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つなぎは歩く?ジョグ?インターバルトレーニングの効果と設定

インターバルトレーニングとアクティブリカバリー

高いスピードで走って、短い休息を挟み、再び走り出す…。このような運動を繰り返し、スピードや持久力を高めるトレーニングは「インターバルトレーニング」と言われています。

 

このインターバルトレーニング中の短い休息時に、ジョギングなどの軽い運動を行うことで回復を促す方法がとられることがあります。これがアクティブリカバリーと呼ばれるものです。

 

ここでは、インターバルトレーニング中のアクティブリカバリーが、トレーニングの効果・効率にどのような影響をもたらすかについて紹介していきます(以下、Hausswirth& Mujika(2013):Recovery for performance in sportを基に解説)。

スプリントインターバルトレーニング

全力に近いスピードを出す「スプリント運動」を繰り返すトレーニングは、「スプリントインターバルトレーニング(SIT:Sprint Interval Training)」と呼ばれています。

 

このようなトレーニングの目的は、スピードを向上させることや、高いスピードでの持久力を高めることにあると言えます。

 

また、休息を短くしたり、スプリント時間を長くすることによって、有酸素系の能力を向上させ、より長い時間の持久力向上にも効果的だと言われているトレーニングです。

 

実際に、以下の研究ではSITが短時間のトレーニングであるにも関わらず、有酸素系の能力改善、長距離運動パフォーマンスの改善がみられています。

 

 

 

このような、SITの場合、スプリント間の「つなぎ(休息)」は、どのようにすべきなのでしょうか?

 

 

~6秒未満~高いスピードを出すショートスプリントインターバル

このSITの中でも特に運動時間の短い、「6秒未満という短い時間で高いスピードを出すトレーニング」について紹介します。

 

トレーニング例

・(6秒間全力スプリント―30秒リカバリー)×10セット
・(5秒全力スプリントー10秒リカバリー)×10セット
・(40mスプリント―60秒リカバリー)×8セット

 

このような、スピードを高めること、高いスピードでの持久力向上が目的のインターバルトレーニングの「つなぎ」は、「極力、止まって休む」ことが勧められています(Hausswirth & Mujika,2013)。

 

筋肉の中には「クレアチンリン酸」というエネルギー源があり、高い出力を発揮するためには、このクレアチンリン酸を使わなければいけません。クレアチンリン酸をたくさん使えれば使えるほど、高い出力を発揮できます。

 

しかし、このクレアチンリン酸は筋肉の中に少ししか蓄えがないため、全力で運動を行うと十数秒でなくなってしまいます。そのため、再びクレアチンリン酸を使えるようにするには、休息をとって、クレアチンリン酸を再合成する必要があるのです。

 

そして、6秒未満で全力スプリントを行うようなインターバルトレーニングの際にアクティブリカバリーを用いてしまうと、このクレアチンリン酸の再合成を妨げてしまうことが分かっています。すなわち、高い出力を維持することができなくなってしまいます。

 

トレーニングの目的が、出力をしっかり高めてクレアチンリン酸をたくさん使えるようにする、スピードを高めることにあるとするなら、6秒未満のインターバルトレーニングではアクティブリカバリーを用いるのではなく、止まってしっかりと休む(パッシブリカバリー)方が良いと言えるでしょう。

 

 

 

~20秒以上~ロングスプリントインターバル

運動時間が20秒以上の、いわゆるロングスプリントでのインターバルトレーニングについてです。

 

トレーニング例

・(30秒スプリント―4分リカバリー)×6セット

 

運動時間がやや長く、かつ高い出力を発揮しなければならない場合、クレアチンリン酸だけでなく、筋肉や血中の「糖質」をエネルギー源として利用する能力が重要になってきます。

 

この糖質を分解してエネルギーを生み出す過程は「解糖系」と呼ばれています。しかし、この解糖系も疲労によって、クレアチンリン酸と同じように長続きさせることができません。

 

その原因には、筋肉の中の代謝物(プロトン、リン酸、アデノシン二リン酸など)が関係しており、これらをいかに除去できるかが、高い出力を維持するために重要になってきます。

 

そして、このロングスプリントインターバルトレーニングにおいて、アクティブリカバリーを利用することは、これらの代謝物の除去を早め、代謝物を除去する能力を高めるとともに、酸素の負債を減少させることにつながります

 

したがって、ロングスプリントインターバルトレーニングにおいて、解糖系を含めた持久力向上させる目的の場合、アクティブリカバリーを用いることが有効に働くかもしれません。

 

しかし、休息時間(つなぎ)を短く設定している場合、アクティブリカバリーを用いるとクレアチンリン酸の回復が十分行われず、出力が極端に低下してしまう場合はあるでしょう。

 

「出力をキープするべきかどうか」を考えて、時間とつなぎのバランスを考えなくてはいけません。

 

・陸上中長距離選手のためのスプリントインターバルトレーニング

 

・スプリント能力の高さと長距離走のパフォーマンスの関係

 

 

有酸素能力をメインに向上させるインターバルトレーニング

特に陸上の中長距離種目や、長時間に及ぶ球技系のスポーツにおいて、持久能力を向上させることを重要な課題になります。

 

持久力の指標として、最大酸素摂取量(VO2max)というものが挙げられます。これは、単位時間内に身体がどれだけ酸素を取り込んで利用できるかを表す指標です。酸素を多く利用し、脂質や糖質を多く分解してエネルギーを生み出せるほうが、持久パフォーマンスの発揮には有利です。

 

そして、このVO2maxを向上させるためにも、インターバルトレーニングが用いられます。

 

トレーニング例

・(600mラン―2分リカバリー)×5セット
・(15秒運動ー15秒リカバリー)×10セット
・(20秒運動―10秒リカバリー)×8セット

 

有酸素能力向上を目的としたインターバルトレーニングで、リカバリー時間が30秒以上に設定する場合、アクティブリカバリーを用いた方が良いかもしれないと言われています。これは、リカバリー中にも酸素摂取量が増え、代謝物を速く除去できること、次の運動開始時の酸素摂取効率を高めることができるからです。

 

逆に、リカバリー時間が5-15秒など、短い設定でトレーニングを行う場合は、アクティブリカバリーを用いても用いなくても全体の酸素摂取は変わらないようです。どちらの場合も、そのトレーニングセッション中は最大に近い酸素摂取量を維持することができます。

 

例えば、有名な「タバタトレーニング:20秒運動―10秒リカバリー×6~8セット)」では、つなぎの時間が非常に短いです。そのため、アクティブリカバリーを用いようが、止まって休もうが、全体の酸素摂取量にそこまで影響はないということになります。

 

ただ、しっかりと出力を維持したいという場合、完全に止まって休んで、クレアチンリン酸の回復を促したほうが良いとも考えられます。要は目的次第です。

 

・本当のタバタトレーニングとその効果(実践動画)

 

・短距離走に有酸素トレーニングは必要か?

 

 

スプリントトレーニング中のセット間は?

例えば、高いスピードでのロングスプリントトレーニングを数十分の休息を挟んで行う場合(レストが30分以内)などは、アクティブリカバリーを用いた方が良いとされています。

 

高強度の運動による代謝物を素早く除去することで、高いパフォーマンス発揮につながると考えられているからです。これには、陸上競技の400mや中長距離種目が良く行うような「レペティショントレーニング」などが当てはまるでしょう。

 

しかし、運動間が2時間など、比較的長くなる場合はアクティブリカバリーを用いても用いなくてもパフォーマンスへの影響はあまり変わらないようです。

まとめ

・6秒未満の全力スプリントインターバルトレーニングでは、アクティブリカバリーを用いることで、クレアチンリン酸の回復が阻害され、出力がキープしづらくなる。

 

・20秒より長いロングスプリントインターバルトレーニングでは、アクティブリカバリーを用いることで、代謝物の除去を早め、酸素負債を減少させることができる。

 

・有酸素能力を向上させる目的でのインターバルトレーニングでは、リカバリー時間が30秒以上の場合のみ、アクティブリカバリーを用いる有効性が示されている。

 

・運動間が30分以内のうちに高いパフォーマンスを発揮しなければならない場合、アクティブリカバリーを用いることで、パフォーマンスの低下を防ぐことができるかもしれない。

 

「スピードを出すことが主眼にあるのか?」「有酸素性の能力向上がメインなのか?」など、「距離・本数・つなぎ」の設定は、トレーニングの目的ありきです。以上を材料に、自身のインターバルトレーニングの効果を高められるよう、工夫を凝らしてみてください。

 

 

参考文献

・Hausswirth & Mujika(2013):Recovery for performance in sport. Human Kinetics.
・Gibala, M. J., Little, J. P., Van Essen, M., Wilkin, G. P., Burgomaster, K. A., Safdar, A., ... & Tarnopolsky, M. A. (2006). Short‐term sprint interval versus traditional endurance training: similar initial adaptations in human skeletal muscle and exercise performance. The Journal of physiology, 575(3), 901-911.
・Koral et al. (2016) Six Sessions of Sprint Interval Training Improves Running Performance in Trained Athletes.Journal of Strength and Conditioning Research: March 2018 - Volume 32 - Issue 3 - p 617–623.

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