足の速さと腿を前に引き出すパワーの関係
足が速い人に「腿が高く上がり、かかとの引き付けがしっかりできている人」が多いのは、腿を後ろから前に引き戻すパワーが関係していると考えられます。
ヒトは走っているとき、接地中に身体を前に進めなければなりません。身体が前に進むということは、足は後ろに取り残されることになります。そして、走るスピードが高いほど、足は身体に対して高いスピードで後ろに取り残されます。
しかし、走るためには素早く次の一歩を踏み出さないといけないので、高いスピードで取り残される足を、素早く前に引き戻す必要が出てきます。当然、高いスピードで足が後ろに流れていくほど、強い力を素早く発揮しないと足を前に引き戻すことはできなくなります。
したがって、足が速い人は「強い力、かつ素早く腿を前に引き戻す能力が高い」のです(豊島と桜井,2018;矢田ほか,2012)。
では、強く素早く腿を前に引き戻そうとしたらどのようなことが起こるでしょうか?当然、腿は高く上がりやすくなりますし、膝から下、かかとは「パタンッ!」と勝手にお尻に引き付けられるようになるはずです。
これが、足が速い人ほど「腿が高い、かかとの引き付けができている理由」だと考えられます。目に見える脚の速い人の動作の特徴は、腿を前に引き出すパワーの高さの「結果」であると言えるのです。
実際に世界のトップスプリンターでは、この腿を引き付けるパワーが高いために、走っているときの足が身体の後ろにあまり残らないような軌道がみられます。足が後ろにいったらすぐに前に引き戻すことができています。
腿を引き出すパワーを高めるためには?
じゃあその腿を引き出すパワーを高めるためにはどのようなことをしたらよいのでしょうか?
腿を前に引き出す動作は、股関節を「屈曲」させる動作です。なので、この股関節を屈曲させる筋力やパワーを高める必要があると言えます。この股関節を屈曲させるための筋肉には「大腰筋」や「大腿直筋」などの筋肉が挙げられ、これらの筋肉が大きいほど、足が速いということも分かっています(久野ほか,2001;Emaほか,2018)。
このような筋肉を鍛えるためには「全力疾走をする」ことは当然必要です。速く走るために必要な筋肉は、速く走ろうとすることで刺激されるからです。かけっこが速くなりたければ、まずはかけっこをたくさんやりましょうということです。
しかし、それだけでは足りないので、別のトレーニングをやることも必要になってきます。トレーニング歴が長くなればなるほど、走るだけでは刺激が不十分になってくるからです。
その際に、股関節屈曲筋群を鍛えるトレーニングとして、以下のようなものが挙げられます。
股関節屈曲筋のトレーニング
マシンヒップフレクション
トータルヒップというマシンがあれば、高負荷を用いて簡単にトレーニングができます。脚の付け根部分から動かす意識をしましょう。
バンドウエイトヒップフレクション
マシンが無い場合、台の上にあおむけになり、膝を挙げる運動を繰り返します。足首に重りを付けて負荷をかけます。
ハードルサイドステップ
ハードルを横向きで素早くまたいでいきます。腰や背中が曲がらないように、空中で膝を素早く入れ替えるイメージで行いましょう。
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