動的収縮は、その名の通り関節が動きながら、角度が変化しながら力を発揮する様式です。
短縮性収縮(コンセントリック収縮)(concentric contraction)
短縮性収縮とは、筋肉が短縮しながら力を発揮することです。図のようにダンベルを持ち上げる時の上腕二頭筋は、短くなりながら力を発揮しています。この短縮性収縮では、その短縮速度が高くなるほど力を発揮しづらくなるという性質があります。
例えば、重たいバットをスイングさせるときは、あまり速くはスイングできない代わりに、強く力を込めることができます。しかし、軽いバドミントンラケットをスイングする場合、かなり高い速度でスイングできますが、あまり力を込められるような感覚はありません。
伸張性収縮(エキセントリック収縮)(eccentric contraction)
伸張性収縮とは、力を発揮している間に筋肉の長さが伸ばされている収縮様式です。図のように、ダンベルをゆっくりと下ろす動作では、力を発揮(ダンベルの重さをコントロール)しながら、上腕二頭筋は長くなっていきます。伸張性収縮とは、この時の収縮の仕方のことを言います。
伸張性収縮は、短縮性収縮とは逆に、引き伸ばされる速度が高まるほど、大きな力を発揮することができます。
この時の力は、等尺性収縮や短縮性収縮の時の最大筋力を上回ります。つまり、持ち上げるのが限界の重さよりも、重たいダンベルを持って、それにグッと耐えつつ上腕二頭筋が引き伸ばされている時、実はかなり大きな力を発揮できているというわけです。また、短縮性収縮と比べて、エネルギーの消費は少ないと言われています。
この伸張性収縮は、筋肉がブレーキをかけるような使い方をされるため、筋線維やその周囲の組織に微細な損傷を与えます。そのため、急ブレーキをかけるような伸張性収縮を行い続けると、その後の筋力は数日に渡って低下したままになることもあると言います。
そのような刺激は筋肉痛を生みやすく、酷使した筋では、その筋肉がやや浮腫んだ状態になりやすいのも特徴です。
関連記事
また、明らかに軽い重さのダンベルをゆっくりと下ろす動作は「ブレーキをかけて耐えられなくなって筋肉が引き伸ばされるイメージ」が、あまり湧かないのではないでしょうか?
しかし、筋線維の中を見てみると、軽いものをゆっくりと下ろす動作の場合、筋線維の何割かは全く働いていないことが分かります。つまり、筋肉の何割かがサボることで、他の筋線維が耐えられなくなって、軽い重さのものをゆっくり下ろしている…というわけです。
ちなみにこの時の優先して使われる筋線維は速筋線維です。これは、急ブレーキをするような動作にいち早く、素早く、力強く対応するためだと考えられています。
等張性収縮(isotonic contraction)
等張性収縮は、「等しい張力」での収縮です。つまり、発揮している力が常に同じ収縮の仕方を指します。滑車に繋がれた、一定の重りを持ち上げる運動がこれに近い運動と言えます。(写真は、滑車に繋がれた重りを引く、ラットプルダウンというトレーニング)
acworksさんによる写真ACからの写真
しかし、滑車に繋がれた重りを挙げるにしても、初速を生み出す時は、ある程度大きな力が必要ですし、運動中は実際発揮している力はわずかに変化しています。
したがって、普段の生活やスポーツ、トレーニング中には、厳密な等張性収縮はほとんど起こらないと言われています。
等速性収縮(isokinetic contraction)
等速性収縮とは「等しい速度」での収縮です。この等速性収縮の能力を評価するには、以下の図のような専用の機器を用います。
※SAKAImed:BIODEX(https://www.sakaimed.co.jp/measurement_analysis/physical-fitness-measurement/biodex-system-4/)より引用
関節角度が変化する速度が同じ状態で、どれだけ大きな力が発揮できるかを測定します。
世の中には、高いスピードで力を発揮するのは得意だけれど、遅いスピードでは他に劣る人。逆に高いスピードでは他に劣るが、遅いスピードでは他よりも大きな力を発揮できる人、様々います。これは、生まれつきの速筋線維の多さや、高い速度でも大きな力を発揮できるようなトレーニングをしているかなどの要因が関わります。
特にトップスプリンターでは、高いスピードでも大きな力を発揮できる選手が多いと言われています。そのため、スポーツ選手は、その競技特性に合わせて、あるスピードを伴った筋力測定を行い、トレーニング効果やコンディションを把握する指標として使っていることもあるわけです。
※スプリンターやジャンパーは速筋線維が多く、高い速度で力を発揮する能力に優れている。