アスリートの飲酒量は比較的多く、競技種目にもよりますが、いくつかの論文ではその量が驚異的であるとして取り上げられています。
Lawson et al(1992)の研究ではラグビー選手の試合後の飲酒量がビール22本分に匹敵したといいます。
特に大学生、社会人のアスリートともなれば、お酒を飲む機会というのは確実に増えてくることでしょう。
ですが、日々ベストパフォーマンスを目指すアスリートであれば、上司、後輩、同僚との付き合い方のみならず、お酒との付き合い方も考えなければなりません。
過度な飲酒はパフォーマンスに悪影響をもたらすからです。
ここでは、アルコールが身体のパフォーマンスに及ぼす様々な影響について理解していきます。
☆アルコールとリカバリー、筋の成長
アルコール摂取が人体に及ぼす影響として、
・利尿作用
・グリコーゲン合成低下
・筋タンパク質合成低下
・睡眠の質低下→「良質な睡眠を確保するためには?」
・翌日にかけての認知能力低下
などが挙げられます。
いずれもスポーツのパフォーマンスに大きな影響を与え得る要素であることは理解できることでしょう。
実際に、Barnes et al,(2010)の研究では、ビール5-6本に相当するアルコール摂取で、オレンジジュースを摂取した群よりも、翌日の筋力の低下が1.4-2.8倍も大きかったという報告がなされています。
また、痛飲は筋を破壊することがあり「急性アルコール筋症」と呼ばれています。
さらに、筋力低下だけではなく、筋繊維の部分的な壊死が起こるなどという報告もなされており、過度な飲酒直後からその翌日にかけての急性の害というのはよく知られています。
さらに、アルコールの分解で多量の水分を排出するため、翌日にかけて身体の水分量が元の量より低下してしまうこと。
同程度のカロリーを摂取した場合、アルコール摂取群ではグリコーゲンの再充填が遅れることなど、リカバリーへの悪影響は多く考えられます。
慢性的な害としては、筋萎縮が挙げられます。これはアルコール中毒の人に見られるもので、主に慢性的な飲酒によって、テストステロンというホルモンが減少することが原因だと考えられています。
このことについて、深酒をするとテストステロンが減少するといった報告(Välimäki M.et al,1990)や、ビール3-4杯でも3週間くらい飲み続けると緩やかにテストステロンが減少するかもしれない(Sierksma A.et al,2004)というものなど、主に欧米において様々な研究がなされています。
過度な飲酒はやはりトレーニング効果を阻害し、翌日の回復にも影響を与える可能性があるようです。
(このホルモンの減少に伴って、男性であれば女性的な身体の変化…特に女性様乳房の発達が見られるといった報告もなされています。)
しかし、これらは過度な飲酒をした場合のものであり、適切な量をとることで、トレーニング効果を上げる…とまではいかないものの、テストステロンの値を上げるかもしれないといった報告もあります。
→体重68kgくらいの人がビール2杯程度のアルコール摂取で、テストステロン値が17%増加(Sarkola T.et al,2003)
→女性であってもテストステロン値が増えた(Sarkola T.et al,2000)
じゃあ少し飲んだ方がいいんじゃないか!
ともなりそうですが、残念ながらこの程度のテストステロン値の増加で大きな筋力アップは望めないようです…。しかも、テストステロン濃度は減少しては困るものの、濃度の増加は筋肥大に必須ではないという指摘もなされています。
いずれにせよ、飲み過ぎは禁物ということですね…。
二日酔いでトレーニングなんてもってのほかです…。