「じゃあ、序盤からローペースで始めるトレーニング(例えばビルドアップなど)は、効率的とは言えないの?」との疑問が湧いてきそうです。
確かに序盤は非常に楽なペースでやれる状態なので、その間はそれぞれのエネルギー供給機構に大きな負荷はかかっていないと考えるのが妥当でしょう。「目的のエネルギー系に最大限の負荷を効率的にかける」点で行くと効率的ではないかもしれません。
こういったトレーニングは、陸上短距離、中距離走でも利用されることがあります。ビルドアップ式の40秒間走や、徐々に追い込まれていく形式のセット走などなどがそれに当たります。序盤の非常に楽なペースでの運動がセッションの大部分を占め、最後の1~2本だけ追い込まれるようなトレーニングは、陸上競技の現場で多く見られます。
しかし、有酸素性、無酸素性のエネルギー供給系に最大限の負荷をかけて適応を促すことが目的であるなら、このようなトレーニング形式は、時間効率が非常に悪いのではないか?と筆者は考えています。
その目的でやるのであれば、序盤にクレアチンリン酸を大きく減らすような刺激を与えて、その後、保てるギリギリのペースで、高い酸素需要を保ったまま量をこなすスタイルの方がセッション全体の無駄が少なく、効率的にトレーニング刺激を得ることができるのではないかと思います。(1000m+300mよりも300m+1000m、序盤ローペース過ぎる40秒走*10本よりも(200m+300m)*数set r:2min…といった具合)
ただ、序盤ローペースから入るようなトレーニングも、アップの時間を省略する、ゲーム要素を持たせた形式(脱落式の40秒走など)で楽しくやれる等々のメリットもあるはずです。なので、ローペースから始めるスタイルの「ポイント練」なるものも、全て否定されるべきではありません(LSD、イージーラン等々、低めの強度での多量のトレーニングは目的が異なるので、ここでは議論していません)。
個々の状況に応じて、高強度での練習日の内容を考えてみてはどうでしょうか?
―余談―
そんなこんなのことを加味して、筆者自身、タバタプロトコル実施時には、8本のうち序盤2本をほぼフルスロットル、残り6本をやや強度を落としてイーブンで耐えるスタイルで実施しています。全てイーブンでやるよりも、早い段階で呼吸が乱れて、そこそこしんどい時間がトータルで長くなるので、こちらの方が効率的かな…という印象です。ただ、調子が悪いと終盤ペースがガタ落ちするので、そのあたりの調整が難しい…。