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ハムストリングの肉離れを防ぐためにこそ、「全力スプリント練習」から逃げてはいけない

ハムストリングの肉離れを防ぐためにこそ、「全力スプリント練習」から逃げてはいけない

ハムストリングの肉離れはサッカー(1や陸上競技(2など、爆発的なスプリント加速能力を必要とするスポーツにおいて、多くみられる怪我です。そのため、競技スポーツのコーチやメディカルスタッフにとって、ハムストリングの肉離れを発生させないようにトレーニングを計画したり、選手のケアをしたりすることはとても重要な使命と言えるでしょう。

 

 

ハムストリングの肉離れは全力疾走時に起きやすいため(3, 4トレーニングにおいて「20m-60mくらいの全力疾走」を実施するときには特に注意が必要だと言われています。

 

 

しかし、このことを恐れてトレーニングで「全力疾走」を避けていると、逆にハムストリングの肉離れのリスクは高まる可能性があるのです。

 

 

 

ハムストリング肉離れの危険因子が多く解明され、予防方法が考案されてきたが…

 

以下は、ハムストリングの肉離れを起こしやすい人の特徴を示したものです(12

 

 

 

 

 

これらハムストリング肉離れの危険因子に基づいて、これまで様々な予防トレーニングが推奨されています。

 

 

 

 

(※予防トレーニングの例)

 

 

 

このように、ハムストリング肉離れの危険因子が多く解明され、多くの有効な予防トレーニングが考案されてきました。しかし、どんなにハムストリング肉離れ予防のトレーニング科学が進歩しても、スポーツの練習や試合におけるハムストリングの肉離れはどうしても起きてしまっているのが現状です。その原因に、次のようなことが挙げられています(11

 

 

 

①ハムストリングの筋力不足を評価するにしても、その方法が単関節運動(膝の曲げ伸ばしのみ)であったり、低速の運動であったり、実際のスプリントとはかなり異なる可動域で行われること(7

②肉離れの危険因子を解明したり、リスクを予測したりするにしても、その信頼性が十分確保されているとは言い難い(5

③肉離れ予防トレーニング計画が、個人の特性を考慮せずに実施されている

 

④選手が実際に予防トレーニングを実施しているのかが不明(6

⑤予防トレーニングでハムストリングを強化するだけでは、スプリント中にかかる負荷に耐えうるような刺激を与えるには及ばない(7, 8

 

 

 

 

ハムストリングの肉離れを防ぐために最も必要なこととは??

 

全力スプリント時のハムストリングの活動を引き出すには、全力スプリントをやるしかありません。

 

 

ハムストリング予防のトレーニングだけでは、全力スプリントでの筋電活動の18-75%にしか達しません(8。他のトレーニングで全力スプリントを超えるような負荷をかけることは不可能に近いのです。

 

 

したがって、全力スプリントはスプリントパフォーマンスを向上させるだけでなく、ハムストリングの肉離れや再発防止のためにも、非常に効果的なリハビリテーションとも言うことができるでしょう(9

 

 

実際に、競技スポーツの練習中に高強度(最高速度の95%以上)のスプリントを多く実施していた選手は、遅い速度でしか走っていなかった人(最高速度の85%未満)と比較して、肉離れのリスクが低かったことが報告されています(10

 

 

また、トレーニングにおいて急激に高強度のスプリント量が増えることは、ハムストリング肉離れのリスクを高めるようです(4

 

 

これらのことから、日ごろのトレーニングにおいて全力スプリントに十分に慣れておくことは、ハムストリングの肉離れ予防にとって最も重要なことであることが分かると思います。

 

 

 

まとめ

 

・ハムストリングの肉離れに関して、多くの危険因子が明らかにされ、予防トレーニングが考案され、実践されている。

 

・しかし、それらのトレーニングのみで全力スプリント時を超えるような負荷をかけることはできないため不十分である。

 

・日ごろから全力スプリントを実施し、最大に近いスピードに慣れておくことが、ハムストリングの肉離れ予防に最も重要であると言える。

 

 

 

 

参考文献

1. Ekstrand J, Wald´en M, H¨agglund M. Hamstring injuries have increased by 4% annually in men’s professional football, since 2001: a 13-year longitudinal analysis of the UEFAElite Club injury study. Br J Sports Med 2016;50:731–7.
2. Edouard P, Branco P, Alonso J-M. Muscle injury is the principal injury type and hamstring muscle injury is the first injury diagnosis during top-level international athletics championships between 2007 and 2015. Br J Sports Med 2016;50:619–30.
3. Woods C, Hawkins RD, Maltby S, et al. The Football Association Medical Research Programme: an audit of injuries in professional football—analysis of hamstring injuries. Br J Sport Med 2004;38:36–41.
4. Duhig S, Shield AJ, Opar D, et al. Effect of high-speed running on hamstring strain injury risk. Br J Sports Med 2016;50:1536–40.
5. Green B, Bourne MN, Pizzari T. Isokinetic strength assessment offers limited predictive validity for detecting risk of future hamstring strain in sport: a systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med 2018;52:329–36.
6. Goode AP, Reiman MP, Harris L, et al. Eccentric training for prevention of hamstring injuries may depend on intervention compliance: A systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med 2015;49:349–56.
7. Guex K, Millet GP. Conceptual framework for strengthening exercises to prevent hamstring strains. Sport Med 2013;43:1207–15.
8. van den Tillaar R, Solheim JAB, Bencke J. Comparison of Hamstring Muscle Activation During High-Speed Running and Various Hamstring Strengthening Exercises. Int J Sports Phys Ther 2017;12:718–27.
9. Mendiguchia J, Martinez-Ruiz E, Edouard P, et al. A Multifactorial, Criteria-based Progressive Algorithm for Hamstring Injury Treatment. Med Sci Sports Exerc 2017;49:1482–92.
10. Malone S, Roe M, Doran DA, et al. High chronic training loads and exposure to bouts of maximal velocity running reduce injury risk in elite Gaelic football. J Sci Med Sport 2017;20:250–4.
11. Edouard P et al. (2019). Sprinting: a potential vaccine for hamstring injury? Sport Performance & Science Reports.
12. Opar D.A. et al. (2012). Hamstring strain injuries. Sports Medicine, 42(3), 209-226.

 

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