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「細くてきれい」と「筋力アップ」の両立は可能?

「細くてきれい」と「筋力アップ」の両立は可能?

 

「細くて綺麗になりたい」と思うのは普通のこと

 

女性であれば、誰しも「細くて綺麗なスタイルになりたい」と思うのは普通のことです。そのため、スポーツのトレーニングをやっていれば、筋肉が付いて、身体がゴツくなってしまわないか、太くなってしまわないか…と、少し心配になったりもするはずです。ウエイトトレーニングに対して、ネガティブなイメージを抱きやすいのもこれらが関係しているかもしれません。

 

 

しかし、スポーツのパフォーマンスを高めるためには、多くの場合、筋力UPが求められることがあります。陸上の短距離種目や跳躍、投てき種目など、瞬発力と呼ばれる体力が、高いレベルで必要になってくる種目であればなおさらです。

 

 

ここで問題になってくるのが、「細くて綺麗だと思う理想のスタイルを目指すことと、筋力を高めることは両立可能なのかどうか?」ということです。筋力は高めたいけど、筋肉は太くしたくない…と感じている選手は多くいるはずです。

 

 

そこでここでは、「身体を細くしつつ、または細さをキープしつつ、筋力、パワーを高めることは可能かどうか?」について考えていきます。

 

 

 

身体を細くしながら筋力アップは可能か?

細い筋肉では発揮できる筋力に限界がある

 

「筋肉量を増やさずに筋力アップ、パワーアップは可能ですか?」と聞かれれば、答えは「Yes!」になります。筋肉を太くしなくても、筋力やパワーの向上は可能です。実際にトレーニング初心者に高重量のスクワットをさせれば、筋肉が増えていなくてもスクワットの拳上重量は向上します。これは、脳から筋肉への指令を強く、多く送ることができるようになって、より多くの筋線維を動員できるようになったり、力発揮のタイミングが上手くなったり、そもそものスクワットのフォームが良くなったりするからです。この現象は、一般的に「神経系が改善された」「動作効率が良くなった」とか言われています。

 

 

しかし、この「神経系や動作効率の改善」というのは、いつまでも続くわけではありません。トレーニング歴の浅い選手では、この「神経系や動作効率の改善」で、大きく筋力やパワーを伸ばすことができますが、トレーニングをより長く積んで習熟してくると、伸び幅が頭打ちしてきます。いわゆる「カンスト」です。

 

 

こうなってくると、「そもそもの筋肉量を増やす」ことは必要になってきます。その筋肉の断面積が大きいほど、発揮できる筋力やパワーのポテンシャルは高まるからです。細い筋肉では、発揮できる力やパワーにどうしても限界があるので、トレーニング歴が長く、技術レベルも熟練してきて、さらにパフォーマンスを高めようとするなら、筋肉量を増加させることはやはり手段の一つにならざるを得ません。

 

 

こうした事実を理解できていないと、トレーニングを頑張っているのにパフォーマンスがなかなか高まらない、むしろ成長期以降、パフォーマンスが下がっていってしまうことも起こり得ます。

 

 

形態的な変化は、スポーツのパフォーマンスに多大な影響を与え、しかも短期間では改善しにくいものです。筋量が大幅に減少すれば、筋力やパワーは低下しやすくなります。それがパフォーマンスに直結するような競技種目であれば、当然そのスポーツのパフォーマンスが低下します。すると「動作にキレがないな、安定感がないな…」と感じることが多くなります。この時に、筋肉量という要因の重要性を理解していなければ、その「キレがない…」の原因を正確に認識することができなくなります。多くの場合、その動きのキレだとかを生み出しているのは、筋力だからです。ヒトは発揮できる力相応の動作しかできません。

 

 

以上のことから、筋肉を細くしながら筋力やパワーを向上させ続けようとするのは、なかなかに効率的ではないということが分かります。筋肉量を増やすというのは、特に瞬発系、パワー系スポーツのパフォーマンスを高める上で重要な一つの手段であると、認識しておくのが無難です。

 

 

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細くても大きな筋力を発揮できている選手がいるじゃないか

 

以上のようなことをつらつらと述べても「いやいや、細くてもすごい筋力やパワーを発揮しているトップ選手いるじゃん??」との反論を食らいます。例えば、以下のような選手です。

 

 

 

 

陸上短距離選手や走幅跳選手…と、確かにこのような細く見えるフォルムで、高いパフォーマンスを発揮しているトップアスリートは存在します。「こんな選手がいるんだし、筋肉は太くする必要はない…!」との主張は、多くの人を説得してしまいます。

 

 

しかし、そのような選手でも、股関節周りや肩回りには、しっかりと筋肉が付いているはずです。末端部分は細いように見えるかもしれませんが、腕や脚を大きく素早く動かす原動力である身体の中心部分の筋肉はかなり多いことが予想されます。

 

 

加えて、そのようなトップアスリートの持つ生まれつきの才能は、結構とんでもないケースが多いことも忘れてはいけません。特に大きな力発揮、高いスピードを出すのに優れた速筋線維の比率は、パフォーマンスを大きく左右する才能です。筋肉の8~9割が速筋だったという選手の場合、たいして筋肉が太くなくても、とんでもない筋力やパワーを発揮できてしまいます。

 

 

こういったことからも、「細くてもパフォーマンスが高い人がいるから…」は、筋肉を大きくするのは間違いであるとの主張の根拠にはなりにくいでしょう。細くて爆発的なパワーを発揮できる人が、さらに筋肉を大きくしてトレーニングを積めば、さらにさらに高いパフォーマンスを発揮できる可能性だってあるわけです。

 

 

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筋肉のサイズが関係しやすい競技種目

 

とはいえ、爆発的な力発揮が求められるスポーツ選手は、とにかく筋肉をデカくすべき…との認識は持つべきではありません。あくまでも一つの手段に過ぎないことは理解しておきましょう。

 

 

また、筋肉が大きくなることで、そのスポーツのパフォーマンスがどれくらい上がるかは、その競技種目によっても異なります。

 

 

一般に、スピードが非常に高く、力発揮のタイミングが非常に短くなるような場合では、筋肉量とその時に発揮できる筋力、パワーとの関係は弱くなります。レベルが高くなると、ほとんど相関関係がみられなくなります。陸上短距離種目では、走っているときの接地時間が0.1秒以下になることがありますが、筋肉が細くても、その超短時間の間に力を十分に発揮できれば、問題ないわけです。先に紹介した選手の写真のように、超短時間での力発揮に関わるような、膝周り、下腿周りの筋肉が細いことがあるのはそのためです。繰り返しになりますが、筋肉が太くないとパフォーマンスを高めることができないというわけではないのです。

 

 

とはいえ、筋肉を増やすことは、超短い時間内での力発揮や、高いスピードでの力発揮能力のポテンシャルを高めます。これも繰り返しにはなりますが、細くても大きな力を、高いスピードで、短時間で発揮できる選手が、筋肉量を増やすことで、さらにパフォーマンスを高められる可能性は十分にあります。しかし、走高跳や三段跳び、走幅跳など、自分の体重をどれだけ宙へ浮かせることができるかが、パフォーマンスに直結するような種目では、少し注意が必要です。

 

 

一方、スピードが少し遅い、投てき種目やパワーリフターなどであれば、筋肉量がその競技での力発揮に及ぼす影響は大きくなります。力を発揮するタイミングが長く取れるので、筋肉が大きいことによるポテンシャルの高さを十分に生かしやすいからです。そのため、力発揮の時間が長く取れるような競技種目の選手ほど、筋肉量を増やす意義は大きくなると言えるでしょう。

 

 

筋肉を増やすと動きのキレが落ちる?

 

「筋肉量を増やすと、動作のキレがなくなる…」というケースを良く聞きます。そもそも動作のキレって何?という話をしだすとキリがなさそうですが、おそらくその競技動作のスピード感だとか、力が入る感覚の鋭さだとか、そういった意味合いで使われることが多いです。

 

 

筋肉量を増やすためには、ボリュームの多いトレーニングをこなすことが効果的です。しかし、このボリュームの多いトレーニングを長い期間こなしていると、一時的に短い時間での力発揮や、高いスピードでの力発揮が鈍ります。これは、筋肥大を効率よく進める過程では仕方のないことです。ここで、選手が「なんだか動作のキレがなくなったな…」と感じてしまうのも無理はありません。

 

 

じゃあ、やっぱり筋肉を増やすことは良くないのか?と思われるかもしれないですが、そうではありません。その大きくなった筋肉で、競技の動作、スキルの練習を行い、技術を上乗せしていくような過程を経ることで、その筋肉はちゃんとキレを取り戻してくれます。

 

 

さらには、筋肉量という新たなフィジカルのポテンシャルを手に入れているので、以前までとは異なる、新しいキレの感覚が得られることもあるでしょう。重要なのは、筋肉を大きくしたら、それを使ってあげる練習をガシガシやって、技術の最適化を図ることです。ここで勘違いして「筋肉量は必要ないんだ」とするのは早計です。

 

 

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筋肉量はパフォーマンスを構成する重要な要因だということを忘れない

 

ここまで述べてきたことをまとめると、以下のようになります。

 

・筋肉量は、特に瞬発系、パワー系スポーツのパフォーマンスを高める上での重要な要因。

 

・「細くても高いパフォーマンスの人がいる」は「筋肉量は必要ない」の根拠にはなり得ない。

 

・筋肉量の多さがより関係する競技種目と、そうでもない競技種目がある。また、それは身体部位にもよる。

 

・筋肉量を増やそうとする過程で、一時的に動作のキレ(高いスピードでの筋力?短時間での筋力?)と呼ばれるものが鈍ることがある。しかし、競技練習で技術の最適化を図ることで、さらに高いパフォーマンスは目指せるはず。

 

これらはトレーニングの方向性を定めるうえで、非常に重要なことだと言えます。この認識が薄いがゆえに、筋肉をあえて細くしようという道に走ったり、筋肉を付けたくないから食事を減らそうということを行ったり…という選択肢を選んでしまうのを防ぐことができます。筋肉量なんかいらない…と主張していた人は、少し考えを改めるべきです。

 

 

多くの瞬発系スポーツでは、筋肉が増えないと、なかなかパフォーマンスアップは難しいと言えるのではないでしょうか?細くしながら筋力UPは、残念ながら効率的ではありません。となれば、食事でエネルギー収支をプラスに保つこと、マイナスにしないことがいかに重要なことであるかが理解できると思います。痩せながら筋力やパワーの向上は本当に厳しい。

 

 

「細くなりたい…」という願望を持つ人は少なくありません。しかし、残念ながら細さと強さの両立は困難です。細くて強い人は、たいてい最初から細くて強いです。

 

 

瞬発系、パワー系アスリートなら、もりもりご飯を食べて、筋力トレーニングして、競技練習をガシガシやる…これらを外さなければ、多少なりともパフォーマンスは上がっていく、少なくとも方向性は間違えないのかな…と思います。

 

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