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筋力トレーニングにおける生理学的な男女差

筋力トレーニングにおける生理学的な男女差

 

筋線維の性差

 

男性に比較して、女性は筋線維が少なく、細いのが特徴です。

 

このことから、女性が自然に筋力トレーニングを行っただけでは、男性のような外見になることは決して無いことが分かります。

 

また、筋線維組成は男女ともタイプⅠ(遅筋線維)とタイプⅡ(速筋線維)で構成されています。
※筋線維にタイプについてはこちら

 

 

しかし、トレーニングされていない個人の筋線維サイズの比率には性差があります。

 

トレーニングされていない女性の75%は、速筋線維に対して、遅筋線維が大きいのです。

 

 

 

※ザチオルスキー&クレーマー(2009)より筆者が作図

 

 

そのため女性アスリートでは、速筋線維に高い負荷をかけることで筋の特性を劇的に改善させることが可能です。

 

 

弱点があるがゆえに、伸びしろも大きいというわけです。

 

このことからも女性の筋力トレーニングでは、低負荷よりも高負荷で実施することの重要性が理解できると思います。

 

 

筋力とパワーの性差

 

筋線維のサイズに違いがあるということは、当然筋力やパワーにも差が出ます。

 

最大筋力において、女性は男性の約60%ほどしか発揮できません。

 

特に、下半身では男性の70-75%ほどの最大筋力を発揮できるのに対して、上半身では男性の25-55%しか筋力を発揮できないことは特筆すべき点であると言えます。

 

 

この上半身の筋量・筋力は、短距離から長距離ランナーまで必要な腕振り動作の局所的な持久力を高めるための基礎、砲丸投げ選手が必要とする爆発的なパワー向上のための基礎…と言うように、あらゆるスポーツの基礎となります。

 

 

したがって、女性アスリートでは特に、上半身の筋を十分に発達させるようなトレーニングプログラムが必要になると言えるでしょう。

 

 

また、一般に運動速度が増大すると発揮できる筋力は減少しますが、これは男女問わずみられる現象です。
※筋力と収縮スピードの関係についてはこちら

 

 

しかし、力の立ち上がり率には性差がみられ、男性に対して女性では小さくなります。
※力の立ち上がり率についてはこちら

 

 

これは、男性の筋肉は羽状角が大きく、筋線維が引っ張る方向が実際に力を発揮する方向と一致しやすいということが原因として考えられています。

 

 

このことから、力の立ち上がり率を改善するような爆発的な筋力トレーニングも、女性にとって非常に重要な役割を果たすと言えます。

 

 

 

ホルモン濃度の性差

 

トレーニングによる適応における男女差のメカニズムの違いは、テストステロンなどのホルモン濃度が影響しています。

 

安静時の女性のテストステロン濃度は男性の10分の1から20分の1程度であり、特に思春期では、この差がさらに大きくなります。

 

テストステロンは筋サイズや肩幅、筋力に大きく影響するもので、男性では精巣で作られますが、女性の卵巣では作られず、副腎線によって生成されます。

 

 

 

 

 

※ザチオルスキー&クレーマー(2009)より筆者が作図

 

 

このホルモンはトレーニング後、少し増加し、トレーニング期間が長くなるとさらに増えますが、男性との差は大きく、これが筋の発達度合いの差に影響していると考えられています。

 

 

 

 

参考文献
・ブラディミール・ザチオルスキー&ウイリアム・クレーマー(2009)高松薫監訳,図子浩二訳,筋力トレーニングの理論と実践.大修館書店.

 

 

 

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