筋力トレすると身体が硬くなるのか?(ウエイトトレーニングと柔軟性)

「ウエイトすると身体が硬くなって動きが鈍くなる」

 

 

このようなことをスポーツの現場でしばしば耳にします。

 

 

ウエイトトレーニングによって付けた筋肉は硬くて競技のパフォーマンスに繋がらないどころか、怪我に繋がってしまうという話です。

 

 

では、実際にウエイトトレーニングは身体を硬くしてしまうという根拠はあるのでしょうか?

 

 

 

 

筋力トレーニングで柔軟性は向上する?

 

Saraivaほか(2014)では、ハイレベルの柔道選手を対象に全身の筋力トレーニングを12週間、週3回実施し、柔軟性に与える影響を調べています。

 

 

その結果、筋力トレーニングを実施した群はトレーニングを実施していない群と比較して、顕著に柔軟性が向上していました。

 

 

また、この研究では上半身と下半身の筋力トレーニングの順番による影響も検討されており、トレーニングの順番は柔軟性の向上度合いに影響しないことが示されています。

 

 

 

 

※Saraivaほか(2014)より,筆者作成

 

 

 

 

また、Ribeiroほか(2017)では、長期的なウエイトトレーニングによる柔軟性の改善には性差もないことが報告されています。

 

 

このような研究からわかるように、筋力トレーニングを行うことで、柔軟性を大きく改善することができます

 

 

 

さらに、筋力トレーニングのボリュームが大きく、筋力の向上が大きいほど柔軟性の向上が高かったという報告(Juniorほか,2011)もあり、トレーニング量をしっかり確保することも柔軟性向上において重要なようです。

 

 

 

※Juniorほか(2011)より,筆者翻訳

 

 

 

しかし、Leiteほか(2017)では、トレーニングのセット数によって柔軟性の獲得に違いはみられないことが報告されており、ここに関しては更なる検討が必要なようです。

 

 

いずれにしても、しっかりと筋力トレーニングを行うことで、身体は硬くならないどころか柔軟性は向上するということは理解できると思います。

 

 

 

高重量のウエイトトレーニングは柔軟性を低下させる?

 

ここまで「ウエイトトレーニングは柔軟性を向上させる!!」と散々述べておきながらですが、逆に柔軟性が低下したとする研究があるのも事実です。

 

 

Shariatほか(2017)は1RM(1回ギリギリ挙げられる重さ)の90−95%の重さで3回3セット群と、1RMの60−65%で9回3セット群に被験者を分けて、9週間、週3回のトレーニングを実施しました。

 

 

その結果、高重量群ではスクワットの1RMが向上したのに対し、長座体前屈の数値が低下していました。

 

 

つまり、高重量でトレーニングしていた群は柔軟性が低下してしまった…と言うことです。

 

 

しかし、筋力トレーニングで柔軟性が向上することは多くの研究で示されており、柔軟性に悪影響を与えたとする報告はこの研究を含め少数です。

 

 

また、この研究では、なぜ高重量群の柔軟性が低下してしまったのかについての考察が不明瞭なままです。

 

 

さらに、この研究の被験者は2年以上のトレーニング経験者であり、1RMの90−95%で3回3セットというトレーニングのボリュームが、普段行ってきたトレーニングボリュームよりも小さくなってしまい、それが柔軟性の低下に影響したということも考えられます。

 

しっかりとトレーニング量を確保し、大きな可動域を使ってトレーニングを実施していれば、柔軟性を損なう…ということは無いと推察されます。

 

 

 

 

普通にストレッチした方が柔軟性は向上する?筋トレとストレッチの組み合わせ

 

筋力トレーニングで柔軟性が向上するにしても、普通にストレッチをするのと比べてどの程度柔軟性を向上させられるのでしょうか?

 

 

Mortonほか(2011)では、筋力トレーニング群と静的ストレッチ群で5週間のトレーニング後、両群で柔軟性の改善度合いに差はなかったと報告しています。

 

 

 

※Mortonほか(2011)の柔軟性評価テストの内容

 

 

このことから、静的ストレッチのみを実施するよりも、筋力トレーニングを実施した方が、筋力も柔軟性も獲得でき、一石二鳥と言うことになりますね。

 

 

もちろん、筋トレのみでアプローチできない部位に対しては、他の方法が必要になりますが。

 

 

また、「トレーニング前のストレッチはトレーニング効果を下げる?」でも紹介している通り、筋力トレーニングの前にストレッチを行うことによって、一時的に筋力が低下し、実施したトレーニングのボリュームに悪影響を与えた結果、筋量向上に悪影響を与えてしまう(Juniorほか,2017)…ということもあります。

 

 

 

 

 

※Juniorほか(2017)を基に、筆者が翻訳

 

 

 

単純に筋力を高めたいのであれば、筋トレ前にストレッチは行わないようにすべきでしょう。

 

 

怪我を予防するために筋トレとストレッチを組み合わせることは有効な戦略と言えますが、ストレッチを導入するタイミングには注意が必要ですね。

 

 

 

 

まとめ

 

 
・筋力トレーニングは柔軟性を向上させ、柔軟性に悪影響を与えることは現時点ではないと考えられる。

 

・ストレッチをするだけでも柔軟性は獲得できるが、筋力トレーニングは同時に筋力も高めることができる。

 

・筋力トレーニングとストレッチを実施する際には、トレーニングの質を下げないようにストレッチを取り入れるタイミングを考える必要がある。
 

 

 

 

参考文献

・Saraiva, A. R., Reis, V. M., Costa, P. B., Bentes, C. M., e Silva, G. V. C., & Novaes, J. S. (2014). Chronic effects of different resistance training exercise orders on flexibility in elite judo athletes. Journal of human kinetics, 40(1), 129-137.

 

・Ribeiro, Alex S., Campos-Filho, Marcal G.A., Avelar, Ademar, Santos, Leandro dos, Junior, Abdallah Achour, Aguiar, Andreo F., Fleck, Steven J., Junior, Helio Serassuelo, Cyrino, Edilson S.(2017). Effect of resistance training on flexibility in young adult men and women. Isokinetics and Exercise Science, 25(2), 149-155.

 

・Junior, R. S., Leite, T., Reis, V. M. (2011). Influence of the Number of Sets at a Strength Training in the Flexibility Gains. J Hum Kinet. 29: 47?52.

 

・Leite, T. B., Costa, P. B., Leite, R. D., Novaes, J. S., Fleck, S. J., Simao, R. (2017). International Journal of Exercise Science. 10 (3): 354-364.

 

・Shariat, A., Lam, E. T., Shaw, B. S., Shaw, I., Kargarfard, M., & Sangelaji, B. (2017). Impact of back squat training intensity on strength and flexibility of hamstring muscle group. Journal of back and musculoskeletal rehabilitation, 30(3), 641-647.

 

・Morton, S. K., Whitehead, J. R., Brinkert, R. H., Caine, D. J. (2011). Resistance training vs. static stretching: effects on flexibility and strength. J Strength Cond Res. 25(12):3391-8.

 

・Junior, R. M., Berton, R., de Souza, T. M. F., Chacon-Mikahil, M. P. T., & Cavaglieri, C. R. (2017). Effect of the flexibility training performed immediately before resistance training on muscle hypertrophy, maximum strength and flexibility. European journal of applied physiology, 117(4), 767-774.

 

 

 

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