サイト全記事一覧へ

~サイト内の関連記事を検索~


ハードル走の歴史

ハードル走の始まりと「ハードル(Hurdle)」の語源

ハードル走の始まり

陸上競技の110mハードル走は、1864年にイギリスのオックスフォード大学で実施された、120ヤードハードル走が始まりとされています(岡尾,1996)。このころからハードルの高さは106.7㎝で1台目までが13.72m(15ヤード)、インターバルが9.14m(10ヤード)と、現在と同様の設定で競技が行われていたと言います。

 

このように、1台目までが13.72m、インターバルが9.14mとキリの悪い数字になってしまっているのは、もともと「ヤード」基準で行われていたものを「メートル」換算したことによるものです。そのため、120ヤード(109m)ハードル走が、110mハードル走と呼ばれるようになったというわけです。

 

それから1896年の第一回アテネオリンピックにて、ハードル8台の100mハードル、4年後のパリオリンピックで、ハードル10台の110mハードルが行われることとなります。

 

一方、女子のハードル走は80mHから始まります。1966年に100mHが行われ、1969年に公式種目になります。また、男子400mHは110mHとほぼ同じ時期にはじめられています。女子400mHは1974年に国際陸連により公認されることとなります。

 

 

「ハードル(Hurdle)」の語源

ハードル走の「ハードル(Hurdle)」は、本来ドイツ語の「Hürde」、オランダ語の「Horde」、英語の「Hoarding」から派生したものと言われており、これらは果物を運ぶための竹や柳で編んだかご、鉄格子という意味を持つ言葉でした(苅部,2015)。つまり、「ハードル」とは木材で編まれた移動式の塀や柵、野原の門などを意味しています(岡尾,1996)。

 

 

実際に、ハードル走がはじめられた当初、「ヒツジの囲い」がハードルとして用いられていました。このような、牧場や農園などで見かける塀や柵が、ハードルの語源だというわけです。

 

ハードリング技術と記録の変遷

ハードリング技術の変遷

以下、宮下(1991)、岡尾(1996)、苅部(2015)より紹介。

 

初期のハードリング技術

1864年にイギリスのオックスフォード大学で実施された、120ヤードハードル走以前でのハードリングは「片脚で踏み切り、両脚で着地するスタイル」だったと言います。ハードル間は5歩で走り、1区間ごとの減速も大きかったようです。

 

1880年代のハードリング技術

1880年代では、リード脚を内側から巻き上げるようにし、抜き足はハードルと並行にしてハードルを越す技術が普及していきます。そして、1台目までを8歩、ハードル間も3歩で走るようになり、現在とほぼ同じ歩数パターンが定着していくことになりました。

 

 

その後、イギリスのA・クレーム選手が「振り上げ足をまっすぐ上げる」「上体を前傾させる」という技術改善を図ります。

 

1900年以降のハードリング

その後、ハードルを「飛び越すより、跨ぎ越す動作」、「抜き足を腰まで引き上げて、ハードルを低く越す動作」が出現し、現在とほぼ同じようなハードリング技術が広まっていくことになります。これらの技術によって、アメリカのF・スミスソン選手が1908年のロンドン五輪で15.0の世界記録を樹立します。

 

また、1920年代後半には「L字型ハードル」が使用されるようになります。それまでのハードルは逆T字型と呼ばれ、ハードルにぶつかっても簡単に倒れるものではなかったのです。これによって、ハードルに対する恐怖感が薄れ、1937年にはアメリカのF・ダウンズ選手が13.7の世界記録を打ち立てます。

 

その後も細かな技術の修正や、ハードラーの長身化、スピード化が進み、記録は12秒台に突入していくことになります。そして現在の世界記録保持者のアメリカのA・メリット選手は、1台目までの歩数を7歩で走ることによって、12.80の世界記録を樹立しました。

 

このように、ハードルを飛び越す技術、ハードルという用具の改善、ハードラーの体格やスピードの変化など、様々な要因が変化して、現在まで記録の更新がなされてきたというわけです。

 

関連記事

・110mハードル走(110mH)の特徴とトレーニングの視点

 

・100mハードル走(100mH)の特徴とトレーニングの視点

 

・110m・100mハードル走(110mH・100mH)の1台目までのトレーニング(アプローチ)

 

・110m・100mハードル走(110mH・100mH)における中間疾走、後半の速度低下を改善するトレーニング

 

・400mハードル走(400mH)の特徴とトレーニングでのポイント

 

・110mH、100mH、400mHのためのハードリング練習方法(ハードルドリル)

 

 

参考文献

・岡尾恵市(1996)陸上競技のルーツを探る.文理閣,京都,pp.98-107.
・宮下憲(1991)最新陸上競技入門シリーズ4 ハードル.ベースボールマガジン社,東京.
・苅部俊(2015)一流ハードル選手の主観情報の研究.早稲田大学博士論文.

サイト全記事一覧へ

~サイト内の関連記事を検索~


Youtubeはじめました(よろしければチャンネル登録お願いします)。