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スプリンターのウエイトトレーニングを効率化するVBT(Velocity Based Training)

VBTとは?

VBT(Velocity Based Training)とは、扱う重りの挙上速度を基に負荷設定(挙上重量、回数、セット数)するウエイトトレーニング方法です。

 

 

 

ヒトが全力でバーベルを挙上した際の速度と重量の関係は、個人のレベルに関わらず、ほぼ直線関係になります。

 

 

このことから、挙上速度を図れば、その人にとってその重量が、目的に応じた重量設定と本当に一致しているかどうかが明確に判断できるというわけです。

 

 

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VBTのメリット

このVBTは、「1RMの―%の重量で」という従来の重量設定方法と比較して、

 

「毎回1RMを測定したり、ある重さを限界まで挙上せずとも、その時の調子に合わせた適切な重量設定ができる」

 

という点で、優れています。

 

 

また、VBTの実施方法の一つに、Velocity loss cut-offというものがあります。これは、基準の挙上速度から10~40%程度低下したら、その時点でrepを中断し、休息を挟んで次のセットに移行するというやり方です。

 

 

このVelocity loss cut-offを用いたトレーニングは、限界まで行うトレーニングと比較して、以下のようなメリットがあります。

 

 

  • トレーニング中の発揮パワーを保ちやすい
  • トレーニングの総量が少ないにも関わらず、筋肥大、特に筋力、パワーにおいて、従来の方法と同等か、それ以上の効果を生む可能性がある
  • トレーニング後の疲労、ダメージ(筋損傷)が残りにくい
  • 筋線維のTypeⅡx(より爆発的なパワー発揮が可能)からTypeⅡa(TypeⅡxより爆発的なパワー発揮に劣るが、持久性に優れている)へのシフトを抑えられる

 

 

 

 

 

 

このように、無駄な疲労の蓄積を避けながら、より少ない労力で、筋肥大、筋力向上、パワー向上により良い効果をもたらす可能性が高いと言えるのが、VBTです。

 

 

実際に、Liao et al.(2021)のメタアナリシスを基にしたシステマティックレビューでも、VBTはPBTと比較して、トレーニング量やストレスが少ないにも関わらず、PBTと同等の筋力、ジャンプ力、スプリント能力、方向転換能力向上が期待できることが示されています。

 

 

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VBTのメリット(陸上短距離種目との兼ね合いから)

スプリントトレーニングの効果を最大化できる?

 

陸上短距離選手であれば、普段の主なトレーニング内容は、ウエイトトレーニングではなく、スプリントトレーニングであることが一般的でしょう。

 

 

限界ギリギリまで挙上するウエイトトレーニングでは、疲労も残りやすく、普段のスプリントトレーニングの成果に悪影響を与えてしまう可能性があります。

 

 

そのため、疲労が残りにくいVBTは、特に「スプリントトレーニングを主として実施したいけれど、培ってきた筋力レベルも維持向上を図りたい」というときに、非常に良い選択肢になり得ます。

 

 

 

技術習得も容易になる?

 

トレーニングによる疲労が蓄積した状態では、技術習得の効率も落ちやすくなります。スプリントテクニックを磨く、ハードル選手であればハードリングテクニックを磨く効率を落とさないためにも、VBTは有効な手段です。

 

実際に、Leite et al.(2019)の研究では、追い込んで筋損傷、筋肉痛を誘発するようなトレーニングが、運動学習の効率を大きく低下させる可能性が指摘されています。

 

 

関連記事

  • YLMSPORTSCIENCE:EXERCISE-INDUCED MUSCLE DAMAGE : DOES IT IMPAIR SUBSEQUENT ;MOTOR SKILLLEARNING?

 

 

特に、培った体力に根差した技術のすり合わせを行うプレーシーズン、試合準備期と呼ばれるような段階では、特に過度な疲労を蓄積させずに、フィジカルレベルを維持向上させ、かつ技術トレ、スプリントトレに専念できるか?がカギになります。

 

 

そういった時期に、もってこいのトレーニング方法でもあるわけです。

 

 

 

オーバートレーニング防止

 

スプリントトレーニングは、強力な伸張性の負荷が繰り返され、筋ダメージ(筋損傷)が残りやすい、回復に時間がかかる側面があります。

 

 

特に、持久力を高めるために、スプリントを間欠的に繰り返す、スプリントインターバルトレーニングであれば、筋のダメージはさらに増えます。400mスプリンターが実施する、限界まで追い込むような設定でのスプリントトレーニングもまた然りです。

 

 

そのため、ウエイトトレーニングを限界まで行い、代謝的な負担を増大させ、ダメージを蓄積させるようなやり方を並行させると、容易にオーバートレーニングへの近づいてしまう危険性が高いです。

 

 

スポーツのトレーニングは、1回のトレーニングで全力を出し尽くすことが最も重要…というわけではありません。期間全体(ブロック、ミクロサイクル、メゾサイクル)で、どれだけ上手く強度と量をコントロールし、トレーニングの負荷を漸進的に高められるか(適応を引き出せるか)が優先されるべきです。

 

 

各種スプリントトレーニング、技術練習、ウエイトトレーニング全体における、トレーニングと回復計画の流れを上手く作りだすためにも、VBTは非常に役立つ選択肢と言えます。

 

 

 

スプリント、ジャンプ能力への転移が起こりやすい

 

陸上短距離種目の場合、ウエイトトレーニングの効果が、最終的にスプリントパフォーマンスに繋がらないと意味がありません。

 

 

その点、限界まで追い込まないVBTは従来のトレーニング方法と比較して、スプリントパフォーマンスの向上にも効果的だったとする報告がなされています。

 

 

 

 

「案外、筋肥大を重視しすぎた計画だったのか、スピードが鈍化してしまった…これじゃシーズンまでに間に合わないかも…」みたいな失敗のリスクを下げる手段としても、VBTは一役買う代物だと言えるかもしれません。

 

VBTの各種デバイス

 

こちらから購入できます。

 

 

 

関連動画

 

限界までこなすウエイトトレーニングは必要ないのか?

ここまで、「限界まで追い込むトレーニングは時代遅れだ!」みたいな話ばかりしてきましたが、限界まで追い込むようなトレーニングは必要ないのでしょうか?

 

 

これに関して、筋トレ研究者として名高いSchoenfeldら(2021)が発表しているガイドラインでは、ウエイトトレーニング上級者において、限界まで追い込むような負荷設定も、筋肥大を促す一つの有益な手段になると述べられています。

 

 

限界まで追い込む刺激を与えた時の代謝的ストレスは、筋肥大の一つの重要な要因であるはずなので、このようなやり方も、特に上級者で筋を増やすための一つの手段になり得るでしょう。

 

 

ただ、先述の通り限界まで追い込むようなやり方は、回復に長い時間を要することが多いので、その実施頻度は、選手の調子やその後のトレーニングスケジュールを加味して、上手く調整しなければなりません。

 

 

実際に先述のガイドライン(Schoenfeld et al., 2021)でも

 

「failure(潰れる)まで反復せせる場合、セットの最後に行うなど、控えめにやるべき」

「高齢のアスリートでは、十分な回復を促すため、控えめにすべき」

 

 

などと、ウエイトトレーニングで追い込むにしても「控えめに」という主張が多くみられます。

 

 

一方で、「限界までやること」も、普段のトレーニングの中で、その時点でのレベル、調子が把握できるという点では、優れたやり方と言えるでしょう。「―kgでギリギリ〇回できた!」という指標は初心者にとっては圧倒的に分かり易いです。

 

 

さらに、正しいフォームが安定していない選手では、速度を意識した途端に、フォームが大きく崩れる、狙った筋に負荷をかけられなくなるといった懸念も出てきます。

 

 

「速度もフォームも意識する」となれば、ウエイトトレーニングの難易度は異常に高くなるからです。

 

 

まずは、低repでの正しいフォーム習得、そして個人的には、「限界ギリギリまで挙上したとしてもフォームが崩れないレベルでのフォームの安定性」確保が先決なのではないかと思います。

 

 

関連記事

 

・Velocity Based Training(VBT)が流行っているけど、その前に正しいフォームの習得を優先したほうがいいんじゃないかしら?|S&Cつれづれ

 

VBTデバイス無しで、ウエイトトレーニングの効率化を図る一工夫

VBTデバイスは決して安いものではありません。そこで、デバイスが無くとも、普段のウエイトトレーニングによる疲労を最小限に、かつ効果を最大限に得つつ、スプリントトレーニングを進めていくための工夫について紹介してみたいと思います。

 

 

RIR(Repetition in reserve)を決めて、とにかく全力挙上

 

RIR(Repetition in reserve)は、「残り何回挙上できるか?」「予備の挙上回数」を表す言葉です。

 

このRIRを挙上速度が落ちないであろう設定にし、その範囲でトレーニングを積めば、VBTと同じような効果を得ることができるかもしれません。

 

 

~トレーニング例~
・8RMの重量で8回×3セット → 5回×5セットで爆発的に(3rep余裕を残す)
・10RMの重量で10回×3セット → 6回×5セットで爆発的に(4rep余裕を残す)
※ボリュームをそろえると、筋肥大効果も保ちやすいと考えられる。

 

 

 

 

クラスターセット

 

セット内に小休憩を挟むことで、セット内の挙上速度や総rep数を稼ぐ方法もあります。クラスターセットというやり方です。

 

トレーニング例
・10RMの重量で10回×3セット → 「4回-4回-3回(10~30秒休憩)」×3セット

 

 

RIRを設定する方法も、クラスターセットも、要は「セット内の挙上速度を保つ」ことが達成されていることが重要です。

 

しかし、客観的に速度を測ってくれるデバイスが無い前提なので、自身の主観的に、「スピードが落ちたなと思ったらやめる」「この設定ならスピードを保てる」という感覚を頼りに、よい組み方を探っていく必要があります。

 

 

 

My Liftでの計測

 

リアルタイムで速度をフィードバックしてくれるものではありませんが、トレーニング動画と、バーベルの可動範囲さえあれば、挙上速度を測ることができるスマホのアプリがあります。

 

 

Velocity loss cut offでのトレーニングで用いることは難しいですが、ある重量での挙上速度や、その種目での力-速度プロフィールを算出するには十分なアプリです。

 

 

・「My Lift: Measure your strength」をApp Storeで (apple.com)

 

 

自身でRIRを設定したウエイトトレーニングプログラムを組んだとして、そのセット内の挙上速度が、果たして許容範囲内に収まっているか?を後から振り返ることもできます。

 

 

怪我の危険性が高く、精神的にも肉体的にも時間的にも労力のかかる1RM測定を行わずとも、1RM推定が可能なので、他のスプリントトレーニングとの兼ね合い良く、トレーニングの進捗状況を評価できる点で、非常におすすめです。

参考文献

 

Dorrell, H. F., Smith, M. F., & Gee, T. I. (2020). Comparison of velocity-based and traditional percentage-based loading methods on maximal strength and power adaptations. The Journal of Strength & Conditioning Research, 34(1), 46-53.

 

Leite, C. M., da Silva Profeta, V. L., Chaves, S. F., Benine, R. P., Bottaro, M., & Ferreira-Júnior, J. B. (2019). Does exercise-induced muscle damage impair subsequent motor skill learning?. Human movement science, 67, 102504.

 

Liao K-F, Wang X-X, Han M-Y, Li L-L, Nassis GP, Li Y-M (2021) Effects of velocity based training vs. traditional 1RM percentage-based training on improving strength, jump, linear sprint and change of direction speed performance: A Systematic review with meta-analysis. PLoS ONE 16(11): e0259790. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0259790

 

Rodríguez-Rosell D, Yáñez-García JM, Mora-Custodio R, Sánchez-Medina L, Ribas-Serna J, González-Badillo JJ. Effect of velocity loss during squat training on neuromuscular performance. Scand J Med Sci Sports. 2021 Aug;31(8):1621-1635. doi: 10.1111/sms.13967. Epub 2021 May 14. PMID: 33829679.

 

Schoenfeld, B., Fisher, J., Grgic, J., Haun, C., Helms, E., Phillips, S., Steele, J., & Vigotsky, A. (2021). Resistance Training Recommendations to Maximize Muscle Hypertrophy in an Athletic Population: Position Stand of the IUSCA. International Journal of Strength and Conditioning, 1(1). https://doi.org/10.47206/ijsc.v1i1.81

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