他人から聞いた話のみならず、自分の経験にも同じようなことが起こり得ます。
例えば次のようなシナリオが考えられます。
「Dさんは〇〇という練習をやり始めたら記録が伸びた。だから〇〇は効果が高い練習なんだ。」
このような話はよく耳にするのではないでしょうか?調子が良くなってきた時にやっていた練習、自己ベストを更新した時にやっていた練習…というのは、やはり効果が高い、大切だと思うのが普通です。
しかしその後、Dさんは〇〇をやっているのにも関わらず、記録を伸ばせなくなります。むしろ記録が以前よりも落ちていってしまっています。
実は、〇〇という練習は、その時期のDさんの技術的な課題を修正するのに、たまたま有効だった練習だったのです。
それでは記録が一時的に伸びたとしても、そのすでに改善された技術をその後も改善させ続けようとしているわけですから、さらなる記録更新に繋がらないのは当たり前です。
風邪が治っているのに、風邪薬を飲み続けても効果が出ないのと同様です。
しかも、〇〇はいい練習なんだと、それに費やす時間が増え、結果的にその他の本当に重視すべきだった練習が減ってしまう、そのためDさんは記録を伸ばすどころか、記録が逆に低下してしまうようになってしまったわけです。
この練習をやっていたら記録が伸びた、調子が良くなった…と思った時は、一旦冷静になって
・調子が良くなっていた時期にたまたま始めた練習かもしれないこと。
・実は〇〇は、ある条件下じゃ無いと効果を発揮しない練習だった。
・その人にとっては課題となる要素の詰まったトレーニングだった。
などのことを、キチンと吟味した上で判断しなければなりません。