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スプリント力(足の速さ)と股関節の筋力、筋肉量の関係

スプリント中は脚を非常に速いスピードで動かす必要があります。速く走るためには、股関節で大きな力を生み出し、膝関節や足関節はその生み出される力、速度を上手く地面に伝えていく必要があります。

 

 

 

「物体に速度を与える」

 

「動いている物体を素早く反対方向に切り返させる」

 

 

 

これには「大きな力」が必要です。「大きな力」を生み出すには「筋力」が必要であり、「筋力」を生み出すためには「筋肉量」が土台になります。

 

 

ここでは、実際のスプリント力と筋力、筋肉量の関係について考えていきます。

 

 

 

股関節の筋肉の横断面積とパフォーマンスの関係

 

股関節の筋肉量や筋力と、スプリントパフォーマンスに関する知見をまとめたものが、以下の通りです。

 

 

・男子スプリンターで、内転筋群、ハムストリングスの横断面積と100m走タイムに有意な負の相関がある(狩野ほか,1997)。

 

・男子スプリンターで、股関節の伸展、屈曲の筋力は内転筋の横断面積と有意な正の相関がある(内転筋は股関節の伸展、屈曲の両方に関わる)(渡邊ほか,2000)。

 

・男女スプリンターにおいて、ハムストリングス、内転筋、大臀筋、大腰筋の横断面積と100m走タイムに有意な負の相関がある(渡邉ほか,1999)。

 

 

 

 

 

 

 

 

これらのことから、主に股関節の伸展、屈曲に関わる筋肉(主にハムストリングス、大臀筋、内転筋、大腰筋)の横断面積、すなわち筋肉の大きさはスプリンターにとって非常に重要であることが分かると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

股関節の筋力とパフォーマンスの関係

 

 

・男子では、股関節の伸展屈曲筋力の両方が疾走速度に影響する(渡邉ほか,2000)。

 

・疾走中の股関節伸展、屈曲のピークトルク(一番力を発揮したときの力)と疾走速度に有意な相関関係がある(渡邉ほか,2003)。

 

・女子では股関節伸展筋力と疾走中の脚の回復期の股関節伸展ピークトルクに有意な相関関係があり、回復期股関節伸展ピークトルクと疾走速度には有意な相関関係がある(渡邉,2006)。

 

 

 

これらのように、スプリント中の後方、前方への脚全体のスイング速度を生み出すためにも、やはり股関節の伸展、屈曲に関わる筋力、筋肉量というのはとても重要であることがわかります。

 

 

また、股関節の伸展筋力に対して、屈曲筋力が弱すぎる、いわゆる拮抗筋とのアンバランスが顕著な場合、回復脚が遅れ、次の接地までの準備に余裕がなくなり、股関節伸展筋力が十分に引き出せない可能性が出てきます。

 

 

 

 

 

 

 

一般に行われるウエイトトレーニングでは、股関節を伸展させる筋力を上げる種目が多いのではないでしょうか。(スクワット、クリーン、デッドリフトなど)

 

 

発達した股関節伸展筋群に対して、屈曲筋力が乏しい場合、鍛えた強い伸筋群を十分に使うことができなくなる場合があります。

 

 

したがって、大きな屈曲トルクを発揮させるため、別に伸筋の筋力トレーニングを行いながらも、最大スピードを出すトレーニングをしたり、屈曲筋を鍛えるトレーニングも取り入れていくべきだといえます。

 

 

股関節は脚のスイングスピードを生み出すエンジン部分ともいえます。

 

 

非常に大きな力発揮が要求されるため、特にハムストリングスなどはケガをしやすいです。

 

 

スイングスピードを高めるためにも、ケガを防ぐためにも、股関節周りの筋群は、その筋力や柔軟性をバランスよく高める工夫をしていくべきでしょう。

 

 

関連記事

 

・スプリント力(足の速さ)と膝まわり(大腿四頭筋・ハムストリング)の筋力、筋肉量の関係

 

・スプリント力(足の速さ)と足首周り(ふくらはぎ)の筋力、筋肉量の関係

 

 

 

 

参考文献

・狩野豊, 高橋英幸, 森丘保典, 秋間広, 宮下憲, 久野譜也, & 勝田茂. (1997). スプリンターにおける内転筋群の形態的特性とスプリント能力の関係. 体育学研究, 41(5), 352-359.

 

・渡邉信晃, 榎本好孝, 大山, 圭悟, 狩野豊, 安井年文, ... & 勝田茂. (2000). スプリンターの股関節筋力とスプリント走パフォーマンスとの関係. 体育学研究, 45(4), 520-529.

 

・渡邉信晃, 榎本好孝, & 狩野豊. (1999). スプリンターの筋横断面積と疾走速度との関係における性差. 陸上競技研究, (39), 12-19.

 

・久野譜也, 金俊東, & 衣笠竜太. (2001). 体幹深部筋である大腰筋と疾走能力との関係 (特集 スポーツにおける体幹の働き). 体育の科学, 51(6), 428-432.

 

・久野譜也(1999).トップアスリートの特性.勝田茂編,運動生理学20講第2版.朝倉書店:pp.134-140.

 

・渡邉信晃, 榎本靖士, 大山卞圭悟, 宮下憲, 尾懸貢, & 勝田茂. (2003). スプリント走時の疾走動作および関節トルクと等速性最大筋力との関係. 体育学研究, 48(4), 405-419.

 

・渡邉信晃. (2006). スプリント走パフォーマンスに対する筋力の影響とその性差--筋横断面積, 筋力および疾走時の関節トルクの相互関係に着目して. 陸上競技研究, 2006(4), 2-12.

 

 


 


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