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【スタートが苦手?】爆発的加速スプリントに必要な「技術と体力」

爆発的スプリント加速能力

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陸上競技の短距離走におけるスタートからの加速局面、サッカーや野球での急加速を伴う局面では、急激に疾走速度を立ち上げる「スプリント加速能力」が求められます。

 

これらの競技スポーツでは、素早く加速できた方が有利な場面が多いことは明白です。

 

そこでここでは、自分の身体を爆発的に加速させる、「スプリント加速能力」を高めるためにはどのような「技術」「体力」が必要になるのか?について考えていきます。

 

~アサファ・パウエルのスタートダッシュ~


素早く加速するには、何が必要か?

後方への大きな力

ヒトは、地面をけって、その反作用を受けることで前に加速します。大きな力で地面を押せば、大きな反作用が得られるので、より身体は前に素早く加速できるということになります。

 

大きな力と言いましたが、この力の向きが上に向いてしまうと良くありません。加速では、自分の身体を前に進めなければならないので、下にキックするのではなく、地面を後ろに押せないといけません。

 

 

ポイント①
地面を後ろに大きな力で押すと、素早く加速できる

 

 

短い滞空時間

ヒトは二足で走ります。いくら大きな力で押せたとしても、自分の身体は素早く前に進んでいき、身体が地面から離れてしまいます。地面を押している間しか、身体は加速ができないため、この時に生まれる滞空時間が長くなってしまうと、素早い加速ができなくなってしまうんです。

 

なので、この時にできる滞空時間はできる限り短くして、加速できるチャンス(足で地面を後ろに押せている)を稼ぐ必要が出てきます。

 

 

ポイント②
滞空時間を短くする

 

 

接地時間(距離)を長くする

先述の通り、脚で地面を押せる時間には限りがあります。しかし限りがあるとはいえ、当然1歩でできる限り地面を大きな力で、「長く」押せた方が多く加速できます。

 

とは言え、大きな力で地面を押せばそれだけ速く身体は前に進むので、結果的に接地時間は短くなってしまいます。どちらかというと、地面を「長い距離押す」といった方が適切かもしれません。

 

 

ポイント③
地面を押している距離を長くする

 

 

以上をまとめると、素早く加速するためには

 

①大きな力で後ろに
②滞空時間を短くしながら
③長い距離押せる

 

この3点が必要であるということが分かります。

 

では、この3点を達成するためには何が必要になるのでしょう?

爆発的加速スプリントの技術

前傾姿勢

加速スプリントで良く言われる技術といえば、「身体の前傾」です。身体を前に倒せば、地面を後ろに蹴りやすくなるため、素早い加速のためには必須の技術と言えるでしょう。

 

しかし、当然体を前に倒しすぎると、前につんのめってバランスを崩してしまいます。

 

倒せる角度には限界があるんです。

 

そもそも人がなぜ身体を前に傾けられるのかといえば、それは「地面を後ろに大きな力で押せている」からです。

 

単純に身体を前に傾けると、身体は前に倒れ続けます。しかし、地面を後ろに蹴るということは、身体を後ろに起こし上げる力を生んでいます。

 

 

身体を前に倒せば倒すほど、前に倒れる力は大きくなるので、その分大きな力で身体を起こす力、すなわち後ろへのキック力を発揮できないと、当然その前傾姿勢は保てないのです。

 

つまり、前傾姿勢は加速スプリントに重要な技術であるものの、より深く前傾できるかどうかは、そもそもの地面後方向へのキック力次第だというわけです。上手いから前傾できるというより、強いから前傾できるといった方が妥当なのかもしれません。

 

関連研究
・加速パフォーマンスが高くほど,地面への力を水平に傾けられているほど,一歩目の前傾姿勢が深い(Kugler & Janshen,2010)

 

 

動作の切り返し

滞空時間を短くできるためには、地面を蹴ったあと蹴りっぱなしではなく、素早く動作を切り返して、手足を入れ替える必要があります。

 

なので、地面を押すだけでなく、押したらすぐに引き付けて、次の接地に向かえる技術も必要になります。

 

~意識の例~
・押したらすぐに引き付ける
・むしろ地面を押す意識を持たない
・身体を前に倒して引き続けるだけ
・蹴ったらすぐに、身体を一直線にそろえる意識を持つ(下図参照)

 

 

関連研究
・ダイヤモンドリーグ出場レベルのトップスプリンターは、下位スプリンターより一歩目までの滞空時間が短く,接地時間は長い(Ciacci et al.,2017)

 

 

膝の伸展を遅らせるキック

地面を余すことなく押すためには、低い姿勢で地面を捉えることが必要になります。

 

高い姿勢で地面を捉えてしまうと、下図下段のように、地面を押せる距離が短くなってしまうからです。低い姿勢で捉えられると、地面を長く後ろに押すことができます。

 

 

また、この時、膝を積極的に伸ばすように地面を蹴るのではなく、極力膝を固定して、股関節で地面を押す、膝を伸ばすタイミングを遅らせることができると、より長く地面を押すことができるようになります

 

膝を早期に伸ばしきってしまうと、身体がすぐに上に浮いてしまい、前への加速力に繋がりにくいことに加えて、滞空時間の増加につながってしまいます。

 

関連研究
・ダイヤモンドリーグ出場レベルのトップスプリンターは、下位スプリンターより一歩目までの滞空時間が短く,接地時間は長い(Ciacci et al.,2017)
・加速局面で膝の伸展を遅らせる、接地点を中心に重心を前に回転させることは有効な戦略(Jacobs et al.,1992)
・ブロックからの飛び出しで力を水平に傾けられている選手ほど、低い前傾角度で飛び出し,一歩目接地時の重心位置も低い(篠原と前田,2014)

爆発的加速スプリントの体力

上記の技術ですが、たとえ頭で分かったとしても、そう簡単にできるようになるものではありません高度な技術には、高度な体力が必要になる場合が多いからです。

 


では、ここまで紹介してきた技術習得のためには、どんな体力要素が必要になるんでしょう?

 

 

爆発的な下肢3関節の伸展筋力

当然、地面をパワフルにキックするためには、股関節、膝、足首を爆発的に伸ばせる筋力が必要です。地道に鍛えて、実際の加速スプリントで使えるようになるまでトレーニングを重ねましょう。

 

深い前傾にも、地面を低い位置で捉えて長く押すためにも、この筋力が重要なカギを握ります。

 

筋力があるから低い位置で接地しても潰れない、股関節で爆発的に押せるから膝の伸展を遅らせることができるというわけです。

 

 

鍛えるべき筋肉とトレーニング方法はコチラ

 

 

爆発的に動作を切り返す筋力

押すだけでなく、手足を一瞬で入れ替える筋力も必要です。よく言われる腸腰筋やハムストリング、上半身の筋力を高めて、一瞬で力を発揮させるようなトレーニングを積む必要があります。

 

この動作が一瞬で入れ替えられないということは、滞空時間を長くせざるを得ないということでもあります。なので、この筋力が無い人は、なおさら深く前傾できない、上に浮いてしまうような加速スプリント動作になってしまうというわけです。

 

動作を切り返す筋力トレーニングについてはコチラ

 

以上の体力を地道に高め、技術習得に励むことが、爆発的加速パフォーマンスを高めるために必要です。

 

頑張ってください!!!

 

 

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~参考文献~
・Ciacci S, Merni F, Bartolomei S, Di Michele R. Sprint start kinematics during competition in elite and world-class male and female sprinters. J Sports Sci. 2017;35:1270–8.
・篠原康男, & 前田正登. (2014). クラウチングスタートのブロッククリアランスにおける力発揮と動作の関係. 体育学研究, 59(2), 887-904.
・Jacobs R, van Ingen Schenau GJ. Intermuscular coordination in a sprint push-off. J Biomech 1992;25:953-965.
・Kugler, F., & Janshen, L. (2010). Body position determines propulsive forces in accelerated running. Journal of Biomechanics, 43(2), 343–348. https://doi.org/10.1016/j.jbiomech.2009.07.041

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