ストレッチの即時効果として、柔軟性、可動性などの向上が挙げられます。
バレエやフィギュアスケートのように、柔軟性がそのままパフォーマンスにつながりやすい競技では、ストレッチを運動、競技前に行うこと大きなメリットがあると言えるかもしれません。
しかし、そのような競技以外のスポーツ、運動においては、運動前のストレッチが場合によって、パフォーマンスにマイナスに働いてしまうことが多くの研究で示されています。
ここでは、実際に運動前のストレッチがパフォーマンスに及ぼす影響とその長期的な効果を、筋力、ジャンプ力という面から紹介していきます。
☆筋力に及ぼす影響
高い筋力発揮が要求される運動前のスタティック、バリスティック、PNFストレッチのすべてで等尺性、等速性、等張性の筋力にマイナスの影響があります。
研究の中で実施されるストレッチにはストレッチ時間が2分のものから、1時間のものまでと多様ですが、これらすべてにおいてもマイナスの影響が多くでています。
ではどの程度のレベルで悪影響が出るのか。
・大腿四頭筋とハムストリングスに合計540秒ほどアクティブな(自分で収縮を起こす)スタティックストレッチをかけて、膝伸展、屈曲の最大筋力を計測したところ13.8%の筋力低下
・大腿四頭筋に計240秒のパッシブな(外力による)スタティックストレッチをかけたところ膝伸展の等尺性筋力が7%低下
・股関節内転筋群に計120秒のパッシブなスタティックストレッチをかけたところ、等尺性の筋力が股関節外転(股関節を外に開く)45°で8.9%、30°でも10.9%低下
合計伸張時間が比較的短い場合であっても、10%近い筋力の低下というのはとても軽視できるものではないでしょう。
☆ジャンプ力に及ぼす影響
ストレッチがジャンプ力に及ぼす影響を調べ研究は、筋力を調べた研究に対してかなり少ないのが現状です。
しかし、行われた研究の約半分でパフォーマンスの低下がみられています。
・計90秒、股関節、膝関節伸展筋群のスタティックストレッチによって垂直跳びの結果が反動ありで4.3%、反動なしで4.4%低下
・計90秒、腓腹筋のスタティックストレッチによって、垂直跳びの記録が5.6%低下
なかには変化がなかったもの、非常に僅かですが、記録が良くなったとする研究もあります。
しかし、現段階で、パフォーマンスを発揮する直前のストレッチがパワー発揮を求められる競技において有利に働くことはあまりなさそうです。
☆長期的なトレーニング効果
ストレッチをすることによる即時的な効果は筋力、ジャンプ力にマイナスの影響が多くでていますが、長期的にストレッチを続けることで、それらのトレーニング効果が悪くなるということはあまりありません。
むしろ、ストレッチを継続的に実施することで、パフォーマンスが良くなることがあります。
筋力、パワー発揮が求められる運動の前にストレッチを勧めることはできませんが、その他の場面での継続的なストレッチは、長期的にみて筋力を低下させたりすることはないと言えるでしょう。
参考文献
・Hausswirth & Mujika(2013):Recovery for performance in sport. Human Kinetics.