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ジャンプ力が高まると、本当に足は速くなるのか?(スプリント力とジャンプ力・バネの関係)

ジャンプ力が高まると、本当に足は速くなるのか?(スプリント力とジャンプ力・バネの関係)

陸上競技をやっていれば「あの人は天性のバネを持っている」「トップ選手はジャンプ力がすごい」といった類の言葉を1度は耳にするはずです。短距離走や跳躍、投てき選手であれば、そのパフォーマンスの高さとジャンプ力の間には、強い関係がありそうだな…と、容易に想像できることでしょう。

 

スポーツのトレーニングにおいてもハードルジャンプやバウンディングなど、様々な種類のジャンプトレーニングが実施されています。

 

そこでここでは、それらのジャンプ能力と競技パフォーマンス(ここでは足の速さ)との間には具体的にどのような関係性があるのか、またはそれらのジャンプ能力向上は、本当に足の速さにつながるのか…?について、考えていきます。

 

 

足の速さとジャンプ力の関係

そもそも「足の速さ」と「ジャンプ力」にはどのような関係性があるのでしょうか?とはいっても、「ジャンプ」にもいろいろな種類があるため、それぞれについて見ていくことにします。

 

立幅跳びや垂直跳び(長い接地のジャンプ力)

以下の図は、一般スプリンターと一流スプリンターの立幅跳びの記録と疾走中の最大スピードの関係を示したものです(宮代,2012)。このように、一流スプリンターでは、立幅跳びの記録が優れていることが分かります。

 

 

しかしながら、一流スプリンターの中だけでみると、必ずしも立幅跳びの記録が良いほど、足が速いわけではないことが分かります。つまり、一定のレベルまでは立ち幅跳の記録が疾走スピードに関連するが、レベルが高くなるほどその関係性は弱くなりそう…と言えます。

 

また、垂直跳び(腕の振り込みなし、反動アリ)に関しては60m走の記録、特に加速局面の初期段階(7-18m付近)の疾走速度との関連が強いとされています(Nagahara et al.,2014)。

 

このように、立幅跳びや垂直跳びの能力は、特に一般レベルのスプリンターの最大疾走スピードや、加速初期局面のスピードと関連が強そうであることが分かります。

 

 

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リバウンドジャンプ、アンクルジャンプや立五段跳(短い接地のジャンプ力)

 

一方で、より接地の短いジャンプ能力との関係はどうでしょうか?この能力を測る方法の一つに「リバウンドジャンプ」というものが挙げられます。リバウンドジャンプとは、縄跳びのように短い接地時間で連続的に跳躍運動を繰り返すものです。

 

 

関連動画(リバウンドジャンプ)

 

 

このリバウンドジャンプ時のパワーは最大疾走能力に強く関連するとされています(岩竹ほか,2002)。

 

 

また、垂直跳の記録に対して、リバウンドジャンプ時の跳躍高を接地時間で除した値(リバウンドジャンプインデックス)に優れている選手が、一流短距離選手に多い(Tauchi et al.,2008)といった報告から、より短い接地時間での跳躍能力が、高い疾走能力に関連していることが伺えます。

 

 

 

また、このリバウンドジャンプに近い能力の指標として「アンクルジャンプ」というものも存在します。このアンクルジャンプは、できる限り膝や股関節の屈伸動作を伴わないようにして、足首のパワーだけを使って跳躍するというものです。

 

 

このアンクルジャンプの接地時間や、跳躍高を接地時間で除した値は、100m走のタイム(女子)に強く関連することが報告されています(永原ほか,2013)。また、このアンクルジャンプでの跳躍高は、スタート後23-34m付近の疾走速度に、より関連することが示されています(Nagahara et al.,2014)。

 

 

これらのことから、より短い接地時間でのジャンプ能力、特に足首のバネを使うジャンプ能力は、スタート後の2次加速局面に差し掛かる付近での、より高い疾走能力に関連していることが推測できます。

 

 

加えて、その場から連続で5回前方に跳躍する「立五段跳び」では、前項の立幅跳びと同様、一般スプリンターよりも一流スプリンターの方が記録が良いものの、一流群内だけでみると、その関係性は弱くなるようです(宮代,2012)。

 

 

 

 

キーポイント

・あらゆるジャンプ能力が高いほど、疾走速度も高い傾向がありそう。

 

・垂直跳びなど、長い接地時間のジャンプ能力は、スタート直後の加速局面初期のスピードと強く関連しそう。

 

・短い接地時間でのジャンプ能力、足首のバネが強く関わるジャンプ能力は、より高い疾走スピードに重要かも。

 

・しかし、トップレベルになるほど、各種ジャンプ力と足の速さの関係性は弱くなる傾向がありそう。

 

 

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ジャンプ力が上がると、本当に足が速くなるのか?

 

各種ジャンプ能力は、そこそこ足の速さと関連がありそうだ…ということが分かりました。では、それらのジャンプ能力が向上すれば、実際に足は速くなるのでしょうか?

 

 

答えは「ジャンプ能力が高まると足が速くなるポテンシャルは高くなる」となるでしょう。これまで紹介してきた通り、ある程度のレベルまでは、疾走能力と各種ジャンプ能力との間に強い関連があるわけですから、当然です。

 

 

しかし、これはあくまで「ポテンシャル」の話です。ジャンプ力が高まれば必ず足が速くなるとは言っていません。ジャンプだけをやっていても足が速くなるかどうかは不明ですし、最終的には「足を速くするための練習、すなわち高いスピードで走る練習」をしなければならないことは明白です。

 

 

例えば、宮代(2012)は立五段跳びの記録向上によって疾走速度の改善がみられた選手と、逆に疾走速度の低下がみられた選手の例を報告しています(下図参照)。

 

 

 

 

A選手における立五段跳びの記録改善が足の速さにつながらなかった理由として、「立五段跳びでの、比較的長い接地時間での力発揮に慣れ過ぎて、100m走のような超短時間での接地時間での力発揮能力が、一時的に低下した」ことが考えられます。

 

 

つまり、ジャンプしやすい力発揮能力にシフトしてしまい、スプリントでの力発揮能力が一時的に低下してしまったかもしれない…ということです。一方で、B選手は100m走の記録も同時に改善されていることから、A選手もその後100m走のような専門的なトレーニングを多く積むことによって、記録が改善される可能性は大いにあると言えるでしょう。

 

 

また、近藤ほか(2013)は、数年間のトレーニングによって、立五段跳びの記録が13m72cmから14m60㎝まで向上し、その後の1か月の技術改善によって、さらに立五段跳びの記録を14m95㎝まで向上させた事例を報告していますが、その間に100m走での大きな記録の向上はみられなかったようです。

 

 

このように、ジャンプ能力が高まったとしても、それはあくまでジャンプ能力の向上です。足が速くなったことを補償するものではありません。短距離選手にとっては、ジャンプ能力向上は「手段」であって「目的」ではないことに留意すべきでしょう。

 

 

キーポイント

・ジャンプ力が高まったとしても、必ずしもスプリント能力向上につながるとは限らない場合がある。

 

・スプリンターにとってジャンプ力向上は、「目的」ではなく「手段」であることを忘れない。

 

 

 

 

ジャンプ力の向上を、足の速さ(スプリント能力)につなげるためには?

 

ジャンプ力の向上をスプリント能力につなげるために、一つ確実に言えることは、スプリントの練習をするということです。そもそも足を速くするために手っ取り早い手段といえば、速く走ろうとすることです。ウエイトトレーニングだけやっても足は速くなりませんし、ジャンプトレーニングだけやっても足はなかなか速くならないでしょう。

 

また、ジャンプ能力の土台には基礎的な筋力・筋肉量という土台の能力も深く関連していることに注意しましょう。特に初心者や、筋力に乏しい女子選手では、基礎的な筋力や筋肉量から改善していく方が、大幅にジャンプ能力を改善できることもあります。

 

 

加えて、「自分の伸びしろはどの能力にあるのか」「足を速くするためにより必要なジャンプ能力は何か?」に目を向けることも大切です。個人のタイプによって、より足の速さにつながりやすい能力は異なることがあるからです。

 

 

以下のようなパフォーマンスの階層構造(ピラミッド)を理解して、トレーニングについて考えてみると良いでしょう。

 

 

 

 

キーポイント

・ジャンプ力の土台には、筋力・筋肉量といった基礎能力が存在する。

 

・最終的には「足の速さに直結する専門的なトレーニング」をしなければ、パフォーマンスにはつながらない。

 

・レベルや性別、体格といった個人差を考慮して「自分の伸びしろ」に合ったトレーニングを考える必要がある。

 

 

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参考文献

・宮代賢治(2012)スプリント&ハードル.宮下憲編著,陸上競技者,pp.71-73.
・Nagahara, R., Naito, H., Miyashiro, K., Morin, J. B., & Zushi, K. (2014). Traditional and ankle-specific vertical jumps as strength-power indicators for maximal sprint acceleration. J Sports Med Phys Fitness, 54(6), 691-699.
・永原隆, 宮代賢治, & 図子浩二. (2013). 女子短距離走選手を対象とした足底屈パワーテストと疾走能力の関係. スポーツパフォーマンス研究, 5, 279-294.
・岩竹淳, 鈴木朋美, 中村夏実, 小田宏行, 永澤健, & 岩壁達男. (2002). 陸上競技選手のリバウンドジャンプにおける発揮パワーとスプリントパフォーマンスとの関係. 体育学研究, 47(3), 253-261.
・Bret, C. (2002). Leg strength and stiffness as ability factors in 100-m sprint running. J Sports Med Phys Fitness, 42, 274-81.
・遠藤俊典, 田内健二, 木越清信, & 尾縣貢. (2007). リバウンドジャンプと垂直跳の遂行能力の発達に関する横断的研究. 体育学研究, 52(2), 149-159.
・Tauchi, K., Endo, T., Ogata, M., Matsuo, A., & Iso, S. (2008). The characteristics of jump ability in elite adolescent athletes and healthy males: the development of countermovement and rebound jump ability. International journal of sport and health science, 6, 78-84.
・Endo, T., Tauchi, K., & Ogata, M. (2008). Development of running and footwork abilities from a viewpoint of jumping ability characteristics. International Journal of Sport and Health Science, 0810090004-0810090004.
・近藤亮介, 東畑陽介, 瓜田吉久, 松村勲, & 金高宏文. (2013). 立五段跳における跳躍距離向上を目指した練習法の提案―大学短距離競技者の 1 カ月間の取り組み事例より―. スポーツパフォーマンス研究, 5, 102-117.

 


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