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サルでもわかる、伸張性収縮(エキセントリック収縮)の特徴

サルでもわかる、伸張性収縮(エキセントリック収縮)の特徴

大学でスポーツ生理学などを勉強していると、「短縮性収縮とか、伸張性収縮とか、等尺性収縮とか、訳が分からない!」という方が結構います。

 

中でも「伸張性収縮」には、いろいろな特徴があり、テストにも良く出題される内容になっていることでしょう。また、スポーツのパフォーマンスを高めるためにも「伸張性収縮」について、しっかりと理解していることは大切なことです。

 

ここでは、伸張性収縮とは何なのか?どういった特徴を持っているのか?について、紹介していきます。

 

 

短縮性、等尺性、伸張性収縮の違い

筋肉の収縮とは、その名の通り「筋肉が縮もうとする」ことを意味します。筋肉は自分で勝手に縮むことはできても、自ら伸びることはできません。

 

しかし、「筋肉自体が縮もうとしている状態」であっても、扱う負荷の重さ次第で、筋肉を縮ませることができたり、筋肉が縮みも引き伸ばされもしない状態になったり、耐えられず筋肉が引き伸ばされたりします。これが、筋肉の収縮様式(短縮性・等尺性・伸張性)の違いです。

 

具体的に図で示すと下のようになります。

 

「軽いダンベルなら肘を曲げられる(短縮性収縮)」
「重いダンベルなら頑張っても動かない→筋肉の長さが変わらない(等尺性収縮)」
「もっと重いダンベルなら肘が耐えられず、伸ばされてしまう(伸張性収縮)」

 

これが、筋肉の収縮様式の違いです。ちなみに、軽いダンベルでも、わざと力を緩めてダンベルを床に下ろすときも、伸張性収縮になります。

 

 

 

伸張性収縮にはいろいろな特徴がある

筋線維が発揮できる力が大きくなる

重たいものを持って、耐えられずに筋肉が引き伸ばされる伸張性収縮時には、実は筋肉は非常に大きな力を発揮できています。そして、この力は、筋肉が引き伸ばされる速度が高くなるほど大きくなります。

 

(なぜ、縮んでいる時よりも引き伸ばされているときの方が大きな力を発揮できるのかについては、アクチンやミオシンという分子の特徴が関係しているのですが、ここでは割愛させて頂きます。)

 

 

図のように、伸張性収縮では発揮できる力が大きくなっていきますが、ある速度、ある力を越えたところで「ストンッ!」と力を発揮することができなくなります。

 

これは、これ以上力を発揮すると筋肉や、靭帯が壊れてしまう恐れがあり、身体がリミッターをかけているからです。リミッターをかけて、自分の身体を守っているとも言えます。

 

しかし、これにはかなり個人差があり、リミッターが早くかかる人もいれば、かかりが遅い人もいるようです。伸張性収縮において、リミッターが早くかかれば大きな力を発揮することはできませんが、リミッターが遅ければさらに大きな力を発揮することができます。なので、スポーツのパフォーマンスを高めるにはリミッターが遅い方が有利になるかもしれません。

 

しかし、大きな力を発揮できる・・・ということは、その分筋肉にかかる負担は大きく、怪我のリスクも大きくなるので注意も必要です。

 

 

軽い負荷では、速筋線維が先に使われる

軽い負荷を持ち上げる時、まずは遅筋線維というあまり大きな力を発揮できないけど持久力のある筋線維が優先的に使われます。

 

軽い負荷のものをゆっくり持ち上げる時など、筋肉が100%力を発揮する必要が無い時、実は筋線維一本一本が力をセーブしているわけでは無く、力を発揮する筋線維を減らすことで筋肉全体の力をセーブしています。つまり、完全にサボっている筋線維と、100%頑張っている筋線維とがあるということです。

 

 

軽いダンベルを動かすとき、短縮性収縮なら遅筋線維が優先的に利用されるのですが、伸張性収縮では、先に速筋線維が使われています。これが伸張性収縮の2つ目の特徴です。

 

なぜ、伸張性収縮では速筋線維が優先的に使われるのかについては、まだ良く分かっていません。おそらく、もしも筋が勢い良く引き伸ばされた時に大きな力を発揮して対応できるようにしているのでしょう。

 

また、見方を変えれば、手軽に速筋線維を刺激できるということになります。そのため、いきなり重い負荷を扱うことに抵抗があったり、速筋線維が弱りやすい高齢者のトレーニングで用いることで、効果的に運動能力を改善させられる可能性があります。

 

 

筋肉痛が起きやすい

この伸張性収縮では、筋肉痛が起きやすいことが知られています。筋肉が引き伸ばされながら力を発揮することで、筋線維に微細な損傷が起きやすいことが原因の一つとして考えられています。

 

また、かなり高い強度で伸張性の負荷を多量かけた場合、酷い筋肉痛と筋力の低下が数日間も続いてしまうことがあります。

 

 

伸張性収縮は上手く使えば、筋のスピードやパワーを改善し、スポーツのパフォーマンス向上に大きく役立つと言われる反面、やり方を誤ることによるリスクがあり、その用い方には注意が必要だと言えるでしょう。

 

 

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まとめ

 

・「伸張性収縮」とは、筋肉が縮もうとしながら、引き伸ばされる収縮様式のこと。

 

・「伸張性収縮」では、短縮性・等尺性収縮よりも大きな力を発揮でき、速度が高まるほどその力は大きくなる。

 

・「伸張性収縮」で発揮できる力は、その限界が早く来る人、遅く来る人がいる。

 

・「伸張性収縮」では、負荷が軽い時、速筋線維が先に使われる。

 

・「伸張性収縮」は筋肉痛を起こしやすく、高強度で多量行うことによる疲労が蓄積されやすい。

 

 

参照文献

・石井直方(2015).石井直方の筋肉の科学.ベースボール・マガジン社.
・山地啓司, 大築立志, 田中宏暁 (編), スポーツ・運動生理学概説. 昭和出版: 東京(2011).
・Paschalis, V., Koutedakis, Y., Jamurtas, A. Z., Mougios, V., & Baltzopoulos, V. (2005). Equal volumes of high and low intensity of eccentric exercise in relation to muscle damage and performance. The Journal of Strength& Conditioning Research, 19(1), 184-188.

 

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