技術トレーニングには、できない動きを身に付ける「習得トレーニング」と、できている動きを修正する「修正トレーニング」があります。
いずれのトレーニングにおいても「コツやカン」を掴ませて、新たな動作を発生させることが重要です。
そして、ここで発生する新たな動作を行った時の「感覚」をいかに選手の中で形成していくかが技術トレーニングの目的地と言えるでしょう。
コツを習得し、新しい動作の感覚を得るためには、その運動のコツの構造を理解することが重要です。
ハードル走で例えてみましょう。
一流の110mハードル、100mハードルの選手はハイスピードで助走を行い、スピーディーにハードルを越えながらインターバルを軽快なリズムで刻んで、流れるように走っていきます。
レース時、選手はハードルの踏切や空中動作、インターバルの走りの細部へ意識を向けている暇は無く、スタートからゴールまで一連の動作の自動化がかなり高い精度で出来上がっていると考えられます。
しかし、初心者では
スタートの身体の起こし方、踏切準備動作、踏切動作、空中動作、着地動作、インターバルのリズム…など、一つ一つの動作のコツを段階的に身に付けていく必要があります。
この「一つ一つの段階的な動作のコツ」こそが「コツの構造」です。
競技スポーツでの一連の運動はどのようなコツの組み合わせでできているのか。
これを理解することが、選手の技術習得の第一歩となります。
☆できる人から「コツ」を教わる
新しい運動の感覚を得るための「コツ」は、その運動ができる人の運動の感覚から教わることができます。
野球ボールを手首のスナップを利かせて投げたい時、紙鉄砲を鳴らす練習をさせた後に「紙鉄砲を鳴らす感じで投げる」と上手くいくことが多いです。
このように、すでにその運動ができる人の経験、感覚は目的の運動を習得させるためのイメージや類似した運動(アナロゴン)を導き出すのに重要な役目を果たします。
できる人が持っている「感覚」を他人と共有可能な「コツ」に変換させてあげることで、より円滑な技術指導が可能になります。