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トレーニングで最大だけを引き出し続けると、やがてパフォーマンスは低下する

トレーニングで最大だけを引き出し続けると、やがてパフォーマンスは低下する

スポーツのトレーニングについて議論をしていると、必ずと言っていいほど「その競技そのものをやり続けるのが一番の練習だ」「試合のようなことをやり続けるのが大切」「年中自己ベスト更新を狙って練習を続けるべきだ」などの考え方に出会います。

 

確かにスポーツのパフォーマンスを高めるためには、そのスポーツそのものをやること、試合をやることは効果的なはずです。縄跳びが上手くなりたければ縄跳びを練習するはずですし。100m走が速くなりたければ100mを全力疾走するのが手っ取り早い方法です。年中自己ベストを狙ってそういうことをしていれば、記録は伸びていくのかもしれません。

 

このように、上記のような考え方は、一見理にかなっているようにも感じられるわけです。

 

しかし、特にトレーニング歴が長く、熟練してきたアスリートの場合では、上記のような考え方でトレーニングを積んでいても、なかなかパフォーマンスを高めることができません。むしろ、年がら年中その競技のベストパフォーマンスを発揮しようとし続けると、パフォーマンスを落としてしまうことさえ考えられます。

 


ピークパフォーマンス発揮の後には、必ずパフォーマンスが低下する

アスリートが自身の持てる潜在能力を余すことなく発揮して、最高のパフォーマンスを発揮したとします。いわゆる、その選手にとっての自己ベストだとか、日本記録、世界記録などを打ち立てる瞬間です。

 

しかし、その後もその選手が自己ベストをどこまでも更新し続けたり、日本記録、世界記録が年中更新されたり…と言うことは起きません。その選手が本当に自身の潜在能力(ポテンシャル)をフルに発揮していれば、その後は必ずパフォーマンスが低下します。それがなぜかを簡単に説明するならば、「心身が疲弊するから」です。

 

(陸上競技などでシーズン中に自己ベストを立て続けに更新する選手はいますが、その場合、その選手は自身の潜在能力をフルに発揮できていない、まだまだ記録を出せる身体能力、そのポテンシャルを有しているということになります)

 

ピークのパフォーマンスを発揮すると、その後一度パフォーマンスは低下する、維持させようとしてもそれはずっと維持できるわけではない…と、スポーツのパフォーマンスに関しては、このような法則性が存在します。それは、マトヴェーエフ理論と呼ばれるものです。

 

マトヴェーエフ理論のスポーツフォーム

旧ソ連のマトヴェーエフ博士は、数十年に渡る十万人余りのアスリートにおける、研究と実践で蓄積されたデータから、スポーツのパフォーマンスの変化に周期性があることを発見します。それが、「ハイパフォーマンスを発揮できる心身の準備状態と言うのは、年中維持できるものではなく、蓄積ー維持ー消失というサイクルを必ず繰り返していく」と言うものです。

 

ハイパフォーマンスを発揮できるための心身の準備状態のことは「スポーツフォーム」と呼ばれています。

 

 

自身の潜在能力をフルに発揮できる状態と言うのは、「なんだか身体の調子が良いな~」だとか、そういうレベルの話ではありません。100m走で例えるなら、筋量の土台がしっかり付いていて、その筋量で発揮できるスピードを伴った筋力が極限まで発揮できるように調整ができている、栄養的にも充実していて、筋肉のエネルギー気質も充実している、そして極限まで集中力が高められており、プレッシャーに怖気づいてしまうことなく、自分の走りができる…極限まで肉体的、精神的な能力を高められている状態です。

 

人間は機械ではないので、当然そのような極限状態を年中維持するのは不可能です。したがって、年中ハイパフォーマンスを発揮し続けることを意図したトレーニングは現実的ではないことが分かります。

 

最大を引き出すトレーニング≠潜在能力を高めるトレーニング

年中ピークパフォーマンスを発揮し続けようとするトレーニングが効率的ではないことのもう一つの理由に「最大を引き出すトレーニングは、必ずしもアスリートの潜在能力を効率よく高めてくれるとは限らない」ということが挙げられます。

 

これは、100m走のトップ選手が100mのトライアルを年中繰り返し続けているなんてことはないこと、パワーリフティングの選手が毎回マックスの重量でトレーニングしているわけではないことからも推測できます。毎回マックスに近いような重量を挙げたり、集中力を研ぎ澄ませて100mの全力疾走をやり続けるのは、精神的にも肉体的にも大きな負担がかかるはずです。とても続けられるものではありません。

 

 

マックスを挙げ続ける、100mの全力疾走を続けるとしても、トレーニング刺激の量が不足します。筋肉量という土台(潜在能力)を高めるためには、最大下でのトレーニングで、ボリュームを増やすことが重要になります。そのため、毎回試合のような強度が最大のことをやり続けるだけでは、競技力を高めるための諸要素を全て十分に刺激することができなくなってしまうわけです。潜在能力を高めるためには、最大より低い強度でのトレーニングも重視しなければなりません。

 

シーズン中も維持だけでなく、潜在能力の向上を目指す

とはいえ、試合が近い時期(シーズン中)は、最大に近い強度でトレーニングをすることが多くなってきます。試合はいかに最大の筋力やパワー、スピードなどを引き出すことができるかがカギになるので当然です。

 

このような最大に近い強度の練習でも、シーズン前に作ってきた体力の土台(潜在能力)を維持することはある程度の期間可能です。しかし、先述の通り、最大強度でのトレーニングだけだと、トレーニングの絶対量が不足します。

 

したがって、数か月もすると、積み上げてきた土台が小さくなっていく、以前までの動きのキレがなくなる、なんだか不調気味になる…といった現象が起こりやすくなります。

 

加えて、シーズンが1年の約半分を占めるような競技の場合、自身の身体能力のポテンシャルを高めるチャンスが、1年の半分しかなくなってしまいます。これは非常にもったいないことです。半年だけ自身の潜在能力を向上させようとした選手と、年間通して向上を目指した選手では、長期的にみると後者のパフォーマンスが飛躍する可能性が高いでしょう。

 

以上のことから、例えシーズン中であっても、潜在能力を維持するだけでなく、向上を目指すことが重要であること、そのためには最大を引き出すトレーニングだけでなく、最大下でのトレーニングを積んでいくことが必要だと分かります。

 

タイムトライアルや試合だけでは高いパフォーマンスは達成できないわけです。

 

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