパワーと持久力を兼ね備えた中間タイプだとも言えるでしょう。また、TypeⅡxは、持久的なトレーニングをすることで、より持久力の高い性質をもつTypeⅡ aへ変化することが知られています。
つまり、速筋線維を遅筋線維に変えたり、遅筋線維を速筋線維に変えたりすることはできなくとも、速筋線維に持久力を持たせることは、トレーニングによってある程度可能であるということです。
このように、短距離走をやる上で、生まれつきによる能力の違いはもちろんあるものの、トレーニングによって伸ばせる能力も多くあることが分かります。スポーツのパフォーマンスは「生まれつき」ですべて決まるものではありません。自分の伸びしろはどこにあるのかを見極めて、ライバルに差をつけていきましょう。