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投動作の科学(速く投げるコツ)

投てき速度を高める「ムチ動作」

やり投げや野球のピッチングでは、その投てき物が手から離れた瞬間、その物体をさらに加速させることはできません。

 

なので、手から離れるまでにその物体をどれだけ加速させられるか、高い速度を持たせられるかが、投てき競技の飛距離、ピッチング速度を決めます。

 

手から離れる瞬間の速度が大事…ということは、それを握っている手、身体の末端のスピードをいかに高めるかが重要なポイントになると言い換えられます。

 

この末端の速度を高めるために必要な動きが「ムチ動作」です。

 

ムチで叩かれると痛いのは、末端の速度が非常に高くなるからです。ムチの握り手に大きな力を加えて、ムチをしならせ、末端が遅れて動き出したのち、最後の方でものすごい速度を持つことになります。

 

 

このような動作を上手く使うことで、同じくらいの筋力を持っていたとしても、より速く物を投げることができます。

 


トップやり投げ選手の投てき動作

このムチ動作をやり投げで見てみましょう。以下の図は、やり投げの投てき中の腰や肩、肘、手、グリップの速度変化を表したものです。

 

 

図からわかるように、投てき中は腰や肩、肘、手が連なるように加速して、最終的に末端のグリップが高い速度になっていることが分かります。

 

また、よくみると各部位の減速も腰、肩、肘、手の順で起きています。

 

身体の中心部分をグッと止めるような動作をすると、そのエネルギーが末端に移動します。すると、そのエネルギーによって末端がさらに加速します。

 

そしてその末端がグッと止まることで、さらにその末端部分が加速していく連鎖が生まれます。

 

これを運動連鎖と良い、ムチ動作を上手く行うためにはなくてはならないものです。

 

ここで、世界トップやり投げ選手と日本トップ選手(村上選手:77m63cm)のやり投げ動作を比較してみましょう(村上選手も世界トップレベルの実績の持ち主です)。

 

 

※田内ほか(2009)より引用

 

世界トップ選手では腰や肩という中心部分が先に動き、身体全体のしなりを使って、肘や手、グリップ部分が遅れて加速し、最終的に末端がより高い速度になっています。

 

その投てき動作の比較動画はこちら(http://sports-performance.jp/paper/921/m4.html

 

ムチ動作を行うためには?

運動エネルギーの転移

先述した通り、身体の中心から動作を行い、その動作を止めることで末端が加速していく、この運動連鎖を使うことが上手い投動作のコツです。

 

動いている物体は運動エネルギーを持ちます。これは、重たいものが速く動くほど大きくなります。

 

この大きな運動エネルギーを持った部位がグッと止まったとすると、その大きな運動エネルギーは消えて無くなるわけでなく、末端に移動するわけです。

 

したがって、中心で生み出した大きな運動エネルギーを、末端に転移させることで、物体をより加速させることができます。

 

予め中心部分でいかに大きなエネルギーを生み出すことができるかが重要だということが分かります。

 

 

反動動作を使う

ムチ動作を上手く行うもう一つのコツとして、「反動動作を使う」が挙げられます。

 

釣竿の持ち手は、硬くて伸縮性のあるカーボンが使われていることが多いです。

 

竿にグッと力を込めて振ると、そのカーボンの中心部分が引き伸ばされて、バネのようなエネルギーが蓄えられます。

 

その蓄えられたエネルギーを一気に解放することで、より大きなエネルギーを生み出すことができ、末端をより加速させることができます。

 

これは、ヒトの筋肉や腱を使うことでも起こすことができます。

 

 

筋肉にグッと力を入れて引き伸ばされるような動作を使うことで、筋肉やそれに付随する腱にバネのエネルギー(弾性エネルギー)が蓄えられます。そのエネルギーを一気に解放することで、よりキレのある投動作を行うことができるわけです。

 

 

 

合わせて読みたい!

 

 

参考文献
・田内健二, 村上幸史, 藤田善也, 礒繁雄, & 早稲田大学. (2009). やり投の日本トップ選手における動作分析データの活用事例‐世界トップレベルとの相違点を提示して‐. スポーツパフォーマンス研究, 1, 151-161.

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