Dorrell, H. F., Smith, M. F., & Gee, T. I. (2020). Comparison of velocity-based and traditional percentage-based loading methods on maximal strength and power adaptations. The Journal of Strength & Conditioning Research, 34(1), 46-53.
レジスタンストレーニングにおいて、拳上重量とトレーニング量(セット数×レップ数)が、神経生理学的なトレーニング効果を決定する上で、最も重要な要因だと考えられている。このことから、1RM測定によって個別にトレーニング負荷を決定し、トレーニングプログラムを組むことが一般的に行われている。
しかし、最大筋力は調子により毎日変動することや、継続的なトレーニングによって著しく増加することが示されており、過去に測定した1RMを基に重量を設定する方法は疑問視されている。
そこで最近では、ウエイト拳上中の速度から、その重量が今現在のトレーニーにとって相対的にどれくらいの重量なのか?を推定し、負荷を調整する、VBT(velocity-basedtraining)に関する研究が進んでいる。そして、このVBTは、従来の%1RMを用いたトレーニングよりも、筋力やパワーにおいて高い効果を生むことが報告されている。
ところが、従来の研究では被験者のトレーニング経験の浅さや、信頼性の低い速度管理の方法等の問題点がある。また、事前に設定した「負荷―速度プロフィール」を基に負荷設定し、従来の%1RM(PBT)を基にしたトレーニングとの違いを比較したものはない。
そこでここでは、従来のPBTと比較して、レジスタンストレーニング経験の長い男性の筋力とパワーに、VBTが及ぼす効果を検証することとした。
方法
・6週間、週2回のトレーニング
・PBTは事前に測定した1RMを基に、VBTはリアルタイムで速度をモニタリングしながら重量設定
・VBTでは目標とした速度から20%以上低下した時点で拳上中止
Dorrell, H. F., Smith, M. F., & Gee, T. I. (2020). Comparison of velocity-based and traditional percentage-based loading methods on maximal strength and power adaptations. The Journal of Strength & Conditioning Research, 34(1), 46-53.より引用
結果、考察と結論
・バックスクワット(VBT 9%、PBT 8%)、ベンチプレス(VBT 8%、PBT 4%)、オーバーヘッドプレス(VBT 6%、PBT 6%)、デッドリフト(VBT 6%)の最大筋力が有意に増加(p<0.05)。
・CMJの有意な増加はVBT群のみで認められた(5%)。
・ベンチプレス(p = 0.004)とCMJ(p = 0.018)は、トレーニング群間で有意な相互作用効果が認められた。
・バックスクワット(9%)、ベンチプレス(6%)、オーバーヘッドプレス(6%)では、総挙上量に有意差が認められた(VBTの方が少ない)。
VBTは、従来のPBTアプローチと比較して、最大筋力とジャンプ能力に高い効果をもたらした。また、VBTはPBTと比較して総トレーニング量が有意に減少したにもかかわらず、高いトレーニング効果を生んだ。
コメント(個人のただの感想です)
・最近よくあるVBT研究の実験プロトコルしっかりした版
・トレーニング量を抑えつつ、爆発的な力発揮への効果を担保できるので、スプリントトレーニング、高強度のインターバルトレーニングなどを行うスプリンター、ランナーの専門準備期、シーズン中のコンディショニングとしてもこういうやり方は使えそう。ゴリゴリ走りながらウエイトもみっちり追い込む…は毎度のことながら非効率に感じるので。
・アプリで拳上速度測れるにしても、やっぱりめんどくささは否めない。
・筋力、パワー向上が目的なら、どんな重量であれとにかく「爆発的に挙げようとする意思+ちょっと疲れたと思ったら途中ですぐやめる怠惰な心」を育むべき・・・に落ち着くかなあと思った。