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バネの力(ジャンプ力)と足の速さの関係と、バネを鍛える方法

バネの力(ジャンプ力)と足の速さの関係と、バネを鍛える方法

短距離走に重要な能力の一つに「バネの力」というものがあります。

 

「トップスプリンターのバネはすごい…。」
「あの選手は天性のバネを持っている…。」

 

…と、短距離走をやっていれば、このような話を一度は耳にすることでしょう。では、このバネとはいったいどういったものなのでしょうか?

 

参考動画

 

 

そこでここでは…以下のことについて、詳しく紹介していきたいと思います。

 

・この「バネ」の正体
・「バネ」と足の速さとの関係
・「バネ」を強くすることは可能?
・この「バネ」を鍛える有効なトレーニング


「バネの正体」SSC運動(ストレッチショートニングサイクル)

このバネの正体とは、ずばり「腱」です。筋肉は腱とつながっており、その腱は骨に繋がっています。

 

例えばふくらはぎの筋肉は、アキレス腱とつながっています。そしてこのアキレス腱は踵にくっ付いており、筋肉が発揮した力を合理的に骨に伝える役割を持っています。

 

 

縄跳びをするようなジャンプしたとき、筋肉は力を発揮して「キュッ」と硬く収縮します。この時、自ら縮むことはしないアキレス腱は、強く素早く引き伸ばされることになるわけです。

 

そして、強く素早く引き伸ばされた腱は、ゴムのように引き伸ばされたエネルギーを蓄えることになり、その後パチンコのように一気に短縮しようとすることで、大きなパワーを生み出します。これが、バネの正体です。

 

このバネのような運動、「ストレッチショートニングサイクル運動(SSC運動)」とも呼ばれており、爆発的な運動パフォーマンスを高めるために重要な役割を担っていることが分かっています。

 

また、ランニングでの一歩一歩においてもこの「バネの力」が常に働いているため、この「バネの力」は効率よく、速く走るためにも重要な能力であると推測できるでしょう。

 

 

なぜ、筋肉や腱をこのように使うことで大きな力を発揮することができるのでしょうか?これには、筋肉のある特性が関連しています。

 

筋肉は、勢いよく引き伸ばされると、自然に縮もうとする反応が起きます。これは「伸張反射」と言われています。また、筋肉は「縮みながら」よりも「勢いよく引き伸ばされながら」の方が、大きな力を発揮することができるという性質を持っています。

 

 

ジャンプをする瞬間では筋腱が勢いよく引き伸ばされ、伸張反射とともに非常に大きな力を発揮しています。また、引き伸ばされながら力を発揮しようとすることで、筋肉が力を発揮するための時間を長くとることができるようになります(筋肉が最大の力を発揮するまでには、実は時間がかかる)

 

 

つまり、ジャンプ時では筋肉が大きな力を長い時間かけて発揮して、筋腱が引き伸ばされるゴムのようなエネルギー(弾性エネルギーと言います)を多く蓄えられるようになり、それを一気に放出することで大きなパワーを生み出せているということです。

 

 

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「バネ」と足の速さ

さて、このバネの力(ジャンプ力)と足の速さにはどのような関係性があるのでしょうか?まずは、ジャンプ力のテストとしてよく用いられる「立幅跳」「立五段跳」についてみてみましょう。下の図は、足の速さ(最大疾走スピード)と「立幅跳」「立五段跳」の記録との関係を調べたものです。

 

 

 

このように「立幅跳」「立五段跳」といったバネの力(ジャンプ能力)が高いほど、最大疾走スピードが高いことが分かります。しかし、10秒台に入るようなトップ選手群だけでみると、あまり関連性がなさそうです。つまり、これらのジャンプ能力は足を速くするための土台的な能力だとみなせます。

 

また、立幅跳や垂直跳など、接地の長いバネの能力は「スタートからの加速能力」に、縄跳びでのジャンプやスピードバウンディングのように短い接地で弾むバネの能力は「より高いスピード(トップスピード)」に関連すると言われています。前者は柔らかいバネ、後者は硬いバネと表現できることから、それぞれに応じたトレーニングをしていく必要があるでしょう。

 

 

 

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バネを鍛えるためには?

この「バネ」は、当然鍛えることが可能です。ジャンプトレーニングをすれば、当然ジャンプ力が高まります。しかし、初心者の場合はこれとは違うアプローチの方が、足の速さに結び付くことがあるかもしれません。

 

なぜなら、基本的な筋肉量・筋力に乏しい状態では、このジャンプトレーニングの効果を十分に得ることが難しいと考えられているからです。したがって、ジャンプトレーニングをガシガシとやる前に、ウエイトトレーニングなどで、基本的な筋肉量・筋力を確保する方が先決かもしれないのです。

 

 

初心者の場合は、まずは自分の体重でスクワットができるようになることが必要です。そこから体重の1.5倍、2.0倍と筋力レベルが上がっていくとともに、ジャンプトレーニングの種類(強度)を変えていくことが推奨されています(Suchomel et al.,2019)。

 

それら基礎筋力を確保したうえで、この「バネ」を鍛えるためには、ボックスジャンプや連続ハードルジャンプ、バウンディングなどの「プライオメトリクス」と呼ばれるトレーニングが有効です。要は、バネを鍛えたければ、バネを使うことが重要というわけです。落下の衝撃に耐えながら、筋肉を一気に縮ませることで、バネを使う機能を鍛えることができます。

 

この時「走りと姿勢」で紹介したように、姿勢が悪いと身体全体がグニャグニャと曲がりやすく、地面に大きな力を発揮しにくくなり、バネの力を上手く使うことができなくなります。なので、身体を一本の棒のようにして、接地の瞬間に全身で固いバネを作るイメージをもって取り組むのがコツです。

 

参考動画(ボールを用いたスクワットジャンプ)

 

参考動画(ボックスジャンプ)

 

参考動画(スピードバウンディング)

 

参考動画(アンクルホップ)

 

 

コチラの動画でも、脚のバネに繋がるトレーニングを紹介しています

 

参考・参照文献

・宮代賢治(2012)スプリント&ハードル.宮下憲編著,陸上競技者,pp.71-73.
・深代千之, 川本竜史, 石毛勇介, & 若山章信. (2010). スポーツ動作の科学 バイオメカニクスで読み解く.
・Bret, C. (2002). Leg strength and stiffness as ability factors in 100-m sprint running. J Sports Med Phys Fitness, 42, 274-81.
・Suchomel et al.(2019) Implementing Eccentric Resistance Training—Part 2: Practical Recommendations.J. Funct. Morphol. Kinesiol.4(3), 55.

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