マッサージにはリカバリー効果がない?(スポーツとマッサージの科学)



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マッサージにはリカバリー効果がない?(スポーツとマッサージの科学)




マッサージと言えば、血液の流れを良くしたり、筋肉の痛みを減らしたり、緊張を解いて、心をリラックスさせたりするとされています。

 

 

※画像:写真ACより

 

 

このように、物理的にも心理的にも様々な効果をもたらすものとして、スポーツの現場でもリカバリーを促す手法として、よく用いられていることでしょう。

 

 

しかし、その実際の効果については現在も多く議論がなされており、マッサージの効果は度々疑問視されています。

 

 

そこでここでは

 

・マッサージがスポーツ選手のリカバリーに与える影響

 

・マッサージがスポーツ選手のパフォーマンスに与える影響

 

・スポーツ現場で、マッサージをどのように取り入れるべきか

 

 

これらについて考えていきたいと思います(以下,Hausswirth& Mujika(2013):Recovery for performance in sport.を中心に解説)。

 

 

 

マッサージの方法

 

一概にマッサージと言っても、様々なやり方が存在します。まずはどのようなマッサージ方法があるのかについて理解しましょう。

 

 

軽擦法

手のひらや指で筋肉を軽くさすりながらマッサージをする方法です。より強めのマッサージを始める前段階、準備として用いられることが多いようです。

 

 

圧迫法

硬くなっている部位を圧迫して、血流やリンパの流れを良くする方法です。浮腫を軽減させる効果もあると言われています。

 

 

揉捏法

硬くなった部位を揉みほぐしながら行う方法です。揉みほぐすことは筋肉を伸長させることにもつながり、これも血流、リンパの流れを良くし、浮腫を減らす効果があるとされています。

 

 

叩打法

叩くことにより皮膚や筋肉の血管を拡張させる方法です。筋肉の緊張を解き、浮腫を軽減させます。

 

 

振動法

振るわせることで、筋肉を緩める方法です。

 

 

ローラーマッサージ

ローラーのような器具を使い、皮膚の上で転がしながらマッサージを行う方法です。これによって浮腫を減らすことができるとされています。ストレッチポールに代表されるフォームローラーという器具もこれに当たります。

 

 

※Cheathamほか(2015)より

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4637917/

 

 

関連記事

・フォームローラー(ストレッチポール)って何の効果があるの?

 

 

 

 

マッサージの生理的、心理的効果

 

では、マッサージは具体的に筋肉や神経、心理面などにどのような効果をもたらすのでしょうか?

 

 

関節可動域

関節可動域は、マッサージをすることによって、効果があるかどうかは不明であるとされています(Weerapongほか,2005)。

 

普通にストレッチを実施する方が、関節可動域の改善には効果的なようです。

 

 

 

皮膚温・筋温

マッサージをすることによって、皮膚表面の温度を上げることはできますが、筋温など、より内部の温度を高めることは難しいようです。
しかし、皮膚下の血管を拡張することによって、細胞と血液間の栄養素や酸素の交換を促す可能性はあるとされています。

 

 

 

循環系

マッサージによって、静脈の流れ、つまり、末端から中心へ戻っていく血流の流れを良くすることができるようです。
しかし、動脈の流れについてはあまり効果が見られず、むしろ軽運動を実施した方が効果がはるかに高いとも言われています。

 

 

 

神経の興奮

マッサージによって、筋肉の感覚受容器が刺激され、緊張を解くことができるようです。したがって、筋肉がけいれんした時に、その神経の興奮を抑えるためにも有効な可能性があります。

 

 

 

筋肉の痛み

強めのマッサージを行うことで、その痛みに脳が慣れ、痛みを感じにくくなるということも起こるようです。

 

 

 

心理面への効果

マッサージを行うことによって、緊張、疲労感、不安、怒りなどの気分状態が良くなるという効果が期待できます(Weerapongほか,2005)。

 

 

 

 

このように、マッサージは主に皮膚下の血液の流れを改善したり、リラックスを促して気分状態を良くしたりする効果をもたらすようです。

 

 

では、このような効果を持つマッサージは、スポーツのリカバリーやパフォーマンスにどのような影響を与えるのでしょうか?

 

 

 

マッサージがリカバリーに与える影響

運動間の影響

 

MonederoとDonne(2000)の研究では、5kmのペダリング運動を2度実施するセット間に、何もしない(パッシブリカバリー)、軽運動(アクティブリカバリー)、マッサージ、マッサージ+アクティブリカバリーの4種類のリカバリー方法をそれぞれ比較しています。

 

 

その結果、マッサージのみ行った群ではパフォーマンスの低下度合いが小さくならなかったものの、マッサージ+アクティブリカバリーを組み合わせた群では、パフォーマンスの低下度合いが小さくなっていました。

 

 

 

 

 

このように、比較的短い間隔で行われる、その日の次の運動へのリカバリーに、マッサージは効果的かもしれない…けど、マッサージだけでは効果は得られにくいかもしれない…ということが考えられます。

 

 

 

 

運動後、数日間に渡る影響

 

マッサージは、短い間隔での運動間のリカバリーに効果があるかもしれません。では、その後数日に渡る影響はどうなのでしょうか?

 

 

これについて、数多くの実験結果をレビューした、Callaghanほか(1993)の研究では、マッサージによるリカバリーへのメリットを示す根拠は非常に少ないとされています。

 

 

一方で、下り坂を走る運動を6日間続けた後に、ローリングマッサージを施した脚と、そうでないともう片方の脚で、その後のリカバリー度合いを比較した研究では、マッサージによる良い影響が見られています(PorteroとVernet,2001)。

 

 

 

 

この研究では、運動・マッサージ2日後の太ももの浮腫が軽減され、最大筋力の回復度合いが良くなったとされています。

 

 

このように、運動後数日のリカバリーにも、良い影響があるとした研究、効果が見られなかったとする研究が混在しています。

 

 

 

 

運動前のマッサージがパフォーマンスに与える影響

 

マッサージを30分実施した群とそうでない群で、その後の30秒全力ペダリングのパワー発揮を比較したところ、マッサージを実施した群の方がパフォーマンスが良くなったという研究があります(Micklewrightほか,2005)。

 

 

 

 

しかしこの研究では、ペダリングに関わる筋肉に対してマッサージをしていません。

 

 

そのため、マッサージをすることによるプラセボ効果がパフォーマンスに影響したと考えられています。

 

 

プラセボ効果
「効果があると思い込む」ことによって、たとえ全く効果がないとされているものであっても、本当に良い影響を生んでしまうこと。

 

 

 

まとめ・マッサージの用い方

 

以上のことから、マッサージは運動間やその後数日のリカバリーに有用かもしれないし、そうでもないかもしれない…つまり、よく分かっていない状態であるということが理解できればと思います。

 

 

マッサージによってプラセボ効果が働いたり、心理的にリラックスできたり、浮腫を取ることによって筋機能が改善されたり、と、マッサージが有効に働くためのメカニズムは一応存在しています。

 

 

そのため、マッサージは効果がない、意味がない、と断言することはできません。個人にとって有効に働くケースは多くあると言えます。

 

 

しかし、トレーニングによって発生する浮腫は、トレーニング効果を促したり、組織を回復させるために必要なものとも捉えられます。

 

 

そのため、リカバリーを急ぐ必要がなければ、日常的にマッサージを行なって、皮膚、筋肉の水を流す、浮腫を取り除こうとすることは控えた方がいいかもしれません。

 

 

 

参考文献

・Cheatham, S. W., Kolber, M. J., Cain, M., & Lee, M. (2015). The effects of self‐myofascial release using a foam roll or roller massager on joint range of motion, muscle recovery, and performance: a systematic review. International journal of sports physical therapy, 10(6), 827.
・Hausswirth & Mujika(2013):Recovery for performance in sport. Human Kinetics.
・Weerapong, P., Hume, P. A., & Kolt, G. S. (2005). The mechanisms of massage and effects on performance, muscle recovery and injury prevention. Sports medicine, 35(3), 235-256.
・Monedero, J., & Donne, B. (2000). Effect of recovery interventions on lactate removal and subsequent performance. International journal of sports medicine, 21(08), 593-597.
・Callaghan, M. J. (1993). The role of massage in the management of the athlete: a review. British Journal of Sports Medicine, 27(1), 28-33.
・Portero and Vernet(2001)Effets de la technique LPG® sur la récupération de la fonction musculaire après exercice physique intense.
・Micklewright, D., Griffin, M., Gladwell, V., & Beneke, R. (2005). Mood state response to massage and subsequent exercise performance. The Sport Psychologist, 19(3), 234-250.

 


 


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