静的収縮と動的収縮(短縮性収縮と伸張性収縮の違い)

よくわかる筋肉の収縮様式




よくわかる筋肉の収縮様式

 

 

 

 

筋肉には色々な力発揮の仕方があるとされています。それをまとめたものが、以下の図です。

 

 

 

 

静的収縮(static contoraction)(等尺性収縮: isometric contraction)

 

静的収縮(static contraction)とは、筋肉の長さが変化しない収縮の仕方です。例えば、ダンベルを持ったまま、動かさないようにしている時、筋肉の長さは変わっていません。

 

 

 

 

このように、筋肉の長さが変化していない力発揮の様式が、静的収縮です。他にはスポーツテストでやる握力計や、背筋力計を使うときの収縮様式も、これに近いと言えるでしょう。

 

 

筋肉の長さが変化しない、すなわち「等しい尺」であることから、「等尺性収縮」(アイソメトリック収縮)(isometric contraction)と呼ばれたりもします。

 

 

しかし、実際に等尺性収縮の筋力発揮瞬間では、筋肉が短縮されます。動かそうとせずとも、ダンベルを持った瞬間筋肉がギュッと少しだけ短縮し、その代わりに末端に付着する腱が引き伸ばされます。これによって、全体の長さは一定になるわけです。

 

 

また、等尺性収縮ではその関節角度によって発揮できる筋力が変化します。

 

 

肘を曲げる場合、肘の角度が110°くらいの時、最も筋力を発揮しやすく、それよりも角度が大きくなったり小さくなったりすると、発揮できる筋力は低下すると言われています。

 

 

 

 

 

動的収縮(dynamic contraction)

 

動的収縮は、その名の通り関節が動きながら、角度が変化しながら力を発揮する様式です。

 

 

短縮性収縮(コンセントリック収縮)(concentric contraction)

 

短縮性収縮とは、筋肉が短縮しながら力を発揮することです。図のようにダンベルを持ち上げる時の上腕二頭筋は、短くなりながら力を発揮しています。この短縮性収縮では、その短縮速度が高くなるほど力を発揮しづらくなるという性質があります。

 

 

 

 

例えば、重たいバットをスイングさせるときは、あまり速くはスイングできない代わりに、強く力を込めることができます。しかし、軽いバドミントンラケットをスイングする場合、かなり高い速度でスイングできますが、あまり力を込められるような感覚はありません。

 

 

 

 

伸張性収縮(エキセントリック収縮)(eccentric contraction)

 

伸張性収縮とは、力を発揮している間に筋肉の長さが伸ばされている収縮様式です。図のように、ダンベルをゆっくりと下ろす動作では、力を発揮(ダンベルの重さをコントロール)しながら、上腕二頭筋は長くなっていきます。伸張性収縮とは、この時の収縮の仕方のことを言います。

 

 

伸張性収縮は、短縮性収縮とは逆に、引き伸ばされる速度が高まるほど、大きな力を発揮することができます。

 

 

 

 

この時の力は、等尺性収縮や短縮性収縮の時の最大筋力を上回ります。つまり、持ち上げるのが限界の重さよりも、重たいダンベルを持って、それにグッと耐えつつ上腕二頭筋が引き伸ばされている時、実はかなり大きな力を発揮できているというわけです。また、短縮性収縮と比べて、エネルギーの消費は少ないと言われています。

 

 

この伸張性収縮は、筋肉がブレーキをかけるような使い方をされるため、筋線維やその周囲の組織に微細な損傷を与えます。そのため、急ブレーキをかけるような伸張性収縮を行い続けると、その後の筋力は数日に渡って低下したままになることもあると言います。

 

 

 

 

そのような刺激は筋肉痛を生みやすく、酷使した筋では、その筋肉がやや浮腫んだ状態になりやすいのも特徴です。

 

 

関連記事

・伸張性収縮(エキセントリック収縮)の特徴

 

 

 

また、明らかに軽い重さのダンベルをゆっくりと下ろす動作は「ブレーキをかけて耐えられなくなって筋肉が引き伸ばされるイメージ」が、あまり湧かないのではないでしょうか?

 

 

しかし、筋線維の中を見てみると、軽いものをゆっくりと下ろす動作の場合、筋線維の何割かは全く働いていないことが分かります。つまり、筋肉の何割かがサボることで、他の筋線維が耐えられなくなって、軽い重さのものをゆっくり下ろしている…というわけです。

 

 

 

 

ちなみにこの時の優先して使われる筋線維は速筋線維です。これは、急ブレーキをするような動作にいち早く、素早く、力強く対応するためだと考えられています。

 

 

 

 

等張性収縮(isotonic contraction)

 

等張性収縮は、「等しい張力」での収縮です。つまり、発揮している力が常に同じ収縮の仕方を指します。滑車に繋がれた、一定の重りを持ち上げる運動がこれに近い運動と言えます。(写真は、滑車に繋がれた重りを引く、ラットプルダウンというトレーニング)

 

 

acworksさんによる写真ACからの写真

 

 

しかし、滑車に繋がれた重りを挙げるにしても、初速を生み出す時は、ある程度大きな力が必要ですし、運動中は実際発揮している力はわずかに変化しています。

 

 

したがって、普段の生活やスポーツ、トレーニング中には、厳密な等張性収縮はほとんど起こらないと言われています。

 

 

 

等速性収縮(isokinetic contraction)

 

等速性収縮とは「等しい速度」での収縮です。この等速性収縮の能力を評価するには、以下の図のような専用の機器を用います。

 

 

※SAKAImed:BIODEX(https://www.sakaimed.co.jp/measurement_analysis/physical-fitness-measurement/biodex-system-4/)より引用

 

 

 

関節角度が変化する速度が同じ状態で、どれだけ大きな力が発揮できるかを測定します。

 

 

世の中には、高いスピードで力を発揮するのは得意だけれど、遅いスピードでは他に劣る人。逆に高いスピードでは他に劣るが、遅いスピードでは他よりも大きな力を発揮できる人、様々います。これは、生まれつきの速筋線維の多さや、高い速度でも大きな力を発揮できるようなトレーニングをしているかなどの要因が関わります。

 

 

特にトップスプリンターでは、高いスピードでも大きな力を発揮できる選手が多いと言われています。そのため、スポーツ選手は、その競技特性に合わせて、あるスピードを伴った筋力測定を行い、トレーニング効果やコンディションを把握する指標として使っていることもあるわけです。

 

 

 

 

 

参考文献

・石井直方(2015).石井直方の筋肉の科学.ベースボール・マガジン社.
・Paschalis, V., Koutedakis, Y., Jamurtas, A. Z., Mougios, V., & Baltzopoulos, V. (2005). Equal volumes of high and low intensity of eccentric exercise in relation to muscle damage and performance. The Journal of Strength& Conditioning Research, 19(1), 184-188.

 



サービスメニュー

・陸上競技のトレーニングを科学的に考える電子book

「スライドで学ぶ~陸上競技の科学~」


・登録時に「ハムストリングの肉離れを防ぐ」をプレゼント

上記電子bookを無料でプレゼント「メルマガ登録」

*メールアドレス
*お名前(姓・名)


・コーチがいない選手、競技経験の無い部活動顧問の先生方へ

「トレーニング指導・メール相談はこちら」


 


トップページへ

 





スポーツ生理学とは?

スポーツ生理学で分かることスポーツ生理学とは、「スポーツに関わる事象の生理的な仕組みを研究する学問領域」です。例えば、ランニング中に上り坂に差し掛かると、走る速度が遅くなったり、心拍数が上がったり、キツイなと感じたり…と様々な変化が起こります。こうした事象がどうして起こるのか、体の内部でどのような変...

≫続きを読む

筋肉とは?(骨格筋、心筋、平滑筋の違い)

筋肉とは?「筋肉」は体重の70%以上を占める組織で、私たちヒトの身体活動のために無くてはならないものです。この筋肉は、随意筋である骨格筋と、不随意筋である心筋と内臓筋に分けられます。また、骨格筋と心筋は顕微鏡で見てみると横紋状(縞模様)の構造が見てとれることから、横紋筋とも呼ばれています。この筋線維...

≫続きを読む

【分かりやすい】筋線維の構造(筋原線維、筋小胞体、アクチンとミオシン)

骨格筋は、筋線維の束でできている骨格筋は腱を介して、骨に付着しています。多くの場合、中央部が太くなっており、この部分を筋腹と言います。また、筋肉のその両端は細長くなっていきますが、身体の中心に近い方を筋頭、遠い方は筋尾と呼ばれています。この骨格筋の内部を詳しく見ていくと、細長い細胞の束が見えてきます...

≫続きを読む

【一発で覚える】筋収縮の仕組み

まずは筋収縮の仕組みをアバウトに把握しよう筋収縮は次の2つのステップから起こります。①信号が伝わり、筋小胞体からカルシウムが「ファサ~ッ」と降りかかる。②その刺激で、ミオシンがアクチンを「グイッ!」とたぐり寄せる。一発でイメージをつかむのであれば、こんな↑イメージで覚えると良いでしょう。これによって...

≫続きを読む

速筋線維と遅筋線維(部位やスポーツ選手による違いと推定方法)

筋線維は、大きくタイプが2つに分かれています。速筋線維と遅筋線維です。速筋線維の特徴速筋線維は収縮する速度が高く、その速度は遅筋線維と比べて2〜4倍だと言われています。また、糖を分解してエネルギーを生み出す解糖能力に優れ、大きな力を生み出せることも特徴です。しかし、疲労しやすいという弱点があります。...

≫続きを読む

よくわかる筋肉の収縮様式

筋肉には色々な力発揮の仕方があるとされています。それをまとめたものが、以下の図です。静的収縮(static contoraction)(等尺性収縮: isometric contraction)静的収縮(static contraction)とは、筋肉の長さが変化しない収縮の仕方です。例えば、ダンベ...

≫続きを読む

最大筋力を高める要因とトレーニング方法(神経系と筋系)

スポーツのパフォーマンスを高める上で、最大筋力を高めることは有利に働くことが多いでしょう。ここでは、その最大筋力とは何によって決まるのか、そしてそのトレーニング方法にはどのようなものがあるかについて紹介していきます。運動単位の動員動員できる運動単位が多いほど、筋力は高まる最大筋力を決める要因には、様...

≫続きを読む

主動筋と拮抗筋(拮抗筋のストレッチでパワーが上がる?)

主動筋と拮抗筋の違い例えば肘を曲げる運動をするとき、上腕二頭筋が収縮力を発揮して短縮します。このように、その関節運動の主な働きを担う筋肉を「主動筋」と言います。この肘を曲げる運動の場合、主動筋は上腕二頭筋になるということですね。一方、主動筋とは反対側で、主動筋が短縮することで引き伸ばされる筋肉があり...

≫続きを読む

筋力とスピード、パワーの関係(スピードやパワーの決定要因とトレーニング方法)

スピード筋力?(筋肉の収縮速度と力の関係)筋肉には、高い速度で縮んでいる時ほど小さな力しか発揮できず、逆に縮む速度が遅い時ほど大きな力を発揮できるという特性があります。これを、筋肉の「力-速度関係」と言います。何か重たい物を投げる時には、力をギュッと込めることができると思います。しかし、バドミントン...

≫続きを読む

体力とは何か?(よくわかる体力の定義)

「体力」と言うと、どんなことが連想されるでしょうか?疲れ知らずでバリバリ働ける人のことを「体力がある」と言ったり、持久走で記録の良い人のことを「すごい体力だ」と言ったり、学校で行われるスポーツテストは「体力テスト」とも呼ばれていたり、その使われ方は様々です。「体力を付けなきゃ!」とはよく言われますが...

≫続きを読む