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筋線維タイプの分類方法

筋線維タイプの分類方法


筋線維には大きく分けて2つのタイプがあります。

 

それが速筋線維(FT:fast twitch)遅筋線維(ST:slow twitch)です。筋肉に電気刺激を与えて、素早く縮むのがFT、ゆっくり縮むのがSTとして分類されます。

 

 

しかし、運動生理学の教科書などでは、FTやSTなどの表記方法のほかに、タイプⅠ、タイプⅡa、タイプⅡb、タイプⅡx、SO、FG、FOG…などと様々な呼ばれ方をしており、何が何だかわからない!という方も少なからずいることでしょう。

 

 

なぜそのような表記方法の違いがあるのでしょうか?

 

 

それは筋線維のタイプ分けをするために、研究者たちがあらゆる分類方法を使ったからで、その分類方法によって、ややこしいことに筋線維の名前もそれぞれつけられてしまったからです。分類方法の数だけ分け方がある。覚えるほうは大変ですね。

 

 

ここからは、筋線維のタイプ分けに用いられた手法とともに、筋線維のタイプについての理解を深めていきます。

 

 

 

代謝特性による分類

 

これは最初に行われていた方法で、筋肉の代謝特性によって筋線維を分類しようとするものです。

 

 

研究者たちは、筋線維の中に、解糖系(糖を利用してエネルギーを生み出す仕組み)の酵素が多いか、有酸素系(酸素を使ってエネルギーを生み出す仕組み)の活性が高いかを調べました。

 

 

すると、解糖系の代謝が高いタイプと、有酸素性の代謝が高いタイプに見事に分かれることが分かったのです。前者が糖を用いるFG(fast glycolytic)、後者を酸化系のSO(slow oxidative)と名付けられました。

 

 

しかし、研究を進めていくと、FGとSOのどちらでもない中間的な存在があることがわかります。これは、FGとSOの中間ということで、FOG(fast oxidative-glycolytic)と呼ばれることになりました。

 

 

このように、代謝の仕方によって、筋線維は3つのタイプに分けられることになりました。

 

 

 

染色法による分類方法

 

代謝特性を調べる方法は大変面倒な手順が必要で、もっと簡単な方法はないのかな?ということで行われたのが「ATPase染色法」というものです。

 

 

筋肉の収縮は、筋原線維のミオシンとアクチンが滑り込むことで起きます(図)。

 

 

 

 

 

この時、ミオシンが、エネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)という物質を分解することで筋収縮のエネルギーを得ています。

 

 

この時の酵素活性(ATPase活性)を染色法によって調べようとしたのです。

 

 

すると、弱酸性の時によく染まって、高い活性を示すタイプや、弱酸性の時に活性が高くなるタイプ、弱アルカリ性の時に活性が高くなるタイプなどが出てきました。

 

 

これを、先ほど紹介した代謝特性のタイプ分けと照らし合わせ、SOにあたるものをタイプⅠ、FOGに相当するものをタイプⅡa、FGにあたるものをタイプⅡbとしました。

 

 

これは簡易的な分類方法だったのですが、研究を進めていくとタイプⅡacや、タイプⅡc、タイプⅡd…というようにひっきりなしに分類が進んでしまって訳が分からなくなってしまいました。

 

 

そこで、もっといい分類方法はないものか?と考案されたのが、タンパク質の種類による分類方法です。

 

 

 
 

ミオシンの構造による分類方法

 

筋収縮の要であるミオシンは、筋線維のタイプによってそれぞれ異なることが分かっていました。どうやら、ミオシンの分子にはいろいろなタイプがあるようです。そのタイプによって筋線維のタイプがわからないか?と調べたのがこの分類方法です。

 

 

その分類の結果、遅筋線維が持っているミオシン分子はⅠ型(MHCⅠ)。

 

速筋線維はⅡ型で、ミオシンⅡa(MHCⅡa)ミオシンⅡb(MHCⅡb)ミオシンⅡx(MHCⅡx)の3種類に分けられることが判明しました。

 

 

そして、人間の筋線維にはMHCⅡbはほとんど含まれておらず、その代わりにMHCⅡxがたくさん含まれていることが分かったのです。

 

 

つまり、人間における筋線維の分類は大きく3つ。

 

 

タイプⅠとタイプⅡaとタイプⅡxです。

 

 

タイプⅠはスピードが遅くて持久力が高い遅筋線維

 

タイプⅡaはスピードが高くて持久力もそこそこある速筋線維

 

タイプⅡxはスピードが高くて持久力に乏しい速筋線維。ということになります。

 

 

 

 

 

そして、さらに研究を進めていくと、タイプⅡxとタイプⅡaの中間のような存在があることがわかります。

 

トレーニングによって、筋線維のタイプが変化することはよく知られていますが、この変化途中の筋線維がこれにあたるものだと考えられています。先ほどの染色法による分類で、たくさん分類されすぎて何が何だか分からなくなってしまった…というのは、この変化途中の筋線維まで、細かく分類してしまったためだと考えられているようです。

 

 

参照文献

・・寺田新. (2017). スポーツ栄養学: 科学の基礎から 「なぜ」 にこたえる. 東京大学出版会.
・石井直方(2015).石井直方の筋肉の科学.ベースボール・マガジン社.
・山地啓司, 大築立志, 田中宏暁 (編), スポーツ・運動生理学概説. 昭和出版: 東京(2011).
・勝田茂, 和田正信, & 松永智. (2015). 入門運動生理学. 杏林書院.
・芳賀脩光, & 大野秀樹. (2003). トレーニング生理学.

 

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