筋肉の活動が、「運動単位」によって行われることは「サルでもわかる、「運動単位」」にて紹介した通りです。
ここでは、その運動単位が体の中でどのようにコントロールされているかについて説明していきます。
全か無の法則
1つの運動単位の活動は、「力を発揮しているか、していないか」の2パターンしかありません。
むむむ…?と、ややしっくりこない方もいることでしょう。
具体的に言うと、一つの運動単位が10の力を持っているとすると、力発揮のパターンは「10全力を出すか、0で完全にサボっている」の2パターンしかないということです。
1つの運動単位が「5とか7とか…」力を調節するということは起きません。これが、「全か無の法則」です。
筋肉が発揮できる力は、運動単位の数で決まる
運動単位の活動パターンは「全力か、完全にサボるか」の2パターンしかないということを紹介しました。しかしこれは「1つの運動単位」に限ってのことです。
実際の筋肉には、たくさんの運動単位が詰まっていて、「サボる運動単位と全力を出す運動単位」があることで、力発揮を調整しています。
つまり、筋肉全体が最も大きな力を発揮するためには、サボる運動単位を無くし、より多くの運動単位を活動させることが必要になります。
運動単位を活動させる指令は「大脳の運動野」から出てきます。
「たくさんの運動単位を活動させて、最大筋力を発揮させよ!」という指令をきっちり送ることができると、筋肉はそれ相応の筋力を発揮することができます。
しかし、トレーニングされていない人の場合、この指令をきっちり送ることができません。大きな筋力を発揮するようなトレーニングを積むと、この指令がきちんと送れるようになり、より多くの運動単位を動員することができるようになります。
筋トレをしていると、「最初は神経系の効率が良くなって、筋力が高まる…」なんてことを聞きますが、それはこの指令のことを指しているのです。
まとめ
・1つの運動単位の活動は「全力を出している」か「完全にサボっている」の2パターンしかない。これを「全か無の法則」という。
・筋肉全体では「全力を出している運動単位」と「完全にサボっている運動単位」の数を調整することで、筋力を調整している。
・大きな力を発揮するためには、より多くの運動単位を活動させる必要があり、その能力はトレーニングによって高めることができる。
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参照文献
・石井直方(2015).石井直方の筋肉の科学.ベースボール・マガジン社.
・山地啓司, 大築立志, 田中宏暁 (編), スポーツ・運動生理学概説. 昭和出版: 東京(2011).
・勝田茂, 和田正信, & 松永智. (2015). 入門運動生理学. 杏林書院.
・芳賀脩光, & 大野秀樹. (2003). トレーニング生理学.