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実は科学的根拠に乏しい?「クールダウン」の効果

実は科学的根拠に乏しい?「クールダウン」の効果

 

 

 

 

トレーニングを頑張った後、一般的には「クールダウン」というものが行われています。このクールダウンとは激しい運動をした後に、ジョギングなどの軽運動を行うことで、身体を落ち着かせ、翌日の疲労を軽減させたり、怪我を予防するために有効だと広く信じられています。

 

 

では、どうしてクールダウンを行うことによって、疲労が軽減されると言われるのでしょうか?そもそもクールダウンにはどれくらいの効果があるのでしょうか?これらに関して科学的な根拠はどれほど存在するのでしょうか?

 

 

 

運動後のクールダウンは必要か?

 

以降、運動後のクールダウンの必要性について、数多くの研究結果をまとめたHooren & Peake(2018)の報告について紹介していきます。

 

 

この報告では、クールダウンとしてジョギングやスイミングなどの軽運動を行い、その後のパフォーマンスや、生理的な指標、心理的な指標、長期的なトレーニング効果や傷害予防効果について、効果があった研究、効果がなかった研究、逆に悪影響が見られた研究はそれぞれどのくらいあるのかをまとめ、考察しています。

 

 

 

スポーツのパフォーマンスに与える影響

クールダウンが、その日の内(次の運動まで4時間以上空く場合)に行う次の運動や、次の日の運動パフォーマンスに効果があるとした研究がいくつかある一方、むしろ悪影響をもたらした結果も存在することから、クールダウンをやってもやらなくても、その日や次の日のパフォーマンスに効果があるかどうかは不明なようです。

 

 

血中乳酸

クールダウンを行うことによって血中乳酸が減少しやすくなるという文献は多くあるようです。クールダウンの有効性が示してある指導書などでは、このような根拠を基にしてあることが多いでしょう。

 

 

しかし、乳酸値が高い状態が疲労している状態であるとは限らず、むしろ乳酸はエネルギー源として利用できる物質であることが知られています。

 

 

そもそも運動後のクールダウンがなくても、血中乳酸は約20-120分以内に高強度の運動後に安静時のレベルに戻ることもわかっており(Menziesほか,2010)、時間が経つことでどうせ同じ値まで下がるんなら、クールダウンを入れようが、そうでなかろうが翌日のパフォーマンスの良し悪しに影響が出るとは考えにくいでしょう。

 

 

加えて、アクティブなクールダウンの後に血中乳酸がより素早く除去されたからと言って、その後の運動パフォーマンスは必ずしも改善されるわけではないようですないようです(Ce `ほか,2013)。

 

 

 

神経筋の機能、筋肉痛、スティフネス、可動性

これらに関しては効果があるとする文献が少しあるものの、効果が見られなかったとする文献が大半を占めていました。

 

 

 

筋グリコーゲンの回復

グリコーゲンは筋肉内に貯蔵されている「糖質」、すなわちエネルギー源です。クールダウンを行うことによって、このグリコーゲンの回復を妨げるという研究が多く存在するようです。試合やトレーニングでグリコーゲンを激しく消耗した後に、クールダウンでさらに運動を加えるとなると、当然筋グリコーゲンの消耗度合いも高まることが予想できます。

 

 

 

免疫系

激しい運動や長時間の運動をした後、一時的に免疫力が低下することが知られており、ウイルスや細菌の感染、病気につながる可能性が高くなります(Peakeほか,1985)。このことから、運動後に免疫力を回復させることは病気にならないためにも重要です。

 

 

Wigernaesほか(2001) の研究では、アクティブなクールダウンは、パッシブなクールダウンと比較して、運動直後の白血球数の減少を大幅に防止することを明らかされています。このことから、トレーニング後のアクティブなクールダウンは免疫力を保つために重要であると予想できるかもしれませんが、これも血中乳酸の動態と同じように、2時間ほど経てば何もしなかった群と変わらないレベルに戻るようです。

 

 

心臓・血管系

トレーニング後は、心拍数や呼吸数が長時間にわたってやや高くなります。心拍数や呼吸数宇を安静時のレベルまでいち早く戻し、心臓や血管の活動を回復させるためにアクティブなクールダウンは有効だとする研究は比較的多いようです。

 

 

また、「激しい運動の後、急に運動をストップすると体に悪い」と言われたことは無いでしょうか?

 

 

激しい運動の直後は、意識失ったり、心血管系の合併症を引き起こす可能性が高くなると言われています。そして、アクティブなクールダウンは、心臓への血流を増価させたり、動脈の二酸化炭素分圧の上昇を防ぐことから、理論上は運動後の失神や心血管系の合併症予防に効果的だと言われています。しかし、実際に効果があるかどうかは不明なようです。

 

 

発汗量と体温調節

筋肉や身体の深部体温は、運動後90分までは安静時のレベルよりも高いままになり、体温を下げるため、運動後の発汗量は増えやすくなります。しかし、アクティブなクールダウンによって体温の低下が早まったりすることは無いようです。

 

 

心理学的な影響

気分状態、知覚、睡眠に対する影響についても、目立って効果があるとした報告は少ないとされています。にもかかわらず、スポーツ選手や日ごろから運動をしている人たちは、「アクティブなクールダウンは良い効果がある」と、認識だけはしているようです。

 

 

長期的な影響

怪我予防やトレーニング効果を促すことに役立つのかどうかについてですが、効果が見られなかったとする文献が多いようです。

 

 

 

他の方法との組み合わせについて

 

静的ストレッチ

アメリカの大学アスレチックトレーナーを対象とした調査では、運動後の回復方法として静的ストレッチを61%が推奨していることがわかっています(Poppほか,2017)。ストレッチは通常、筋肉痛を軽減し、可動域を広げるために行われており、多くの医療従事者はストレッチングが怪我のリスクを減らし、パフォーマンスを向上させると考えているようです。

 

しかし、運動の前後に静的ストレッチを行っても筋肉痛は軽減されません(Ryanほか,2009)。また、ランニングエコノミーが優れている長距離ランナーは、実際には柔軟性が低く、柔軟性が増すとランニングエコノミーに悪影響を与える可能性すらあること、けが予防にもならないことも報告されています(Baxterほか,2017)。

 

 

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したがって、静的ストレッチはこればで広く実践されてきたクールダウンですが、必ずしもトレーニングからの回復やけが予防に役立つとは限らないことがわかります。

 

 

 

フォームローラー

フォームローラーは、筋肉をコロコロとほぐしていく、硬い筒状のツールで、最近では広くクールダウンにも組み込まれています。そして、運動後にフォームローラーを使用することで、筋肉痛を減らし、可動域を広げ、翌日のスポーツパフォーマンスを向上させることがわかっています(MacDonaldほか,2014)。

 

しかし、これに関しての研究はまだまだ数が少ないため、フォームローラーが本当にトレーニングや試合からの回復を促進するかどうかは断定できません。

 

 

 

 

クールダウンは必要か?

 

このような結果をみると、思ったよりもクールダウンのメリットは少なく、むしろ悪影響の方が多いのではないか?という印象を抱くかもしれません。

 

 

 

 

 

 

クールダウンという名目で、何十分もジョグをしている光景を目にする機会は少なくないように思います。しかし、このようにクールダウンとして軽運動を長時間行ってしまうと、筋肉内のグリコーゲンの回復は確実に遅れていきます。

 

 

強度の高いトレーニングをして、次の日も高いパフォーマンスが求められる場合は、素早くグリコーゲンを回復させることが重要だとすれば、長々と軽運動を繰り返して、グリコーゲンを消耗させてしまっては逆効果です。

 

 

トレーニング後にグリコーゲンを効率よく回復させるためには、トレーニング後の素早い糖質の摂取が重要です。タンパク質の摂取も同様に重要です。

 

 

このことを考えると、トレーニングが終わったら入念にクールダウンを行うよりも、素早く家に帰ってご飯を食べることが先決だと言えます。

 

 

勘違いしないでほしいことは、「クールダウンはやっちゃいけないものだ」と認識してしまうことです。翌日に試合やトレーニングが無かったり、クールダウンをしながらチームメイトと会話を楽しんだりすることが好きな場合はジョギングなどのクールダウンを行って親交を深めるのも良いことです。

 

 

また、クールダウンとの名目で何時間もジョギングを行っているような選手は、それ自体がトレーニング効果を生み、パフォーマンス向上に関係しているかもしれないので注意が必要でしょう。

 

 

時と場合を考えて、クールダウンの必要性を見直してみてはどうでしょうか?

 

 

 

参考文献

・Van Hooren, B., & Peake, J. M. (2018). Do we need a cool-down after exercise? A narrative review of the psychophysiological effects and the effects on performance, injuries and the long-term adaptive response. Sports Medicine, 1-21.
・Menzies P, Menzies C, McIntyre L, Paterson P, Wilson J, Kemi OJ. Blood lactate clearance during active recovery after an intense running bout depends on the intensity of the active recovery. J Sports Sci. 2010;28(9):975–82.
・Ce ` E, Limonta E, Maggioni MA, Rampichini S, Veicsteinas A, Esposito F. Stretching and deep and superficial massage do not influence blood lactate levels after heavy-intensity cycle exercise. J Sports Sci. 2013;31(8):856–66.
・Peake JM, Neubauer O, Walsh NP, Simpson RJ. Recovery of the immune system after exercise. J Appl Physiol (1985). 2017;122(5):1077–87.
・Wigernaes I, Hostmark AT, Stromme SB, Kierulf P, Birkeland K. Active recovery and post-exercise white blood cell count, free fatty acids, and hormones in endurance athletes. Eur J Appl Physiol. 2001;84(4):358–66.
・Popp JK, Bellar DM, Hoover DL, Craig BW, Leitzelar BN, Wanless EA, et al. Pre- and post-activity stretching practices of collegiate athletic trainers in the United states. J Strength Cond Res. 2017;31(9):2347–54.
・Ryan ED, Herda TJ, Costa PB, Defreitas JM, Beck TW, Stout J, et al. Determining the minimum number of passive stretches necessary to alter musculotendinous stiffness. J Sports Sci. 2009;27(9):957–61.
・Baxter C, Mc Naughton LR, Sparks A, Norton L, Bentley D. Impact of stretching on the performance and injury risk of longdistance runners. Res Sports Med. 2017;25(1):78–90.
・MacDonald GZ, Button DC, Drinkwater EJ, Behm DG. Foam rolling as a recovery tool after an intense bout of physical activity. Med Sci Sports Exerc. 2014;46(1):131–42.

 


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