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筋線維のタイプと足の速さ

筋線維のタイプと足の速さ

短距離走では、高い筋力や瞬発力、スピードが重要になることは言うまでもありません。しかし、世の中にはこの瞬発力や高いスピードを出すのが得意な人と、苦手な人が存在します。それは一体なぜなのでしょうか?

 

この原因の1つに「筋線維のタイプの違い」が挙げられます。「筋線維」とは、筋肉を形作っている繊維状のものです。実は、この筋線維には「大きなパワーを出すのが得意なタイプ」と「力を長続きさせるのが得意なタイプ」があることが知られています。

 


「速筋線維」と「遅筋線維」

大きなパワーを出すのが得意なタイプの筋線維は「速筋線維(TypeⅡ a,x)」と呼ばれています。この速筋線維は見た目が白いことから白筋と呼ばれることもあります。速筋線維は大きなパワーを出すのが得意であるものの、持久力には優れていません。

 

一方で、大きなパワーは出せないものの、力を長続きさせるのが得意なタイプの筋線維が、「遅筋線維(TypeⅠ)」です。この筋線維にはミトコンドリアと呼ばれるエネルギーの生産工場のような器官が多く、そこに含まれるミオグロビンという物質が赤く見えるため、遅筋線維は赤っぽい色をしています。

 

 

また、一般に短距離走の選手など、瞬発系の運動が得意な選手は速筋繊維の比率が高く、マラソンなど、持久的な運動が得意な選手は遅筋繊維の比率が高い傾向があります。ただ、たとえ一流のマラソン選手であっても、速筋線維の比率が50%ほどになる選手も存在しているようです。

 

 

トレーニングで筋線維の比率は変えられる?

短距離走で活躍するためには、速筋線維が多い方が有利であることが分かりました。では、この速筋線維はトレーニングで増やすことができるのでしょうか?

 

実は、この速筋線維と遅筋線維の比率は生まれつきによるところが大きく、この比率自体をトレーニングで変えることは難しいと言われています。短距離走が天性の種目と呼ばれる所以です。

 

しかし、筋線維の比率は変えられなくとも、トレーニングによって速筋線維1本1本の太さを変えることは可能です。したがって、トレーニングを継続して行い、速筋線維を大きくすることで、高い筋力や瞬発力、スピード向上につなげることは可能だと言えます。

 

そして、速筋線維は、さらに持久力の高い速筋線維(TypeⅡa)と、持久力の低い速筋線維(TypeⅡx)とに分けられます。TypeⅡxは速筋の中でも大きなパワーを発揮するのが得意であり、TypeⅡ aはパワーと持久力を兼ね備えた中間タイプだとも言えるでしょう。また、TypeⅡxは、持久的なトレーニングをすることで、より持久力の高い性質をもつTypeⅡ aへ変化することが知られています。

 

つまり、速筋線維を遅筋線維に変えたり、遅筋線維を速筋線維に変えたりすることはできなくとも、速筋線維に持久力を持たせることは、トレーニングによってある程度可能であるということです。

 

 

このように、短距離走をやる上で、生まれつきによる能力の違いはもちろんあるものの、トレーニングによって伸ばせる能力も多くあることが分かります。スポーツのパフォーマンスは「生まれつき」ですべて決まるものではありません。自分の伸びしろはどこにあるのかを見極めて、ライバルに差をつけていきましょう。

参考文献

・Saltin, B., & Gollnick, P. D. (1983). Skeletal muscle adaptability: significance for metabolism and performance. Handbook of Physiology. Skeletal Muscle, 10, 555-631.
・勝田茂, 和田正信, & 松永智. (2007). 入門運動生理学第3版. 杏林書院.

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