~文献~
Toumi, H., & Best, T. M. (2003). The inflammatory response: friend or enemy for muscle injury?. British journal of sports medicine, 37(4), 284-286.
以下、メモ
概要
筋損傷を伴うような運動後には、いくつかの炎症反応が生ずる。この炎症反応は、組織の修復(再生)に重要な過程の1つであると考えられる。そして尚且つ、この炎症反応によって、さらに筋のダメージ(筋損傷)を増加させる可能性が示唆されている。
運動と筋損傷
運動は、機械的、生化学的な要因を通して筋損傷を引き起こす。機械的な損傷は、サルコメアの不均一を生じたものであり、他の組織構造への負荷を増やすサルコメアの過剰なストレッチは、それらにダメージを与える。
また損傷は、StretchーActivated(SA)Channel(細胞膜の伸展で 活性化されるイオンチャネルの総称)の引き金となる。これらのチャネルの活性化は、細胞膜のダメージを引き起こし、カルシウムイオンの流入につながる。
これは、カルパインプロテアーゼ(細胞質内で機能するCa2+要求性のシステインプロテアーゼ)の放出を引き起こし、それは筋線維タンパク質を分解する。
好中球の放出
運動によって筋損傷が起こると、炎症反応により、好中球(白血球の一種)が放出される。好中球は運動後すぐに筋肉に移動し、少なくとも24時間はそこに蓄積される。軽い損傷後では、通常比較的早くそれらは放散される。この段階は、細胞食作用(phagocytosis)に関連し、筋線維の損傷部位を取り除く作用があると信じられている。
リソソームプロテアーゼ
好中球の蓄積は、細胞膜にダメージを与えるリソソームプロテアーゼの引き金となる。リソソームとは、細胞がダメージを受けた際、自己崩壊して細胞自身も消化してしまう、物質の分解、破壊機能を持った細胞器官。このプロテアーゼが放散されると、筋内の線維の分解を助長することになる。
活性酸素種(ROS)
好中球の蓄積は、活性酸素種(ROS:Reactive Oxygen Species)という酸素フリーラジカルを発生させる。活性酸素種は、カルシウムイオンを制御する筋線維の能力を狂わせたり、細胞膜を傷つけることによって筋損傷を引き起こす。そしてそれらは、どちらも細胞へのカルシウムイオンの流入を増やすと考えられている。これらのことから、活性酸素種は、筋損傷の要因の一つであると考えられている。
運動後の回復期間に、好中球の影響をブロックした研究では、筋損傷が減ったことが報告されている。したがって、運動後の炎症反応は、筋損傷の進行度合い(回復度合い)に関連する。
炎症反応は組織の再生、修復に重要な過程であり、それは筋損傷の後に起こる。しかしながら、早急な炎症反応は、筋線維の損傷部位を取り除くために重要である一方、活性酸素種や、プロテアーゼなどの生成によって、二次的なさらなる筋損傷を誘発すると考えられる。