
陸上競技の短距離リレー種目は、各チームの代表選手が団結して、チームの威信をかけてぶつかり合う、競技会の中でも非常に盛り上がる種目です。
短距離リレー種目として、主に挙げられるのが、北京五輪、リオ五輪と、日本チームもメダル常連となっている4×100mRや、1人400mを走る上に選手同士のぶつかり合い、駆け引きが重要にもなる4×400mRです。ちなみに、4×100mRは通称「四継」、4×400mRは「マイル」と呼ばれています。
参考動画
このリレー種目で好成績を収めるために重要なカギを握るのが「バトンパス」です。
このバトンパスの良し悪しで、タイムや順位は大きく変わることでしょう。100分の1秒差で、県大会や地方大会、全国大会への切符を逃してしまうことさえあります。なので、陸上競技選手としてリレー種目に望むのであれば、バトンパスの精度は高めることは必須だと言えるでしょう。
そして、このリレー種目に取り組む上で、絶対に押さえておかなければならないこと、それが「バトンパスに関するルール」です。
ここに関して知らないことがあったり、勘違いがあることによって、上位大会に行けない、対抗戦で得点を残せない、などチームに重大な迷惑をかけてしまうことに繋がるかもしれません。
そこでここでは、このリレー種目のバトンパスに関して、必ず知っておきたいルールについて紹介していきます。
バトンパスはテークオーバーゾーンで行う
テークオーバーゾーンとは?
バトンは必ずテークオーバーゾーン内で受け渡しを行う必要があります。テークオーバーゾーンは、4×100mRで30m、4×400mRで20mと決まっており、受け手はそのゾーン内から走り出さなければいけません。
なので、受け手がテークオーバーゾーンを示すラインを踏んで待っていたり、ラインの外で待っていたりするといけません。必ずライン内で待って、走り出すようにしましょう。

19. すべてのバトンパスにおいては、テイク・オーバー・ゾーン外から走り出してはならず、そのゾーンの中でスタートしなければならない。この規則に従わなければ、そのチームは失格となる。
引用:陸上競技ルールブック2019(トラック競技)pp.263 日本陸上競技連盟競技規則第3部170条19.
ゾーン内かどうかは、バトンの位置が基準になる
バトンパスがゾーン内で行われたか否かについては、バトンの位置を基準に決められます。なので、バトンパス開始時に、バトンがゾーン外にあったり、またはバトンパス完了がゾーン外になってしまうと失格です。
このバトンパスの開始と完了は、次のように定義されています。
7. バトンは、テイク・オーバー・ゾーン内で受け渡されなければならない。バトンのパスは、受け取る競技者にバトンが触れた時点に始まり、受け取る競技者の手の中に完全に渡り、唯一のバトン保持者となった瞬間に成立する。それはあくまでもテイク・オーバー・ゾーン内でのバトンの位置のみが決定的なものであり、競技者の身体の位置ではない。 競技者がこの規則に従わなければ、そのチームは失格となる。
引用:陸上競技ルールブック2019(トラック競技)pp.260 日本陸上競技連盟競技規則第3部170条7.
受け手にバトンが触れる=バトンパス開始
受け手にバトンが触れた瞬間から、バトンパスが開始されたとみなされます。選手同士がバトンを渡そうと、手を伸ばしたりしていても、受け手がバトンに触れていなければ、バトンパスは始まっていないことになります。
また、受け手がバトンに触れた時からバトンパスは開始されているので、受け手がテークオーバーゾーン内にいても、手を伸ばしてバトンに触れた時のバトン位置が、ゾーンより外だと失格です。

バトンの位置を決めるにあたっては、バトン全体を考慮する必要がある。 監察員は、バトンがテイクオーバーゾーンに入る前に、特に4x400m 以上のリレーで、出走ランナーによるバトンの接触を確実に観察するために十分が必要である。バトンがゾーン内に入る前に出走ランナーがバトンに触れても、チームは失格となる。監察員はまた、競技者がゾーンから出る際には、バトンが受け取り側の選手の手の中だけにあることを確認しなければならない。
引用:陸上競技ルールブック2019(トラック競技)pp.260 日本陸上競技連盟競技規則第3部170条7.
受け手がバトンを単独で握っている状態になる=バトンパス完了
受け手が単独でバトンを握っている状態になると、バトンパスが完了したとみなされます。渡し手と受け手がバトンに同時に触れている状態は、まだバトンパスが完了していないことになります。
そして、バトンパス完了までにバトン位置が、テークオーバーゾーンから外に出てしまうと失格です。

バトンを落としてしまった時は?
バトンパスが完了していない時は、渡し手が拾って、落としたところまで戻って、再度渡す
バトンパスが完了していなければ、必ず渡し手がバトンを拾って、次の走者にバトンパスを再度行う必要があります。渡し手が、バトンを落とした人になるからです。リレー競技では、バトンを落とした人がバトンを拾わなければなりません。
バトンパスが次の走者に1度触れていたとしても、それはまだバトンパスが完了していないので、渡し手が取りに行きます。
この時、他の選手の妨害になったり、走る距離が短くなるなど、チームに利益が出ない限り、渡し手はレーンの外に出ることができます。
バトンパスが完了していれば、受け手が拾って、落とした所から走り出す
一方、バトンパスが完了した後、バトンを落としてしまった時は、受け手がバトンを取りに行きます。受け手が、バトンを落とした人になるからです。
この時も、他の選手の妨害になったり、走る距離が短くなるなど、チームに利益が出ない限り、渡し手はレーンの外に出ることができます。バトンを渡し終えた後、レーンの外に出ても失格にはなりません。ただし他の選手の妨害になったとみなされると失格になります。
したがって、バトンパス完了後、渡し手は出来る限り自分のレーンにいる、マイルリレーの場合は速やかにトラックから出るようにしなければなりません。
⒞ もしバトンを落した場合、落とした競技者がバトンを拾って継続しなければならない。この場合、競技者は距離が短くならないことを条件にバトンを拾うために自分のレーンから離れてもよい。加えて、 そのような状況でバトンを落としたとき、 バトンが横や進行方向(フィニッシュラインの先も含む)に転がり、拾い上げた後、競技者はバトンを落とした地点に戻ってレースを再開しなければならない。上記の手続きが適正になされ、他の競技者を妨害しない限りは、バトンを落としても失格とはならない。競技者がこの規則に従わなければ、そのチー ムは失格となる。
引用:陸上競技ルールブック2019(トラック競技)pp.259 日本陸上競技連盟競技規則第3部170条6.
他のチームのバトンを拾ってあげるのはダメ
他のチームがバトンを落としてしまった時、親切にそのバトンを拾ってあげてはいけません。他のチームのバトンを拾ってしまうと、拾ってあげたチームが失格になります。
9. レース中、競技者が他チームのバトンを使ったり拾い上げた場合、そのチームは失格となる。相手チームは、有利にならない限り失格とはならない。
引用:陸上競技ルールブック2019(トラック競技)pp.260-261 日本陸上競技連盟競技規則第3部170条9.
リレーのオーダー用紙提出は、各ラウンド1組目の招集完了時刻の1時間前まで
リレーのオーダー用紙の提出は、絶対に忘れないようにしましょう。チームのコーチ、顧問、マネージャーに任せっぱなしにするのは良くありません。必ず選手が当事者意識を持って、準備するように心がけておきましょう。
11. リレーチームの編成は、各ラウンドの第1組目の招集完了時刻 の1時間前までに正式に申告しなければならない。一度申告したらその後の変更は、招集完了時刻までに主催者が任命した医務員の判断がない限り認められない。各チームは申告された競技 者がその順番で走らなければならない。 この規則に従わなければ、そのチームは失格となる。
〔注釈〕 招集完了時刻前であっても、一度申告した編成の変更(オーダー用紙の差換え)は認められない。 医務員の判断による変更は出場選手の変更のみ認められ、編成(走る順番)の変更は認められない。
引用:陸上競技ルールブック2019(トラック競技)pp.261 日本陸上競技連盟競技規則第3部170条11.
参照
・陸上競技ルールブック2019(トラック競技).日本陸上競技連盟競技規則第3部.https://www.jaaf.or.jp/pdf/about/rule/1911.pdf